インテルのIT部門が企業向けUltrabookを育てた:10年間の社内サポートがモノをいう
インテルの情報システム部は、同社のIT部門による製品開発や生産性向上、製品開発における取り組みとその成果を日本の関係者に紹介する説明会を行った。
ビッグデータを駆使してUltrabookは進化する
インテルのIT部門は、世界の63カ国164カ所にあるインテル拠点のうち、59カ所で活動している。9万5200人いるインテル全社員のIT利用を6500人のIT部門スタッフで支えている。インテルのIT部門の役割は、同社全支出における2.6パーセント未満のコスト(2012年の実績で社員1人当たりにして1万3600ドル)で、IT技術を利用した生産性の向上を実現することにある。
2012年の実績として、データセンターの集約が進む一方でストレージ容量は増え、システムの仮想化が進むとともに、新規サービスの導入時間と新規Webアプリケーション展開に要する時間がそれぞれ短縮したことを挙げている。また、インテル社員が利用するクライアントPCにおいて、SSD搭載モデルの普及が97パーセントまで進み、社員向けに開発したモバイルアプリ(iOS、Android対応アプリ)の数、そして、会社支給に加えて個人利用のスマートフォン、タブレットデバイスの数も大幅に増えていることも紹介した。
説明会では、以上の取り組みによって、マルウェアの感染率は3カ月あたりで1パーセント未満まで下がり(通常のケースでは1カ月で30パーセントを超える)、ビッグデータ予測エンジンの利用でインテルが開発する半導体の検証時間が25パーセント削減でき、さらに、社員個人が購入したデバイスの業務利用によって、インテル全体の生産性が3年間で700万時間向上したと主張している。
ビッグデータによる予測分析については、過去の売り上げ履歴や、現在の売り上げ関連データのリアルタイムの取り込みでその地区の有力リセーラーを特定することで、2000万ドルの販売機会を創出するほか、製造過程では検証作業にかかる時間を削減して3000万ドルのコスト削減を実現する予定だという。さらに、インテルのIT部門は企業向けUltrabookの開発において、10年以上にわたるインテル社員へのサポート経験を生かして、企業におけるモバイルノートPCで必要な機能や耐久構造の重要性を提案している。
ビッグデータの活用はサプライチェーンの効率向上も実現した。インテルにおける開発部品、製品の物流拠点は7カ国に分散して30カ所の拠点に倉庫を展開する複雑な流れを構成しているが、過去5年間にわたるシステムの統合とプロセスの見直しによって、リードタイムを65パーセント短縮し、ユーザー(リセーラー)対応時間は3倍も速くなったという。また、在庫は32パーセント削減できるなど、サプライ計画の精度向上が管理コストの削減を実現した。
IT部門がインテルで提案するモバイルPC環境
IT部門は、インテル社員が利用するモバイルコンピューティング環境についても提案をしている。その1つがUltrabookの支給で、日本のセールスグループでは100パーセントの導入を実現している。OSは、新規PCではWindows 8を導入するほか、既存PCでも希望者にはWindows 8に更新している。また、事業用電話端末を廃止して、ソフトウェアによるコミュニケーションアプリの普及も進めている。
個人所有の業務利用端末(BYODデバイス)は、2011年と2012年の比較で38パーセントも増加して、インテル全体では2万3500台にも上る。また、スマートフォン(iOS対応、Android対応)の普及にあわせて、インテル社員向けモバイルアプリも41種類用意し、社員間のコミュニケーションツールや製品スペックリスト、インテル内部で使っている用語辞典、空港から事業所までのシャトルバス予約など、細かい業務改善ツールを提供している。
ソーシャルメディアの事業利用も積極的に取り入れており、SaaSの導入によって、インテルで進めているプロジェクトの数は6.5倍に増え、オンデマンド・セルフサービスへの移行で160万ドルのコスト削減を実現、さらに、各国インテルが独自に用意していたホスティングサービスをハイブリッド・クラウドで一元化することで、こちらも年間110万ドルの節約が可能になったと説明している。ハイブリッド・クラウドへの移行は、容量を動的に管理できるほか、社内ソーシャルメディアによってインテルのソフトウェア開発を世界規模でサポートするため、運用開始までの期間がそれまでの3~4カ月から5~10日と短縮できる。この特徴が、需要予測が難しいWebサービスの立ち上げに特に効果を発揮している。
インテル内部のセキュリティー・アーキテクチャの増強では、「IDとアクセスの管理」「セキュリティー・ビジネス・インテリジェンス」「データ保護」「インフラストラクチャー」を柱に動的で細かな制御を実現する「Protect to Enable」戦略を策定し、業務支援とセキュリティーの両立を目指している。
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