Cintiq使いの漫画家が「VAIO Z Canvas」を真剣にレビューする:液晶ペンタブに新時代が到来!(6/6 ページ)
プロの絵描きが使うなら、液晶ペンタブレットは「Cintiq」しかあり得ない、いや「VAIO Z Canvas」ならあり得る! ネットでそんな論争を見かけるが、実際はどうなのか? PC USERでおなじみの漫画家(Cintiq愛用)がVAIO Z Canvasの製品版をチェックする。
デジ絵師もノマドの時代?
さて、こんなハイスペックなVAIO Z Canvasだが、同モデルには「クリエイターをデスクから解放し、第2の場所でプロレベルの創作を可能にすること」という思いが込められているという。
筆者の第2の創作場所はファミレスである。ネームを考えるときによく行くのだが、漫画原稿やカラーイラストをファミレスで描いたことはない。しかし、VAIO Z Canvasのフルデジタル環境を使えば、ファミレスでも作業ができるはず──ということで実際に試してみた(筆者が利用している店は問題ないが、店舗や時間帯によっては、こうした時間がかかる作業を禁止している場合もあるので注意してほしい)。
結論から言うと、ファミレスでも作業はスムーズにできる。電源がなくてもバッテリーは十分に持つし(JEITA 2.0で公証7.6時間)、マシンは静かなので周囲の迷惑にもならない。モバイルルータを持っていったり、スマホのテザリングを使えば、ネット環境の構築も簡単だ。参考にしたい写真をスマホに表示しながら絵を描いたりもできる。
ファミレスなら机も広いし、ドリンク飲み放題だし、クーラーも効いているし、気分転換もできて、なんて快適な作業環境だろう。自宅兼仕事場にこもっての作業では、こうはいかない。
ただ、筆者のような人目を気にする人間は、作業の様子を人に見られるのがツライ。ネームの簡単な絵や、ラフスケッチ程度ならあまり恥ずかしくないのだが、「カワイイ女の子を清書するぞ~」となると、気恥ずかしい。女子高生のイラストを、ドリンクバーで粘るリアル女子高生の集団にチラ見されたりすると、いたたまれなくなる。
ただ、これがホテルであったり、ネットカフェであったり、外出先でも人目を気にせず作業できる場所であれば、思う存分描けると感じる。創作環境を持ち運べると、クライアントからの急な修正要望にすぐ対応できたり、旅先で仕事を進めたりもできるので、忙しいクリエイターにとってはありがたいだろう。
こうした「出先でのデジタル創作」はこれまでのWindowsタブレットでもできないことはないが、マシンの性能やペンの精度、液晶ディスプレイの発色などを考えると、「できれば自宅のちゃんとした環境でやりたい」とためらわれるだろう。
しかし、VAIO Z Canvasなら、例え出先であっても力不足を感じずに作業できる。作業内容によってはもう1つ大きなディスプレイが欲しくなるシーンもあるとは思うが、修正依頼などであれば素早く対応できる。
絵描きが本気で向き合えるペンタブレットPCの誕生
以上がVAIO Z Canvasを1週間使ってみた感想だ。クリエイター向けモバイルPCとして高い次元の性能と携帯性を提供しながら、これまでネックになりがちだったペン性能をしっかりと改善したことで、VAIO Z Canvasは絵描きが本気で向き合えるマシンになっていると思う。
クリエイターが長期利用することを想定した購入後のサービスメニューも充実していて、安曇野工場で液晶ディスプレイの色温度をD65に再調整してLUT(ルックアップテーブル)を書き直す白色度補正サービス、劣化したバッテリーの交換サービス、画面保護シートの貼り替えサービス、ペン関連パーツの補修販売、ワイヤレスキーボードの補修販売が行われる。これなら購入後も長期間安心して使えるのではないだろうか。
後は、VAIO Z Canvasの「いいお値段」とどう折り合いをつけるかだ。今回レビューした構成での直販価格は32万2280円(税別/配送料込)となっており、ちょうど仕事に使えるWindows機が欲しいと思っていた筆者にとっても、悩ましい問題である。
お金、降ってこい!
