31年間の集大成――「dynabook V」に込められた開発者の“魂”(1/2 ページ)
東芝がPC事業を分社して8カ月。分社後初の新モデルである「dynabook V」は、東芝が31年間に渡って培ってきた技術の集大成であるという。
東芝クライアントソリューション(以下「東芝CS」)は12月9日、新型の2in1ノートPC「dynabook V」シリーズの販売を順次開始した。
同社(旧:東芝情報機器)が東芝からPC事業を承継してから初めてのdynabookの新モデルには、一体どのような思いが込められているのだろうか。
31年の技術の集大成
東芝は1985年、世界初のラップトップPC「T1100」を世に送り出した。これが、dynabookの「ルーツ」である。それ以来、「人に寄り添い、人を支える、真の『パーソナル』な存在でありたい」(東芝CSの柏木和彦取締役)という思いをベースに、dynabookは進化を続けてきた。
dynabook Vシリーズは、2013年に発売したクラムシェルタイプのノートPC「dynabook KIRA」シリーズ、2014年に発売した7つのスタイルを持つノートPC「dynabook KIRA L93」、そして2015年に発売したピュアタブレット「dynaPad」の製品コンセプトを、今まで蓄積してきた技術をもって1台で実現したものであるという。まさに、「31年の技術の集大成」(柏木氏)なのだ。
モビリティ
3機種のコンセプトを1台で実現するために、dynabook Vシリーズは「モビリティ(可搬性)」と「ユーザービリティ(使いやすさ)」の大きく2点に力を注いで開発されている。
モビリティ面で一番重要な課題となったのが、「薄く・軽く」するためのマザーボードの小型化だ。dynabook Vシリーズは、より高性能化したCPUや、最大40Gbpsで通信する「Thunderbolt 3」の実装など、マザーボードの小型化には“不利”な要素を取り入れた。それにも関わらず、2013年発売のdynabook KIRAと比較してマザーボードの面積を14%削減できている。
部品の配置、配線の効率性、剛性――さまざまな要素のシミュレーションを重ね、3D-CTを活用しつつ3次元モデリングも実施し、よりシミュレーションの精度を高めた上でバラツキ(個体差)を含む実測確認を行うことで、Thunderbolt 3利用時の高周波信号の品質確保を実現している。
持ち歩いて使うことが多いモバイルノートPCは、「強く」することも重要だ。そのため、設計においては主要な部品に対する応力シミュレーションも実施している。結果、CPU周辺部に物理的に大きな負荷がかかっていることが判明した。そこで、マザーボード裏側のCPU直下の部分に小さなL字板金を配置することで振動・衝撃に対する信頼性を向上した。
持ち歩くからには、ボディーの丈夫さと軽さの両立も重要な課題となる。dynabook Vシリーズでは、100kgf(重量キログラム)の面加圧テストや、76cmの高さからの落下テストにも耐える丈夫さを実現している。また、強いストレス環境下において短期間で経年劣化の検証を行えるHALT(Highly Accelerated Life Test)を実施した上で、経年劣化で問題を起こしやすい部品を事前に改善する対策も行っている。
この前段階でも、シミュレーションが重要な役割を果たしている。部品単位はもちろん、部品を組み合わせて製品としてくみ上げた状態での「まるごと解析シミュレーション」を実施することで、全体で丈夫さを最適化している。
まるごと解析シミュレーションによって改善した部分の1つが、キーボードプレートとキーボードカバーだ。キーボードやパームレスト部分の剛性改善の要望は、ユーザーから多く寄せられるという。そこで応力シミュレーションを実施し、キーボード裏面のネジ止め位置を最適化し、キーボードカバーに補強リブを挿入した。この結果、キーボードやパームレスト周辺部のたわみが大幅に少なくなったという。
外出先では、バッテリーを充電できないことも多い。そのため、バッテリーだけで「長く」使えることが重要だ。また、充電できたとしても短時間で次の場所に移動しなければならないこともある。そこで、dynabook Vシリーズではマザーボードなどの回路設計の段階から電力消費の効率化を図り、JEITA 2.0基準で17時間のバッテリー駆動を実現した。
また、バッテリーの充電時間を確保しづらい場合の対策として、「急速充電」機能を独自実装していることも見逃せない。バッテリー残量が0%の状態から、30分で容量の約40%(駆動時間ベースでは約7時間分)まで充電できるという。
ただし、急速充電の多用は、一般的にバッテリー寿命を短くするという“悪影響”もある。そこで、dynabook Vシリーズでは充電量に合わせて電流量をコントロールすることで、急速充電によるバッテリー寿命への影響を軽減している。
なお、この急速充電は「汎用(はんよう)のUSB Power Delivery(PD)対応電源でも、45W以上の電力を安定して供給できるものなら利用できる」(関係者)。
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