スピーカーを超えてメガネや指輪まで もっと生活に溶け込んでいくAmazon Alexa:ITはみ出しコラム
米Amazon.comが2019年も大量のハードウェア新製品を発表。スマートスピーカーだけではなく、Alexa対応の無線イヤフォン、メガネ、指輪、オーブンレンジまで登場しました。Alexaはますます人々の生活に溶け込んでいこうとしています。
今年もAmazonがやってくれました。9月25日(現地時間)にシアトルの本社キャンパスで1度に15も新ハードウェアを発表するという、ライター泣かせなイベントを開催したのです。
音声アシスタント「Alexa」対応のスマートスピーカー関連だけでも、「Echo」と「Echo Dot」の新モデルに、ハイエンドの「Echo Studio」、ディスプレイ付きの「Echo Show 8」、コンセントに直接差せる低価格の「Echo Flex」、Echo Flexを拡張するモーションセンサーとナイトライトを発表(これらEchoシリーズは日本でも発売)。
さらにAlexa対応の新ハードウェアでは、色が変わる子ども向けのスマートランプ「Echo Glow」、無線イヤフォン「Echo Buds」、メガネ型の端末「Echo Frames」、指輪型の端末「Echo Loop」、そしてオーブンレンジの「Amazon Smart Oven」も出しました。
Amazonが買収した企業Ringのホームセキュリティ製品として「Indoor Cam」「Stick Up Cam」「Retrofit Alarm Kit」「Ring Fetch」、同じく買収した企業eeroのWi-Fiメッシュルーター「Eero」の新モデルも登場しました。
録音の自動削除や、俳優のサミュエル・L・ジャクソンの声が選べるようになるといったAlexaの新機能も結構発表されました。
昨年も9月に同じようなAmazon Devices & Services Eventを開催し、やっぱり15くらいのハードウェアを発表しました。そのときの記事を振り返ると、「Echo Sub」とか「Echo Link Amp」とか、既に消えてしまった製品もあります。Amazon自身も、もしかしたら幾つかの製品は「にぎやかし」のつもりだったのかも。
この物量作戦の狙いは、Amazon流に「おはようからおやすみまで、暮らしをみつめる」(80年代のライオンのコーポレートメッセージ)のようなメッセージを伝えることだと思います。
Echoシリーズをどんどん安くすることで1部屋に1個Alexa端末が置けるようになってきましたが、さらに2980円で壁のコンセントに直接差すEcho Flexをラインアップに加えることで、トイレや洗面所、廊下にも置きやすくしました。
そして、無線イヤフォンのEcho Buds、メガネ型のEcho Frames、指輪型のEcho Loopという3種類のウェアラブル端末で、Alexaを外に連れ出しやすくしました(これまでもスマートフォンのAlexaアプリが使えましたが)。
ちなみに指輪型端末の名称はEcho「Ring」(指輪)にしたかったのでしょうが、Amazonには買収したホームセキュリティブランドのRingがあるので、混乱を避けて「Loop」(わっか)にしたのでしょう。
RingのAlexa対応ホームセキュリティ製品も複数発表しました。わんこの首に付けてトラッキングする「Fetch」(来年発売の予定)もRingの製品です。
Echo Framesは割り切りました。メガネ型端末ならイマドキは当然ARだろうと思うところ、今の技術では満足のいく形にできないという判断でしょう、Alexa(つまり音声アシスタント)だけのためのメガネにしました(もちろん度付きにもできます)。紹介動画では、「カメラもディスプレイもないので、周囲の世界を自由に見られるよ」とそれをウリにまでしています。
その割り切りが、Googleと大きく違うところ。Googleだって「Googleアシスタント」を「おはようからおやすみまで」にするために、スマスピやらスマディス(プレイ)やら、無線イヤフォンの「Pixel Buds」やらを出しているし、メガネ型といったら黒歴史的かもしれませんが「Google Glass」をなんと2012年に発表しています。
10月15日の「Made by Google」イベントでは、スマホの「Pixel 4」だけでなく、Nestブランドに変えたGoogle Homeや、ホームセキュリティ関連の新製品を幾つかは発表するでしょう。でもメディアは多分、Pixel 4に焦点を当てます。
Amazonは、Fire TVやKindleなどの新製品は別途発表しておいて、このイベントはAlexa関連にフォーカスすることで狙いを印象付けました。
そういえば、AppleやGoogeの製品発表イベントはライブストリーミングしますが、Amazonはせず、録画すら一般公開しません。招待するのはメディアだけです。イベント本番にはジェフ・ベゾスCEOは登壇せず、最初から最後までハードウェアのトップを務めるデビッド(デイブ)・リンプ上級副社長が1人で仕切りました。
ベゾスさんはイベントが終わってから、招待した記者たちをステージの前に集め、(多数の製品をがんがん発表してきたことについて)「みなさんのスタミナに感謝します」と言って笑いを誘いました。ベゾスさんがInstagramで公開したこの様子を見ると、メディアを味方につけるのがうまいなぁと思います。
後はAlexaがGoogleアシスタントより賢くなれば、AmazonがGoogleよりも人々の生活に溶け込めるでしょう。私は家で大抵AlexaとGoogleアシスタントに同じ質問をしてみているんですが、今のところGoogleアシスタントの方が欲しい答えをくれます。
Alexaは「もっとよく勉強します」と言うことが多いのですが、今後は「Alexa、なんでそんなことしたの?」と問いただすと理由を言うようになったり、ユーザーの声にいら立ちが混じるとそれを検知して反省(?)したりするようになるので、Googleアシスタントを抜く可能性はあります。
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