小寺信良の「プロフェッショナル×DX」
動画編集もAIにやってもらう時代? 言葉で指示するAI編集ツール「Palmier Pro」を使ってみた(2/2 ページ)
AIらしい機能を試す
AI搭載ツールらしい機能としては、字幕生成がある。この機能はPremiereや「DaVinci Resolve」にも搭載されているが、Palmier Proでも同じくUIの中に機能が実装されており、プロンプトによる指示ではない。言語や文字数、スタイルなど選択肢が多いので、UIを用意した方が早いという判断だろう。翻訳機能も実装されているが、これはUIの対応言語よりもだいぶ少ない。
実際に生成される日本語字幕では、句読点の判断に曖昧なところがあるが、内容自体の間違いは少ない。文字の修正は、字幕クリップを選択して右上のコンテンツ欄で編集できる。一方文字起こしされた「インデックス」画面では、文字をクリックするとタイムラインの再生ポイントがその位置にジャンプする。文字検索もできるので、特定のワードを喋っているところを探すのに重宝する。
AIを使った機能で昨今注目を集めているのが、自動マスクツールだ。Premiereでもかなり大々的に宣伝されている機能だが、Palmier Proでは最新バージョン0.8.1で早くも実装された。トラッキングポイントをいくつか設定し、Addボタンを押すだけで、自動的に動きに合わせたマスクが生成される。人の後ろにタイトルを走らせるなど、通常ならクロマキー撮影しなければできないエフェクトが簡単に作れる。
音楽生成ももちろん可能だ。UIの中でプロンプト指示もできるが、「エージェントモード」から雰囲気を選ぶだけで、いい感じの音楽を生成してくれる。ミックスバランスなどは自分で行う必要があるが、そのうちAIで自動化されていくだろう。既に先行するプロ用ツールはそうした機能が実用段階に入っている。
特徴的な生成AI機能としては、Bロール生成がある。これは動画トラックの上に被せる映像で、通常はインサートカットとして別撮りしておくようなタイプのクリップである。今回は特に何の用意もしていないわけだが、プロンプト欄にBロールの制作テンプレートコマンドがあるので、それをそのまま使ってみた。
Bロール挿入ポイントも挿入画像も、AIが考えて自動挿入したものである。洗濯機自体はトーク内容のニトリの製品画像ではないが、まあそこはAIなので仕方がないとしても、かなり有用な機能である。なにせPalmier Pro自体のUIがシンプルなので、あの機能どこいった的な迷いがないので使いやすい。
作業ミスのカバーも、AIがやってくれる。実は編集中に誤ってクリップの音声の一部を削除してしまった部分があったが、AIに依頼して元の音声を復元してもらった。いったん同じ編集点のクリップを最上位のトラックに切り出し、音声トラックだけを分離してA1トラックに貼り付けるという作業を行っている様子が、リアルタイムで確認できた。人間がやるのと同じ作業だが、自分でやるのはかなりめんどくさい。決まりのパターンではない修正処理をお願いできるのは、AIの強みだろう。
ここまではPalmier ProのUI上の機能だが、外部のエージェンティックAIと連携させることができる。Palmier ProはMCP(AIと外部アプリをつなぐ共通規格)に対応しており、「Cursor」や「Claude」からタイムラインを直接編集できる。
本体でやれることをわざわざ外部のエージェンティックAIを使う意味があるのかという疑問はあると思うが、実は外部のAIを使うと、Palmier Proのチャット機能を使うよりも、より複雑な指示に対応できる。現在接続可能なエージェントは、「Claude Desktop」「Claude Code」「Codex」、Cursorの4つだ。今回はCursorを使うことにする。
外部AIから操作可能な機能は、スキルという格好で提供される。以前試したときはスキルが4つしかなかったが、現在は8つに拡張されている。
スキルの1つであるカラーグレーディングを試してみる。「Palmier Proで編集中のV1トラックに対して、アンバー寄りのシネマチックなトーンにカラーグレーディングしてください。」とCursorに入力すると、複数のステップで処理しながら、最終的にいい具合にグレーディングしてくれた。全体をいじるのではなく、フェイストーンは元のままで、背景をアンバー寄りのシネマチックなトーンにしてくれた。
いったん全カットのトーンをならしてから色を加えていくなど、グレーディングの基本に忠実な動作となっている。このあたりはスキルの作り方がうまいのだろう。
外部AIからの操作が特に有効だったことの1つが、トランジションの設定だ。Palmier Proには一般的なトランジション機能がないにもかかわらず、エージェンティックAIが独自にディゾルブ効果をレンダリングし、タイムライン上に貼り付けるという工夫で、ディゾルブ効果を自動生成してくれた。既に字幕テロップが入っていたが、トランジションが字幕にかぶらないよう、その下のトラックに挿入してくれるというところまで自動である。
最終的に出来上がったクリップを掲載しておく。1カ月前に試したバージョンでは、フィニッシュまでは到底いけない感じがしたが、最新バージョンでは音声トラック処理さえ可能になれば、完パケまでPalmier Proでやれそうなところまで来た。

自分で細かく操作しない編集、あるいは自分のミスの修正を頼める編集ツールという方向性は、一見するとハイエンドな編集ツールが使えないビギナーやビジネスユーザー向けのように見える。だが動画クリエイターとして自分の作品を定期的にアップしている人にとっても、大いに時間短縮が見込めるツールだろう。
筆者もまだ使い込んでいるとまでは言えないが、もう少し深掘りしていくと面白くなりそうな手応えを感じた。
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小寺信良の「プロフェッショナル×DX」
クラウド活用にリモート編集環境と、映像にまつわるプロフェッショナルの分野にDXの波が押し寄せている。プロの現場で何が起こっているのか。最新のITトピックを小寺信良氏が解説する。
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