Windows 10初の大型アップデートはココに注目:鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(3/3 ページ)
ついに一般公開されたWindows 10初の大型アップデート「November Update」はもう適用しただろうか? その注意点と特徴を整理する。
企業向け機能は大幅強化
公式ブログでも触れているが、Windows 10の企業向け機能については、November Update(1511)で初めて「Windows Update for Business」と「ビジネス向けWindowsストア(Windows Store for Business)」の2つの機能がサポートされた。
これは、一般ユーザー向けに提供されている同名機能の企業版で、広域展開されているPCにおけるアップデート関連機能の集中管理のほか、企業向けのカスタムアプリをWindowsストアを介してネットワーク内のPCに配信する仕組みを提供する。
「なぜ最初から入っていなかったのか?」と疑問に思わなくもないが、Windows 10の正式リリースからまだ4カ月弱だ。多くのエンタープライズ環境ではまだ導入の検討前、あるいは検証フェーズにあり、少なくとも導入が本格化するのは2016~2017年以降だろう。その意味では、企業向けの機能実装は若干後回しとし、機能が安定するまで提供を控えていたのかもしれない。
また、November Update(1511)でサポートされた機能として、「Mobile Device Management(MDM)」と「Azure Active Directory Join(AAD Join)」が挙げられている。
MDMは、主にモバイル環境で利用する機器(ノートPCやスマートフォンなど)を集中管理する仕組みだ。以前まで、企業内のコンピューティング環境といえば、社内に設置されたPCが中心だった。だが現在では、営業ツールや社外での活動のためにモバイル機器を積極活用するケースが増え、社内ネットワーク外のデバイスを管理する仕組みが必要となっている。
MDMではAndroidやiOSといったマルチベンダー環境のサポートが重要となるだけでなく、「BYOD(Bring Your Own Device)」というキーワードに代表されるように、ユーザーの持つプライベートな機器をそのまま業務に活用する例もあり、社外秘の情報を保護する仕組みが必要となる。
恐らくは、米国で11月20日(現地時間)に搭載スマートフォン(Lumia 950)が発売されたばかりの「Windows 10 Mobile」をターゲットにした新機能であり、同OSを搭載したデバイスをMDM環境でセキュアに利用することが可能になるとみられる。
もう一方のAAD Joinは、Microsoftアカウントを使ってクラウド上で同期されるWindows 10関連の設定情報を、Microsoft Azureを使って企業内のActive Directoryへのログインで同期する仕組みとなる。
通常、Microsoftアカウントでのクラウドへのログイン動作では、一般的なクラウドサービス(FacebookやTwitterなど)への透過的なアクセスが可能だが、AAD JoinではSaaS型の各種サービス(Office 365を含む)のほか、企業内に設置されたサーバやアプリケーションのいわゆる「オンプレミス」なサービスへの包括的なログイン動作(シングルサインオン)が可能となるため、サービスごとにいちいちログイン動作を繰り返す必要がなくなる。
「Windows 10 Mobile」で法人スマホに食い込みたいMicrosoft
以上を振り返ると、日本語がサポートされたCortanaを除けば、November Update(1511)の主要な新機能は、企業向けのものに偏っているのではないかと考えられる。
これは、同アップデートのタイミングで初めて登場したWindows 10 Mobileに由来するものだ。MicrosoftはWindows 10のモバイル環境における企業ユーザーへの浸透を重視しているのだろう。
日本国内でも2015年末以降に順次Windows 10 Mobile搭載スマートフォンが市場投入されることを考えれば、2016年前半のMicrosoftは同OSの話題が中心となりそうだ。
関連キーワード
Windows | Windows 10 | Microsoft | 大規模アップデート | Windows Update | Cortana | RTM | Minecraft | 鈴木淳也の「Windowsフロントライン」
関連記事
- 「Windows 10」大特集
鈴木淳也の「Windowsフロントライン」:次のWindows 10大型アップデート「Redstone」はいつ登場する?
「TH2」と呼ばれていた大型アップデートが公開されたばかりのWindows 10。早くも“その次”となる大型アップデート「Redstone」のウワサが出てきた。ウワサの「TH2」がついに登場:Windows 10初の大型アップデート公開
これまでWindows 10 Insider Previewで提供してきた新機能や各種改善をまとめたWindows 10初の大型アップデートが一般公開された。鈴木淳也の「Windowsフロントライン」:Windows 10のアップグレード自動化で混乱再び?
Windows 7/8.1をあえて使い続けているユーザーは、今後Windows 10へのアップグレード手順が変わることを覚えておきたい。そうしないと「知らないうちに、Windows 10へのアップグレードが始まった(キャンセル可能)」という事態に見舞われるかもしれない。鈴木淳也の「Windowsフロントライン」:無料で5Gバイトまで――縮小した「OneDrive」にどう対処すべきか
有料で容量無制限から1Tバイトへ、無料で15Gバイト(写真も含めると30Gバイト)から5Gバイトへ――「OneDrive」のプラン変更は残念だが対応するしかない。Surface Pro 3ユーザーは注意:Windows 10プレビュー「Build 10576」公開――EdgeからMiracastやDLAN対応機器へのコンテンツ転送に対応
「Windows 10 Insider Preview」の最新版「Build 10576」が公開された。EdgeからYouTubeの動画やFacebookの写真をディスプレイなどに転送して表示できる。しかし、Surface Pro 3に導入するのは控えたほうがよさそうだ。鈴木淳也の「Windowsフロントライン」:Windows 10初の大型アップデート「TH2」は11月に公開か?
7月29日の一般公開から約3カ月が過ぎた「Windows 10」。この秋冬には早くも初めての大型アップデートとなる「TH2」が提供される見込みだ。新機能ぞくぞく:新しいWindows 10プレビュー「Build 10565」をISOでインストールする
Skypeの統合やEdgeの新機能、ユーザーインタフェースの改善など、目に見える更新が多い「Build 10565」を、先日公開されたISOファイルでアップデートしてみよう。7/8/8.1のプロダクトキーでアクティベーション可能に:Windows 10プレビュー「Build 10565」公開――Skype統合、EdgeやCortanaの新機能も
Windows 10正式リリース後も、開発プレビュー版の配信は続いている。「Build 10565」ではSkypeの統合、EdgeやCortanaの新機能追加、そしてアクティベーションの改善が行われた。鈴木淳也の「Windowsフロントライン」:少し未来のWindows 10をプレビュー版「Build 10532」で体験する――日本語版「Cortana」は何ができる?
「Windows 10 Insider Preview」では、正式版より“少し未来のWindows”をいち早く試せる。新ビルドで追加された日本語版「Cortana」を使ってみると、悩ましい日本語処理の問題も出てきた。ついに!:日本語で「Cortana」が使えるWindows 10最新ビルド「10532」リリース
雑談もできるよ。鈴木淳也の「Windowsフロントライン」:Windows 10リリース後に配信された「SR1」とは?
「Windows 10」の公開から2週間が過ぎようとしている。その間、一般ユーザー向けに累積的なアップデートの提供や、脇を固める純正アプリの充実化が行われた。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.