質実剛健なSkylakeの新機能をIDF 2015で掘り下げる:本当の進化とはこういうこと(2/2 ページ)
IDF 2015のCEO基調講演でほとんど言及のなかった“Skylake”だが、技術セッションでは、PCを便利にしてくれる注目すべき数多くの改良点を解説した。
強化したGPUとセキュリティ機能
Skylakeでは、どちらかといえばCPU側よりGPU側の機能強化が目立っている。1つは「Gen9」のGPU機能で、「Slice」と呼ぶ処理ユニットの数に応じて「GT2」「GT3」(+eDRAM)、「GT4」(+eDRAM)といった3種類のコンフィグレーションを用意する。このうち「GT4」はSkylakeで新たに追加したもので、3つのSliceを内蔵する。単位Sliceあたり処理ユニットのEU(演算ユニット)は24基搭載するため、GT4全体では72 EUになる。このあたりのCPUとGTnを組み合わせたSKUは、後でSkylake-Y/Skylake-U/Skylake-Hの各ラインアップの正式発表で改めて公開することになるだろう。
GPUの機能としては、ほかに「Quick Sync Video」の刷新とハードウェアでの新規コーデックサポートが挙げられる。Quick Sync Videoは、主に統合したGPUのGPGPU(General Purpose GPU)的な汎用用途での利用を想定し、これまでも動画エンコードやトランスコードに用いる「PG Mode」で活用してきた。Skylake世代ではさらに「FF Mode」を追加して、「遅延のない動画再生」などリアルタイム処理を重視した利用が可能になっている。このほか、4K用途を主眼したHEVCコーデックのハードウェア処理のほか、VP8/Jpegのエンコード処理のハードウェア化など、マルチメディア機能のハードウェア対応によりさらなる低消費電力と高速動作を目指している。
“ARM相当”のセキュリティ機能を実装
セキュリティに関する新機能のうち、「Intel SGX」(Software Guard Extensions)はCPU内にソフトウェアによる保護領域を作成する機能だ。ARMでは「TrustZone」の名称で実装している。メイン領域上で動作するOSやソフトウェアから不可侵の領域を作成することで、ハッキングに強いセキュアなアプリケーションをCPU内で別に動作することができる。TrustZoneの例でいえば、著作権保護(DRM)やカード番号など高いセキュリティを求める情報の保管や処理に活用している。TEE(Trusted Execution Environment)という国際的なセキュリティ規格の実現でも必要としている。SGXもまた同様の仕組みを実現できるので、TEE対応において重要な役割を果たすだろう。
「Intel MPX」(Memory Protection Extensions)は一種のメモリ保護機能だ。データの一時的な保管領域であるスタックと、アプリケーションが動作時に確保するメモリ領域のヒープの両方について、規定を越えたメモリ領域へのアクセスを制限する。一般に、「スタックオーバーフロー」などの脆弱性を突いた攻撃は、こうしたアプリケーション開発者が想定したメモリ領域を越えて異常な量のデータを送りつけて、マシン上で動作するプログラムを乗っ取る方法を用いているが、MPXによりこうした行為は難しくなる。
このように、Skylakeで導入した新機能は「新世代ならでは! 」といったような明確に分かりやすい“派手”なものは見当たらないものの、日々のPC利用で便利になる改良を多くの部分で行っている。また、Skylakeの世代ではUSB 3.1 Type-CやThunderbolt 3など新しいインタフェース規格を導入するタイミングでもあり、PCの利用スタイルは少なからず変化することになるはずだ。
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