VAIO Z(VJZ13A1)の主な仕様 | |
---|---|
製品名 | VAIO Z(VJZ13A1)/M(Middle) SKU |
メーカー | VAIO |
OS | 64ビット版Windows 8.1 Pro Update |
本体サイズ(幅×高さ×厚さ) | 本体:約301×213×13.6ミリ、キーボード:約301×213×4.4ミリ |
重量(実測値) | 本体:約1.21キロ(1177グラム)、キーボード:約340グラム(339グラム) |
画面サイズ(液晶方式) | 12.3型ワイド(IPS) |
アスペクト比 | 3:2 |
タッチパネル | 静電容量式 |
デジタイザ | 搭載(N-Trig製/VAIO独自チューニング) |
ディスプレイ解像度 | 2560×1704ピクセル(約250ppi) |
液晶保護シート | 搭載(貼り付けサービス利用) |
CPU(コア数/スレッド数) | Core i7-4770HQ(4/8) |
動作周波数(最大) | 2.2GHz(3.4GHz) |
チップセット | CPU内蔵 |
vPro | - |
GPU | Intel Iris Pro Graphics 5200 |
メインメモリ | 16Gバイト(DDR3L-1600 SDRAM) |
メモリチャンネル数 | デュアルチャンネル |
メモリスロット(空きスロット数) | オンボード(0) |
ストレージ(評価機実装) | 512Gバイト(Samsung「MZHPV512HDGL-00000」) |
ストレージフォームファクタ | M.2 |
ストレージ接続インタフェース | PCI Express 3.0 x4 |
光学ドライブ | - |
無線LAN | IEEE802.11a/b/g/n/ac |
Bluetooth | Bluetooth 4.0 |
NFC | - |
センサー | 加速度、ジャイロ、地磁気 |
有線LAN | 1000BASE-T |
ワイヤレスWAN | - |
キーボード | 日本語87キー/ワイヤレス(RF方式) |
キートップ仕様・形状 | アイソレーション |
キーピッチ | 約19(横)×18.5(縦)ミリ(縦ピッチは実測値) |
キーストローク | 約1.35ミリ |
ポインティングデバイス | クリックパッド(左右ボタン一体型) |
主なインタフェース | USB 3.0×2(1基は電源オフチャージ対応)、Mini DisplayPort出力、HDMI出力、ヘッドフォン/マイク兼用端子(3.5ミリ)、Webカメラ(イン92万画素/メイン799万画素) |
メモリカードスロット | SDメモリーカード(SDXC対応、UHS-I、UHS-II対応) |
SIMカードスロット | - |
その他カードスロット | - |
スピーカー(音質補正ソフトウェア) | ステレオ |
マイク | モノラル |
指紋センサー | - |
セキュリティチップ | TPM 1.2 |
セキュリティロックポート | - |
バッテリー動作時間 | JEITA 2.0:約6.7~7.6時間、JEITA 1.0:約7.2~8.5時間 |
バッテリー仕様 | 63ワットアワー |
ACアダプタ実測サイズ(幅×奥行き×高さ) | 45×105×27ミリ(突起部除く) |
ACアダプタ実測重量(本体のみ/ケーブル込み) | 196グラム/239グラム |
ACアダプタ出力仕様 | 65ワット出力、定格19.5ボルト/3.3アンペア |
ACアダプタ対応電圧 | 100~240ボルト(50/60Hz) |
DC端子形状 | 丸形 |
プラグケーブル端子形状(ACアダプタ側) | 2ピンメガネ型 |
防水/防滴 | -/- |
カラーバリエーション | シルバー |
オフィススイート | -(有償でOffice Premium選択可) |
クリエイティブソフト | -(有償でAdobe CCなど選択可) |
直販価格 | 32万2280円(税別/配送料込) |
発売日 | 2015年5月29日 |
関連記事
VAIO Z/Pro 13と横並び比較:「VAIO Z Canvas」の圧倒的パフォーマンスを徹底検証する
数あるPCブランドでも高性能なモバイルPCに定評あるVAIO。モンスタータブレットこと「VAIO Z Canvs」は、既存の「VAIO Z」や「VAIO Pro 13」といった人気モデルに比べてどれくらいの性能を実現できているのだろうか? 横並びで徹底検証した。お絵描きもゲームもできちゃう!:約25万円の「VAIO Z Canvas」がタダで手に入る、そう“AR”ならね
六本木ヒルズで開催中の「VAIO Cafe」には、「VAIO Z Canvas」のオーナー気分を味わえるユニークな仕掛けがさりげなく用意されている。テーブルの上にあるカードに注目だ。かざすだけでRAWデータも高速転送!:「VAIO Z Canvas」に台数限定で付属する「TransferJet」アダプタとは?
