一般的なPCユーザーがHDDの購入を検討するとき、最も多い動機はストレージ容量の拡張だろう。写真や動画、音楽など、デジタルコンテンツのデータ容量は肥大化する一方で、いつのまにかHDDがいっぱいになっていたという経験をしたことがある人は少なくないはずだ。
ストレージの交換や増設が難しいユニボディのノートPCを使っている場合は、外付けHDDを検討することになるが、自作のPCやNASキットを使っている人は「アキバで週末特価のHDDを見てくるか……」と考えるかもしれない。
ただ、一口にHDDといってもさまざまな種類がある。上記の例で言うなら、ほとんどの場合はSerial ATA接続の3.5インチドライブを選べば後は予算と容量で決めればいい、と考えがちだがそれは正しくない。
スペックをみれば、キャッシュ容量や回転数、プラッタ構成などが違うように、性能(リード/ライト速度)、消費電力、静音性、そして使用状況に応じた信頼性はモデルによって異なる。例えば、同じ回転数、同じ容量でもプラッタの枚数が違えば、記録密度の違いからパフォーマンスは変わってくるし、そもそもファームウェアのチューニング次第で、もともと同じハードで作られたHDDでも用途は変わる。
このためHDDメーカーは、一般ユーザーにも分かりやすく“適材適所”のモデルを選べるように、○○用HDDといった用途別ラインアップをそろえている。
例えば、ウエスタンデジタルジャパンは、内蔵HDDの機能的な差をイメージカラーで差別化しているメーカーだ。最近ではNAS向けHDDとして市場を席巻し、他社の外付けHDDメーカーでも採用例の多い「WD Red」の名を聞いたことがある人は多いだろう。ここではWD製HDDを例に、用途に応じたHDDの選び方を改めて見ていく。
色で見分ける用途別HDD
ウエスタンデジタルのデスクトップPC向けHDDは、色別にBlue、Green、Blackの3色がある(Greenは9月からBlueに統合されたが、詳細は後述する)。
WD Blueは7200rpmの標準的な3.5インチHDDで、グローバルでは最も出荷台数が多い。Greenは回転数を5400rpmに抑えている半面、静音性や消費電力でメリットがある。Blackはクリエイティブユースやゲームといったよりパフォーマンスを求めるユーザーに向けたモデルだ。このほか、キャッシュとして8GバイトのNANDフラッシュを内蔵し、読み取り速度を上げたハイブリッドドライブ「WD Blue SSHD」もある。性能で有利なSSDと容量単価で有利なHDDのいいとこ取りをした製品と考えればいい。
これ以外では、NASに最適化されたWD Red、さらにRedを上回る信頼性を追求したWD Red Pro、コンシューマー向け製品ではないものの、監視カメラなどのセキュリティシステムと組み合わせて使うことを想定したWD Purpleなどもある。
仮にデスクトップPCのストレージを増やしたいなら、Blue、Green、Blackの3色から選べばいいわけだが、BlueとGreenは同じ容量で比べると価格はほぼ同じだ。ただし、これまでBlueに用意されていた容量は250Gバイトから1Tバイトまでだったのに対し、Greenは500Gバイトから6Tバイトまでと、ラインアップに大きな違いがある。
このため、海外では「同じ価格なら性能がいいものを」という理由でBlueのシェアが高くなる傾向にあるが、PCパーツへの投資額が比較的大きい(つまりお金を持ってる人が多い)日本では、より高容量のモデルを選択できるGreenのほうがシェアが高い。性能面ではBlueに劣るものの、低発熱、低消費電力による安定稼働が期待でき、システムドライブをSSDにして容量が求められるデータドライブのみHDDにする、といった使い分けが普及しているのも一因だろう。
Greenが消えた!? 目印は「Eco」
さて、冒頭で挙げたHDDの増設や新規に自作PCを組む際、費用を抑えたいならWD Blue、性能よりも容量を求めるならWD Green、フォームファクター上の制限などで3.5インチドライブを1台しか積めないが性能も妥協したくないならWD BlackかWD Blue SSHDを選べばよかった。
ただし、前述の通り、9月からGreenはBlueに統合されつつあり、市場在庫がなくなり次第、姿を消すことが決まっている。このため、これまでGreenでうたってきた低消費電力、低発熱といった特徴は、WD Blueの中でも型番末尾に「EZRZ」(500GバイトモデルのみAZRZ)がつくモデルが担うことになる。これまで色で判別してきた人には分かりづらくなってしまった。
旧Greenの型番末尾が「EZRX/AZRX」だったことから、Greenの延長としてBlueのEZRZがある、と連想はしやすいものの、こうした事情を知らない人の中には、突然Greenが店頭から消えてとまどっている方もいるかもしれない。このため、アキバのパーツショップでは、新型Blueのパッケージに「WD Blue 5400 RPM Class」や「WD Blue ECO」と表記して、従来のWD Blueと省電力タイプの新しいモデルを区別しているので是非覚えておきたい。
なお、WD Blueに加わった「5400 RPM Class」のモデルは、旧WD Greenとハードウェア上の違いはない(回転数の表記がIntelliPowerから5400rpmになっているが、IntelliPowerはよく誤解されがちな“可変回転”ではなく、もともと5400rpmを意味している)。「ストレージ容量を増やそうと思ってWD Greenを買いに行ったら店頭になかった」というときは、5400rpmのBlue、もしくは「5400 RPM Class」「ECO」と書かれたBlueを選ぼう。
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