小寺信良の「プロフェッショナル×DX」

動画編集もAIにやってもらう時代? 言葉で指示するAI編集ツール「Palmier Pro」を使ってみた(1/2 ページ)

 前回は米Adobeが公開した「ChatGPT」向けプラグインをテストした。1つのプラグインで写真やイラスト、動画が扱えるということで、従来のアプリを横断しての作業や、特にツールを指定せずやりたいことを指示するだけで勝手にツールが選択されるなど、従来のワークフローを大きく変える可能性が感じられた。

 その一方で、動画機能に関してはまだできることが少なく、がっかりしたのも事実だ。ローカルで動く「Premiere」と同じことができるわけではないからだ。

 ローカルで動くPremiereの方も、AIとのインテグレーションが進められているところだが、これは既存ツールにAI機能を追加という格好で作られている。では逆に、AIの上に編集ツールのUIを被せたらどうなるのか。その答えの1つが「Palmier Pro」だ。現在はmacOS 26(Tahoe)以降のApple Silicon搭載Mac版のみ公開されている。

 開発者は、もともとは生成AIを使ってコンテンツ制作を行っていたという。こうしたワークフローでは、

  1. Webブラウザで生成AIを使って動画を作成
  2. 生成動画をダウンロード
  3. ダウンロードしたファイルを編集ツールへインポート
  4. インポートされた動画をタイムラインに貼り付け

 という段取りになる。編集してみてしっくりこなければまたこのプロセスの繰り返しで、どうしても手数が多くなる。この問題を解決できないかということで、生成AIをコントロールするコンソールと編集ツールを一緒にしたのが発端だ。

 執筆時点でのバージョンは0.8.1で、今年4月の初公開以降、既に80回以上アップデートされている。今年7月時点で一度別メディアで記事化したことがあるが、ものすごい勢いで機能拡張されているので、今回改めてご紹介したい。

見た目はシンプルだが……

 Palmier Proを起動すると、Adobe Premiereをほうふつとさせるような、一般的な編集ツールのように見える。特徴的なのは、UIの左側がAIチャット欄になっていることだ。ファイルのインポートやタイムライン上の編集は、人間がやる場合はUIで行い、AIに任せる場合はプロンプトを入力して編集させる。AIは、タイムライン上の操作を代行するという格好になるので、何が起こったかはタイムライン上で把握できる。

Palmier ProのUIはシンプル

 無料でもある程度は使えるが、生成AIの機能を使う場合にはクレジットが必要になるので、有料プランに加入する必要がある。現在ディスカウントされており、5000生成クレジットが使えるProプランは月額29ドル、1万2000生成クレジットが使えるMaxプランが69ドルとなっている。今回はProプランでテストしている。

 連携可能な生成AIは、静止画は「GPT Image 2」「Nano Banana」シリーズ、「Grok」など12モデル、動画は「Seedance」や「Kling V3」など24モデル、音声・音楽は「ElevenLabs」や「Sonilo Music」など12モデルだ。これだけのモデルを全部ライセンスして課金すると大変なことになるが、Palmier Proから一括課金で使えるようになるのは、それだけでお得感がある。

利用可能な生成AIは、それぞれON・OFFが可能

 ではまず筆者のトーク動画を題材に、どんなことができるのか試してみる。クリップをタイムライン上に貼り付けただけで、音声の無音部分が自動的にハイライトされる。「無音部分をカットしてください」とプロンプトで指示すると、98カ所を自動的にカットしてくれた。

タイムラインにクリップを貼っただけで、無音部分を自動検出
無音部分を自動カット。90カ所以上の編集もあっという間だ

 本来ならフィラーワードや言い直し部分も自動でカットしてくれるといいのだが、一応トライしてみたところ、切りすぎる傾向があったため、元に戻した。何カ所も編集されていたらUndoするのも大変だが、そこはAIにやり直しを任せられる。トークのカット編集は、まだ人間がやった方が正確である。

やりすぎた作業でも、コマンドで元に戻せるのは楽

 日本語へのローカライズはかなり進んでおり、一部英語表記は残るものの、おおむね利用には問題ないレベルである。ただ一部のメニューでは、言葉の意味が逆になっているところがある。「トラック上の前方を選択」というワードから連想すると、選んだクリップからタイムライン上の時間軸の前方方向、つまり左側のクリップが全部選択されるイメージだ。

ローカライズにはまだ一部おかしなところもある

 だが実際の動作は逆で、時間軸として後ろのクリップが選択される。「トラック上の後方を選択」の間違いだろう。Palmier Proは現在28言語に対応しているが、おそらくAIによる翻訳機能を使っているものと思われる。オリジナルのメニュー記述の意味をAIが誤認した可能性がある。

 オーディオトラックはステレオであるが、マイクは片方しか入っていないので、Lchをモノラルとしてセンターに配置したかった。だがステレオトラックをモノラルにする機能は実装されていなかった。以前試したバージョン0.6.12の時も実装されていなかったので、音声トラック処理は後回しになっているようだ。

オーディオトラックをまとめる機能は、いまだ実装されず

 トラックタイプが変更できなくても、オーディオミキサー機能があればパンポットなどを使ってモノラル化できるのだが、それがまだ実装されていない。編集ツールとしては音声ミキサーは必須なので、早期に実装されることを望みたい。

 もう1つ一般的な編集ツールとして奇妙なのは、クリップ間を接続するトランジション機能が搭載されていないところだ。いくら生成AI動画をぶっつなぎするとはいえ、ディゾルブぐらいは実装してもいいだろう。だがこれは後述する別の方法で実現できた。

トランジション機能もまだ実装されず
印刷する
SNSでシェア
SpecialPR

小寺信良の「プロフェッショナル×DX」

クラウド活用にリモート編集環境と、映像にまつわるプロフェッショナルの分野にDXの波が押し寄せている。プロの現場で何が起こっているのか。最新のITトピックを小寺信良氏が解説する。

この連載の記事をもっと見る

関連記事

こんなメディアも見られています

ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。

メールマガジンを配信中
メールマガジンを配信中

国内外の業界動向、AIやクラウドなどの最新技術、キャリア情報など今知りたい情報をまとめてお届けします。

いますぐご登録

本日の新着記事

アクセスランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

ITmedia NEWS SNS

X @itmedia_newsをフォロー

インフォメーション

ITmediaNEWSをフォロー

あなたにおすすめの記事PR