初回生産分の予約はすでに終了しているが、5月29日の店頭販売分にも付属する。“らしくないもの”はVAIOでない:500社のユーザーと第一線クリエイターの意見で「VAIO Pro 13|mk2」「VAIO Z Canvas」の“どこ”が変わった?
VAIO Cafeの事前公開を兼ねた新製品説明会でVAIOの開発スタッフが新モデルのコンセプトと改善点を“ディープ”にアピール。VAIO Cafe限定グッズも登場した。3連ファンで4コアCore i7を放熱:「VAIO Z Canvas」受注開始――クリエイター向け“怪物タブレット”の全容が明らかに【詳報】
VAIOは、クリエイターに最適化した超高性能Windowsタブレット「VAIO Z Canvas」の受注を開始した。試作機の初公開から7カ月半の月日を経て、ついに発売となる。ティーザーサイトを開設:「VAIO Z Canvas」は今秋に米国でも発売へ
ソニーから分離した新生VAIOの製品は日本国内のみで販売されているが、クリエイター向けタブレット「VAIO Z Canvas」は初めて海外でも販売されるモデルとなる。これ、本気で描けますよ:液晶ペンタブ業界に嵐を巻き起こす!?――「VAIO Z Canvas」を漫画家が速攻レビュー
新生VAIOが放つクリエイター向けタブレット「VAIO Z Canvas」は、ハイスペックな“お絵描きマシン”としても使える。ワコム一強の液晶ペンタブ業界に嵐を巻き起こすのか──PC USERでおなじみの漫画家が、試作機を触った。Cintiq Companion 2との比較も!2015年PC/タブレット春モデル:VAIOの超高性能タブレットが“Z”シリーズとして正式発表――「VAIO Z Canvas」
クリエイター向け超高性能タブレットの試作機として話題を集めた「VAIO Prototype Tablet PC」が、「VAIO Z Canvas」の名で正式発表された。発売は5月の予定だ。タブレットに“超高性能”という新提案:「VAIO Prototype Tablet PC」を濃密にチェックする
4コア/8スレッド対応の第4世代Core Hプロセッサ、Iris Pro、PCIe SSD、Adobe RGB対応の12.3型“2560×1704”液晶、ワイヤレスキーボード、筆圧ペン……新生VAIOが放つ超高性能タブレットの試作機に込められた数々のこだわりを追う。林信行が見た「新型VAIO」:「VAIO Prototype Tablet PC」はクリエイター市場を揺さぶるモンスターになれるか
Adobe MAX 2014で披露された新生VAIOの高性能タブレットPC「VAIO Prototype Tablet PC」を林信行氏が現地からリポート。「VAIO Prototype Tablet PC」公開――4コアCPU、Iris Pro、Adobe RGB対応の12.3型“2560×1704”液晶を備えた超高性能タブレット
クリエイター向けイベント「Adobe MAX 2014」でVAIOが公開した試作機は、クリエイターが外に持ち出してプロレベルの作業を可能にする圧倒的な高性能タブレットだった。超高性能タブレットを映像制作に活用:「VAIO Prototype Tablet PC」なら4K動画の24p再生も高速RAW現像もできる?――Inter BEEのキヤノンブースで実機デモ
Inter BEE 2014のキヤノンブースに、新生VAIOの超高性能タブレットPC「VAIO Prototype Tablet PC」が展示されている。キヤノンの4Kシネマカメラで撮影した4K動画の現像や再生が可能というが、果たしてそこまでのパフォーマンスを備えているのだろうか?動画で360度チェック:次の一手か!? VAIOの“モンスタータブレット”にじっくり触れてみた
米国で開催中のイベント「Adobe MAX 2014」で展示された、VAIOの次期モデルと予想される“モンスタータブレット”。プロトタイプとはいえ、高い完成度に舌を巻いた。+5000円で選択可:「VAIO Z」に英語/日本語カナなしキーボード追加――購入後の交換サービスも
ユーザーからの要望に応えて、「VAIO Z」のカスタマイズモデルで「英字配列」および「日本語カナなし」のキーボードを選べるようになった。変形機構、液晶、キーボード、ペンの品質に迫る:ソニーから独立しても“最強伝説”は健在か?――新生「VAIO Z」徹底検証(後編)
