Windows Virtual Desktop、Office 2019、そして…… 変化するMicrosoftの戦略:鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(2/2 ページ)
MicrosoftはAIとクラウドへの注力に伴い、WindowsとOfficeの戦略を柔軟に変えつつある。WindowsとOfficeの新製品・サービスをまとめつつ、同社の狙いを考える。
Microsoft Azureで動くインスタンスの半分以上は「Linux」
こうしたMicrosoftの昨今の戦略を反映した興味深いニュースはまだある。
米ZDNetによれば、今や「Azure上で動作するインスタンスの半分以上がLinux」であるという。AzureにおけるLinuxのインスタンスシェアは、3年前に「全体の4分の1」、2017年に「40%」と上昇し続けており、Ignite 2018でのスコット・ガスリー氏による発表ではついに「半分をわずかに上回る水準」まで達した。
同氏によれば、Linuxのシェアは毎月上昇しているとのこと。毎月Azureの顧客数が上昇していることを鑑みれば、Linuxの利用を目的にAzureを導入する新規ユーザーが増えていると考えていいだろう。
「AzureといえばWindows」のような先入観があったといえばウソではないが、かつてのAzureはMicrosoftの顧客がクラウドに移行するための「パス(Path)」として機能していた。しかし、今日ではその限りではなく、さまざまなニーズを吸収する形で非Microsoftの顧客も取り込んでいるのだろう。
実際、昨今は米Amazon.comへの対抗が理由で「AWS(Amazon Web Services)」ではなく、あえてMicrosoftと組む顧客もいるわけで、純粋に技術的な理由だけでなく、政治的な理由でAzureが避難地として機能している側面もあるのかもしれない。
昨今のMicrosoftには、Windowsを必要とせず、IoTのセキュリティをハードウェア、OS、サービスの3つで守る仕組み「Azure Sphere」のようなセキュリティソリューションもある。「最終的にMicrosoftのサービスが利用されればいい」というのが基本スタンスのようだ。
ロボットにもWindowsを
一方、Microsoftが9月28日(米国時間)に発表した「ROS for Windows」のように、Windowsをフロントエンドとしてロボット制御OS(Robot Operating System:ROS)の分野に参入していこうとする動きもみられる。
同社は米ロボティクス関連団体の「ROS Industrial Consortium」に加盟した他、ROS開発者向けイベント「ROSCon 2018」では、「ROBOTIS Turtlebot 3」のロボットを使ったデモも披露した。
このロボットは、Intelのプロセッサ(Coffee Lakeベース)を搭載したNUC上でWindows 10 IoT Enterpriseを動かし、「Windows ML」を組み合わせて機械学習によるロボットの自律動作を実現している。
こうしたロボットは「Azure IoT Hub」によって制御が可能で、「よりリッチな制御環境や開発環境にはWindowsを活用してほしい」というアピールなのだろう。
関連キーワード
Windows 10 | Windows | Office | Microsoft | Microsoft Azure | ROS | 鈴木淳也の「Windowsフロントライン」
関連記事
Windows 10大型アップデート「October 2018 Update」配信開始 スマホ連携など新機能
1年に2回のWindows 10大型アップデートのうち“秋”のバージョンとなる「October 2018 Update(1809)」の配信が始まった。Internet Explorerは意外にしぶとい Windowsデフォルトブラウザの功罪
Windows 10のデフォルトブラウザといえば「Microsoft Edge」だが、ユーザーのWindows 7からWindows 10への移行が進んでも、Edgeのシェアはそれほど伸びていない。それどころか、IEのシェアが復活しているというデータも一部にみられる。何が起きているのだろうか。Windows 7と10のサポート期限がより複雑化 法人向け7は有償で3年延長も
新Windows、新Office、そしてクラウド環境への移行を加速させたいMicrosoftだが、市場動向や顧客ニーズに合わせたサポートポリシーの変更で例外が多くなり、ユーザーにとってより分かりにくい状況になってきた。個人向け「Office 365」が何台でもインストール可能に 日本のユーザーへの影響は?
Microsoftは個人向け「Office 365」のライセンスを改定。10月2日にサービスを同時利用できるユーザー数やデバイス数の制限を緩和する。日本のOffice 365ラインアップへの適用と、その影響は?Windows 10「RS5」に見え隠れするMicrosoftのモバイル新戦略
2018年10月ごろの一般公開に向けて、Windows 10次期大型アップデート「RS5」の開発は大詰めを迎えつつある。今回はRS5の開発ビルドに垣間見える、Microsoftの新しいモバイル戦略に関するトピックを紹介していく。5G時代のPCはArmプロセッサが当たり前になる? 大胆なロードマップ発表が示すもの
PC市場への攻勢を強めつつあるArmがクライアント向けCPUロードマップを発表。2020年までの間、年率15%のパフォーマンス向上を目指し、今後5年でWindowsノートPCの市場シェアを大きく奪おうとしている。「Office 2019」は10%値上げへ クラウド優遇を進めるMicrosoft
Microsoftが「クラウドファースト」を掲げてから久しいが、従来型のオンプレミス版Officeをはじめ、Windows関連製品のラインアップと価格を見直すことで、企業ユーザーのクラウド誘導を強化する構えだ。「Office 365」でコラボレーションの世界を飲み込むMicrosoft
Microsoftは「Office 365」をさらに強化し、さまざまなコラボレーションツールを取り込んでいく構えだ。年次パートナーイベント「Inspire 2018」の開催直前に発表された3つのアップデートを整理する。MicrosoftがAlphabet(Google)を時価総額で3年ぶりに抜いたことの意味
米国でMicrosoftの時価総額が、Googleの親会社であるAlphabetの時価総額を逆転した。過去1年間の株価をみると、Microsoftは40%もその価値を上昇させており、5月29日の取引終了時点で時価総額がAlphabetを上回ったのだ。その背景を探る。AIをクラウドからエッジへ Microsoft開発者イベント「Build 2018」を読み解く
米Microsoftの開発者会議「Build 2018」では、近年同社が注力する「Intelligent Cloud」と「Intelligent Edge」の最新動向が語られた。MicrosoftがWindows不要のIoTセキュリティ「Azure Sphere」を投入するワケ
注力分野が「Windows」を中心としたクライアントソリューションより、「Azure」を中心としたクラウドサービスに移りつつあるMicrosoft。Windowsを必要としない新たなIoTセキュリティサービスである「Azure Sphere」投入の狙いを探る。「他のセキュリティ対策ソフトはもういらない」とアピールするWindows Defenderの現状
Windows標準のセキュリティ対策機能は“オマケ程度”という認識はもう過去のもの。Windows 10の世代では、Microsoftがセキュリティ対策を大幅に強化しており、最新のセキュリティ動向を考慮したアップデートも続けているのだ。Microsoftの大規模な組織改編は何を意味するのか
2013年以来となる5年ぶりの大規模な組織改編を発表した米Microsoft。それが何を意味するのかを考察する。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.