日本のゲーム産業はクラウドで活性化できるか?(2/2 ページ)
アリババクラウド・ジャパンサービスが、日本のゲーム企業の活性化をテーマにセミナーを開催した。その詳細レポートをお届けする。
最後に「日本人は、良いゲームを長くじっくりプレイするという傾向が強い。このような日本で中小企業の開発者がワンチャンスを掴むというのは、難しい状況。中小開発企業こそ、中国に目を向けて」と訴えて講演を終えた。
4番目の登壇は、ピタヤゲームス代表取締役COOのハンソン・リュウ氏。自社ビジネスの紹介に続きアリババクラウドと提携した理由を説明。「日本と中国の両方でリソースを活用でき、特に中国の開発チームと協力して新しいゲームを制作・運営する必要があった。豊富なクラウドコンピューティング製品に加えて、アリババクラウドのチームが提供するサービスを両方の市場で役立てている」と語った。
中小企業の開発者こそ世界に出ていってほしい
セミナーの終盤にはパネルディスカッションが開かれ登壇者全員がそれぞれの立場からゲームビジネスに対する考えを語った。日本のゲーム企業の次の一手は何か、という問いかけに、黒川氏は「家庭用ゲームは、先細りという論調もある。その一方、スマホゲームの活況でゲーム人口が底上げされた。そこから、再度家庭用ゲームに還流するという期待もある」と語る。
同様の質問に加藤氏は「すぐ隣に中国という巨大市場があるのに進出しないのは不思議ですらある。確かに、言語、慣習、政治的問題といったギャップを埋める手立ては必要だが、そこに資本投下しても余りあるリターンが期待できる」と訴える。
世界進出は、中小のゲーム企業にとってハードルが高いのではないのかという質問にソン氏は「アリババは、中小企業からここまで成長し海外に出ていった。中小企業が海外に進出する際の苦労はよく理解できる。ただ、常に開拓者精神を忘れずチャンスを掴むことを忘れないでほしい」と開発者を鼓舞する。
リュウ氏は、クラウドのメリットを最大限利用することで道は開けると話す。「オンプレミスの場合は、サーバ管理運営など、ゲーム開発以外の部分にリソースを割く必要があった。しかし、クラウドであればゲーム開発だけに集中でき、ユーザー規模に応じてスケーラブルな対応が可能なのでチャンスはある」と話す。
続いて、中国はもはや成熟市場になっているという話もあるが、それでも日本から出ていく意味はあるのか?という質問に加藤氏が答えた。「確かに成熟市場ではある。そのため、日本の企業が丸腰で出ていても成功はおぼつかない。中国のユーザーの好みや動向を理解した上でのマーケティング戦略を建てて乗り込む必要がある」と話す。それを実現する方法として「中国の大手パブリッシャーが日本にブランチを設置して日本語を話すスタッフを置くようになった。日本企業は日本にいながらにして、中国のパブリッシャーに自社開発のゲームを託すことができる環境が整いつつある」と明かした。
さらに加藤氏は、日本企業のビジネス姿勢に苦言を呈した。「中国パブリッシャーから日本のIP(アニメタイトルやキャラクターなど知的財産権)を使いたいという要望が来るが、日本企業の対応が遅すぎて破談になることもある」と顔を曇らせる。リュウ氏は、「日本では、古いと思われているIPであっても中国では人気が出る場合もあるので、挑戦してほしい」と付け加えた。
新技術やストリーミングプラットフォームの登場で、大きく変わろうとしてゲームビジネスの未来とそこで生き残るための方策を垣間見ることができたセミナーだった。
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