これからは「eBook作るなら一太郎」──ジャスト、創作支援機能付き「一太郎&ATOK 2013」投入の狙い:ATOKはWindows RT非対応……その理由とは(2/2 ページ)
ジャストシステムが日本語ワードプロセッサ「一太郎」、日本語入力システム「ATOK」の2013年版を発表。一太郎2013は“玄”という「幽玄の境地」に沿ったサブネームが付けられ、創作者の感性を刺激する機能や電子書籍作成機能を強化して盛りこんだ。
Windows 8に完全対応、ストアアプリでも利用できる「ATOK 2013」
日本語入力システム「ATOK 2013」は、新OSであるWindows 8を正式サポートし、Windows ストアアプリ上でも、さらにタッチ入力スタイルでも快適に文字列を入力できるよう機能を強化した
ATOKはスマートデバイス、特にAndroid版の伸びが好調で2011年度は前年度比160%、2012年度もKDDIが展開するauスマートパス対象アプリであることなどの要因で、グッと利用者を増やしている。一方、PC向けは微減だが月額課金制のPassport契約者が増加傾向にあり、さらにWindows 8搭載PCの購入ないしOSの入れ替えとともに新バージョンにする層もかなりいると同社は想定する。
Windows 8では、これまでのデスクトップUIでの操作はもちろん、操作体系はそのままにWindowsストアアプリでの日本語入力エンジンとしても利用できるようになった。スマートデバイス版ATOKで培ったユーザーインタフェース(UI)を活用し、Windows ストアアプリのタッチ操作を自然に行えるよう工夫したUIも実装する。
このほか、「よりかしこい日本語入力」のための機能は、
- 単文節単位での入力精度を向上
- 打鍵ミス確定後/無変換時の誤り指摘
- クラウド上の辞書を参照できる「ATOKクラウド辞典サービス」の提供
などの部分を強化した。
ATOKは入力中文字列の前後を識別することで、文字列を一気に入力してから変換する“連文節変換”がそもそも得意だが、検索ワードの入力やTwitter、SNSなど短文テキストを入力する機会が増え、総じて単文節単位/細切れでの入力傾向も増えた現状をかんがみ、単文節単位/細切れ入力時のさらなる精度向上を図った。こちら、具体的には確定後の文字列も識別・精査内容に加えることで精度を高めている。
例えば「ありがとうござます」「改めて連絡させたいただきます」。
一見大丈夫そうだが、よく見ると恥ずかしいタイプミスをしている。このような誤りを直前の文節との関係とともに認識し、入力確定後であっても指摘、修正する。
細切れ入力とは、「満天の 星」と単語別に確定して入力していくスタイルのこと。
例えば「満点の星」「最新の注意」「移動の挨拶」
“満点の”という文字列は、後に“テスト”などが続く可能性もあるのでこの時点で誤りとは認識できないが、その後に“星”が来れば誤りと分かる。このような“確定してしまった”同音語の誤変換に対しても指摘と訂正候補の掲示を行ってくれる。
ATOKは、音声認識テキスト化ソフトウェア「ドラゴンスピーチ11J」(一太郎2013 玄 スーパープレミアムに同こん)との連携も便利そうだ。ドラゴンスピーチは音声を発し、それを高精度で認識してテキスト化するソフトウェアだが、音声認識の後にATOKを介すことにより、通常では認識が困難な同音語も含めてより正しい日本語でテキスト化される。これを応用すると、インタビュー音声の文字起こし、会議の議事録・発言録作成といった用途はもちろん、ひらめいた言葉を発するだけですぐ正確にテキスト化できる。こちらも「創作活動の支援」機能と位置付けられる。
Windows RTは非対応/ジャストシステムが毎年新バージョンを投入する理由
なおATOK 2013はWindows 8に完全対応とするが、そのARM版エディション「Windows RT」では残念ながら利用できない。こちらはiPhoneやiPadなどiOS機器と同様に、Microsoftがサードベンダーに対してIMEのインストールを認めていないためだ。
「Windowsストアアプリ/Windows 8対応は、Microsoftの定めるガイドラインに沿って対応させた。ただ、こちらはガイドラインがかなり厳しく、弊社として提案しきれなかった機能は確かにある。Windows RTサポートも……弊社としては当然やりたい意向はあるが、現時点では残念ながらどうにもできない。ATOK Pad for iOSのようなスタイルなら可能かもしれないが、それでは意味がないと考える人は多いと思う」(ジャストシステム コンシューマ事業部企画部の井内有美氏)
日本市場におけるWindows RT搭載マシンについて、現在こそ一部アーリーアダプタ層が導入する段階にとどまっているが、そういった層こそ高精度な日本語入力環境は必須。追って日本でWindows RTを本格的に訴求したいのであれば、もちろんビジネスシーンにも訴求するならさもありなんと思われる。
日本語を使用する日本人に向けた日本語入力環境を、として同社は毎年一太郎、ATOKの新バージョンを投入している。日本語入力が必要なあらゆる場面で身近な存在として、最高に快適な日本語環境として進化し続けること──「それが一太郎とATOKの使命」(福良社長)という。
2012年はeBook関連機器・市場がかなり話題になったが、一太郎はその中で日本向けの需要、特に個人向けの電子書籍データ作成(eBookデータのオーサリング/パブリッシュ)機能を強化し、さらに創作活動を支援する機能まで盛りこんだ。すでにMicrosoft Officeに追いつけ追い越せ──のみではなくなった、一太郎ならではの独自の進化ポイントと言える。
「時代のニーズに合わせて一太郎も変わっていく。そして日本語入力なら弊社が鉄板。今後も、毎年徹底したこだわりを込めて新バージョンを投入する」(福良社長)
ATOK初? 2013年2月7日まで使える「ATOK 2013プレビュー版」を無償公開
ATOK 2013の発売に先駆け、ATOK 2013 プレビュー版を無償公開する。利用可能期間は製品版発売日前日の2013年2月7日まで。Windows 8/Windowsストアアプリでもきちんと便利に使える点を特に伝えたく、ATOK初のプレビュー版無償公開に踏み切ったという。
利用可能期間は2013年2月7日24時まで。ダウンロード提供期間は2012年12月4日~2013年2月7日18時。ダウンロードURLは「http://www.atok.com/camp/touch2013/」。
ほか、一太郎発売記念キャンペーン、ATOK 2013発売記念キャンペーンも実施する。
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