「このままではエクサスケール実現にフーバーダムが必要」──NVIDIAが語る“GPUの必然性”:GTC Asia 2011(3/4 ページ)
NVIDIAがHPCで必ず言及するエクサスケールコンピューティングについて、GTC Asiaの舞台となった北京でも、若い技術者に向けて同社のGPUが必須であると訴える。
消費電力が阻むエクサスケールへの道
近年のスーパーコンピュータは、GPUの存在がパフォーマンスの成長カーブに大きく寄与している。例えば、2ペタFLOPSを実現する「Tsubame 2.0」の場合、そのパフォーマンスの9割以上はGPUの処理能力に因るもので、GPUが処理能力の向上に寄与したといっていい。もちろん、現在TOP 500ランキングトップにある「京」のように、GPU技術を用いないスーパーコンピュータも多数存在するが、CPUのみを利用したスーパーコンピュータでは、さまざまな制限から、性能の成長が止まる可能性が高いとファン氏はいう。
現在、スーパーコンピュータの世界では過去10年間の目標だった「ペタFLOPS」を突破し、「京」は2011年11月に10ペタFLOPSの壁を突破している。「1エクサFLOPS」というエクサスケールまで「あと100倍」のところまでやってきた。だが、ファン氏によれば、こうしたエクサスケール実現には、多くの困難があるという。従来の手法のままでは「パワー」(電力)が壁となって立ちふさがることになると主張する。身近な例でいえば、かつて、インテルは発熱問題でPentiumの高クロック化に断念し、最近では、増え続けるバッテリー消費量がモバイルデバイスの高速化を阻んでいる。NVIDIAのTegra 3や、ARMのbig.LITTLEコンピューティングなどで導入する技術も、こうした消費電力問題を解決するための“トリック”といえる。
CPUに限らず、コンピューティングの世界はすべて消費電力の問題が成長の壁となっているとファン氏はいう。米オークリッジ国立研究所(ORNL)に導入されているクレイの「Jaguar」は、20万基のCPUコアを持ち、7メガワットの消費電力で2ペタFLOPSのトータルパフォーマンスを実現している。もし、エクサスケールに拡張するのであれば、この500倍のシステムが必要というわけだ。
これを分かりやすく例えると、システムの設置スペースだけで北京のオリンピック公園にある「鳥の巣」の面積が必要であり、電力については、米ネバダ州にあるフーバーダムの2ギガワットを上回る発電設備が必要になる。それだけの計算をする設備であれば、鳥の巣程度の施設を郊外に建てれば問題ないだろう。だが、建設当時世界最大級だったフーバーダムと同等の発電設備をこうした施設の横に設置するのは現実的ではない。これだけでも、消費電力がいかに深刻な問題にあることが分かる。
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