「泥臭い試行錯誤の繰り返しだ」 LINEが“人に寄り添ったAI”に投資を続ける理由 この1年を振り返る(1/2 ページ)
厚生労働省は新型コロナウイルスの水際対策として、海外からの帰国者に対する健康チェックを行っている。帰国後の14日間、最寄りの保健所を通じて本人に電話をかけ、健康状態を確認するものだが、この負担の大きい作業にLINEのAI技術を導入して省力化を図っている。
厚生省が4月に運用を始めたシステムでは、LINEのAI技術「LINE BRAIN」を活用した音声応対サービス「AiCall」とチャットbotを組み合わせ、保健所職員の代わりにシステムが対象者に電話をかけられる。さらに音声応答で体調を確認し、得られたデータの記録までを自動で行えるという。検査で忙しい保健所職員の業務をAIがまさしく代行して負担を減らしている。
LINEでAI事業を指揮する砂金信一郎氏(執行役員、AIカンパニー カンパニーCEO)は、7月29日に開幕したイベント「LINE AI DAY」(オンライン開催)で、LINE BRAINの取り組みを振り返りながら、同社が掲げるAIのビジョンを話した。
「人に優しいAI」を目指して
LINE BRAINが登場したのは2019年7月。これまでの1年でチャットbotやOCR(Optical Character Recognition:光学文字認識)、音声認識や音声合成、対話エンジンなどを組み合わせた電話の自動応答、さらに顔認識と運転免許証などの決まった形式の証明書を高度な技術で認証するeKYC(electronic Know Your Customer:本人確認)といったサービスを展開し、延べ280社を超える企業から好評を得ているという。
砂金氏は「LINEが目指すAIは、人に優しいAI」と説明する。人の仕事を奪ったり、効率だけを追求したりではなく、多くの人が日頃の業務や生活の中で抱えている「面倒くさい」「煩わしい」と思うことを肩代わりする、人に寄り添ったAIを目指しているという。
これまで同社はAIを活用した音声アシスタント「LINE Clova」と、Clovaの要素技術をAPIとして企業に提供するLINE BRAINの2つをそれぞれ別に推進してきたが、「LINE CLOVA」(全て大文字)というブランドに統合。LINEが持つAI技術を表すブランドを1つにする。
AI技術の価値がより重要なものになるだろうという思い
砂金氏は、LINE BRAINについて「万能でも、網羅的なものでもない、より自然なユーザー体験を実現するために必要な要素技術に特化して取り組んでいる」と説明する。具体的には日本語での音声認識、音声合成、言語解析。画像処理の中でも特に言語依存性が高いOCRの技術、加えて基礎研究やAIを応用した製品やサービスの開発を推進しているという。
LINEがAIの領域に多くのリソースを投下する理由について、砂金氏は「近い将来、環境が変わったときに、われわれのAI技術の価値がより重要なものになるだろうという思いがある」と話す。
「AIの開発というと、すごくキラキラしたカッコイイものと捉える方もいるかもしれないが、実際はひたすらに学習データをきれいにクレンジングして、それをAIに学習させて、精度を改善する。泥臭い試行錯誤の繰り返しだ。数え切れないほど繰り返すことで、実際の業務で使えるレベルまで引き上げている」(砂金氏)
LINE CLOVAは今後、精度の改善を続けることはもちろん、新たなサービスの開発も進めているという。その中の1つに「AiCall Console」がある。現在、現場にAiCallを投入するには、LINEのエンジニアによる膨大な調整が必要で、より良いユーザー体験の実現は容易ではないという。
その調整作業をより簡単に済ませられる設定コンソールがAiCall Consoleだ。これが使えるようになれば、エンジニアが現場に出向くことなく、LINEのパートナー企業がAiCallを設定し、現場に展開できるようになる。
もう1つ、「eKYC for Account Check」は、金融機関の口座が休眠状態でないか、ある程度の頻度で使われているかなどを定期的に確認するサービスだ。この作業を本人確認のeKYCの技術を使って実現する。現在、多くの金融機関ははがきのやりとりに頼っているが、eKYC for Account Checkが実用されれば、LINEでメッセージを送って、反応してもらうだけで確認作業が完了できるようになる。
砂金氏はイベントの中で開発中のソフトウェア「CLOVA Note」(仮称)を紹介した。音声認識技術を利用して、会議などの音声から議事録を書き起こすものだという。現時点では正式版の提供時期は決まっていないが、年内には詳細を発表したいとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
「ペンギンを返して」 Suica新キャラ候補3案公開でSNSに戸惑いの声 一般投票は8日から
-
2
大雨で「首都圏外郭放水路」稼働 濁流が“地下神殿”を満たすまでの動画公開 国交省
-
3
幻の「ちいかわ」コラボ第3弾皿、捨てちゃうの? くら寿司に聞いてみた
-
4
Duolingoの新アイコンが「気持ち悪い」 世界のユーザーから「元に戻して」の声
-
5
名古屋豪雨、冠水した道は今通れる? トヨタ「通れた道マップ」で確認を
-
6
“地下神殿”への濁流動画をダウンロード公開 Xでの反響受け……「首都圏外郭放水路」に称賛
-
7
OpenAI、ミレニアム懸賞問題「ナビエ・ストークス方程式」をAIが解決したと発表 数学者は経緯に反発
-
8
メルカリ、くら寿司ちいかわ騒動巡りコメント 出品削除・禁止の有無は
-
9
くら寿司、「ちいかわ」グッズ不正で「警察と相談、厳正に対処」 メルカリと連携も
-
10
ネコはなぜ箱に入りたがるのか? ただ“狭い所好き”なだけではなかった オランダ研究チームが2014年に調査
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR