失速するWindows 10 Mobileは生き残れるのか?:鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(2/2 ページ)
日本ではサードパーティー製品の元気がいい「Windows 10 Mobileスマホ」だが、世界的には苦戦が続いている。MicrosoftはWindows 10 Mobileを諦めてしまうのだろうか。
Windows 10 Mobileのこれから
Microsoft自身はWindows 10 Mobileの継続サポートを訴えているものの、抜本的なテコ入れ策は期待できないのが現状だ。
同社の戦略的にも、直接的には利益になりにくいWindows 10 Mobileの普及にリソースを注ぐより、既に市場を確立しているAndroidやiOS向けのアプリやサービスを拡充させ、Microsoft Azureや各種クラウドサービスにユーザーを囲い込んだ方が利益面でもメリットも大きい。
その意味で、MicrosoftにとってのWindows 10 Mobileは、非常に扱いにくい製品になってしまっていると言える。米Windows Centralの報道によれば、過去1年におけるMicrosoft自身のLumia販売台数が戦略変更以降に急減しており、実質的に同社がハードウェアの開発・販売から手を引き始めているようだ。
そう遠くないタイミングで世界のWindows 10 Mobile市場は、日本のようにサードパーティー製デバイスが占める状況が再現されるのではないだろうか。
となると気になるのはウワサの「Surface Phone」だが、仮にこの製品が市場投入されたとしても、宣伝広告塔的な役割の域を出る製品ではないと考えられる。
現在のMicrosoftの視点は、クラウドを基点にした各モバイルプラットフォームへのサービス提供と、主にエンタープライズ分野でのモバイルニーズ開拓にその主軸が移っている。Windows 10 Mobileはその際の販促ツールの1つであり、「全体としてMicrosoftのサービスやOSが何らかの形で売れればいい」というスタンスだろう。
デバイス提供元のサードパーティーへの移管とともに発生するとみられる現象が、Windows 10 Mobileデバイスのローエンドとハイエンドへの偏りだ。
前出のように、現在のWindows Phone(Windows Mobile)市場はミドルレンジ以下、特にローエンドに偏っている。ハイエンドを残すのは高スペックを求めるユーザーが一定層いるほか、「Windows Hello」などの新機能をアピールする必要性によるもので、実質的にローエンドなデバイスが普及のドライバーとなっている。この傾向は今後さらに強くなり、デバイス数でいえばローエンドの層がさらに厚くなっていくと考える。
もう1つは、これまで存在しなかった「Windows 10 Mobileタブレット」市場の出現だ。2016年春にWindows 10 Mobileのデバイス要件が緩和されて「最大ディスプレイサイズが9型まで許容」されるようになったが、これはIntelがローエンドAtomの市場からの撤退を事実上認めたことで、「今後、安価なWindowsタブレットの市場が消滅に向かうとみられること」へのMicrosoftの対応策だと考えている。
実際、この動きに呼応するかのように、7型のWindows 10 Mobileタブレットが中国のCUBEというメーカーから発表された。ディスプレイの解像度は1280×720ピクセルと控えめだが、スペックから想定するに、SoCにはSnapdragon 200シリーズを搭載し、本体価格を100~200ドルのレンジに収めているとみられる。
Windows 10 MobileではPC向けのアプリのほか、Flashコンテンツが使えないという難点があるが、今後はFlash排除の方向性がWeb業界全体として明確に示されており、日本で顕著な「Flash依存サービスの数々」も対応が求められることになるだろう。
外出先での普段使いには難しくても、自宅の寝室やリビングでもコンテンツの視聴やWebブラウジングなどの用途では重宝するはずだ。7~9型クラスで安価なWindows 10 Mobileタブレットが日本市場に投入される日も、そう遠くないのではないだろうか。
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