ベンチマークテストで圧倒的な性能を見せつけた13.3型ハイエンドモバイルPC「VAIO Z」。レビュー後編は、その使い勝手をじっくり確かめていこう。性能、スタミナ、騒音、発熱をじっくりテスト:復活した“モンスターPC”の驚くべき性能とは?――新生「VAIO Z」徹底検証(前編)
かつて秀逸なハイエンドモバイルPCとして人気を誇った「VAIO Z」が最新仕様で帰ってきた。VAIO新会社とともに生まれ変わった“Z”の実力を徹底的にチェックする。動画で360度チェック:「群を抜いた、いいできに仕上がっている」――新型VAIO Zの開発責任者が語る
日本の物作りを徹底的に追求したという新型「VAIO Z」。その魅力について、開発責任者が動画コメントを寄せてくれた。また、高速なVAIO Zの起動や終了も動画で見ていこう。動画で360度チェック:設計・製造担当者自らが分解!!――新型VAIO Zの中身を知る
高い性能とスリムな2in1 PCとして話題を集める新型「VAIO Z」だが、その中身はどのようになっているのだろうか。設計・製造担当者自らの解体模様を動画で見ていこう。動画で360度チェック:「VAIO Zはここで生まれた!」――安曇野工場を世界初の動画で紹介
出荷が始まった新型「VAIO Z」だが、その古里である長野県安曇野工場での製造工程を、世界初公開となる動画で紹介しよう。店頭にVAIOが本格復帰:VAIO、家電量販店で購入して持ち帰れる「個人向け標準仕様モデル」を発売
VAIOのPC製品ラインアップは、仕様が固定ながら家電量販店で購入して持ち帰れる「個人向け標準仕様モデル」、仕様が選べる一方で納品は後日となる「VAIO OWNER MADEモデル」の2種類となった。2015年PC/タブレット春モデル:新生VAIOがハイエンドモバイルPCの“Z”を復活――「VAIO Z」
TDP 28ワットの第5世代Core i7、16Gバイトメモリ、512GバイトPCIe SSD、長時間駆動のバッテリー、そして独自の変形機構と筆圧ペンまで盛り込み、ハイエンドモバイルPCの「VAIO Z」が生まれ変わって帰ってきた。受注はソニーストアで3月13日12時から:VAIO Z×BEAMSコラボモデルの展示店舗が明らかに。
新宿、渋谷、横浜、神戸のBEAMS 4店舗で実機を展示。2015年PC/タブレット春モデル:VAIOが定番セレクトショップとコラボ――「VAIO Z | BEAMS特別仕様モデル」
VAIOとBEAMSの異色コラボが実現。ソニーから分離した新生VAIOならではの特別仕様モデルだ。VAIOで必要なのは顧客視点ではない:きょうから始まる新生VAIOの物語──「VAIO Z」に込めた“メイド イン 安曇野”の条件
新生VAIOがイチから開発した新モデルが登場した。安曇野FINISHを支える開発方針から展示実機の分解写真まで発表会場からリポートする。動画で360度チェック:新型「VAIO Z」の突き詰めた魅力に動画で迫る
2014年7月に船出したVAIO株式会社が、満を持して投入した新型「VAIO Z」。その魅力を動画でチェックしてみよう。動画で360度チェック:新型「VAIO Z」と「VAIO Pro 13」、ソニーの「VAIO Fit 13A」を動画で比べてみた
VAIO株式会社の新モデル13.3型モバイルPC「VAIO Z」を、ソニー時代を含めた歴代VAIOと動画で比較してみた。どこが同じで何が違うのだろうか。本田雅一のクロスオーバーデジタル:新VAIOは“次世代プロセッサ搭載PCの完成形”を目指す――関取社長ロングインタビュー
7月1日に発足した「VAIO株式会社」。ソニーという巨大企業から小さなPCメーカーのブランドとなったVAIOは、どこへ向かおうとしているのか? 関取高行社長の本音に迫る。SONYロゴのないVAIO:“新生VAIO”で変わること、変わらないこと
ソニーから分離した「VAIO」ブランドが、新たに設立されたVAIO株式会社の元で再スタートを切った。新しいVAIOはどんな製品を目指すのか。新生VAIOは2シリーズ3モデルから:VAIO株式会社、第1弾製品はSONYロゴがない「VAIO Pro 11/13」「VAIO Fit 15E」
ソニーから分離したVAIO株式会社がついに発足。第1弾製品はおなじみの「VAIO Pro 11」「VAIO Pro 13」「VAIO Fit 15E」だが、SONYロゴが省かれ、Haswell RefreshやWindows 8.1 Updateを採用するなど、一部仕様が異なる。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.