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「Apple TV」はテレビを再発明できるのか――林信行がその魅力に迫るシンプルなリモコン1つでテレビをインタラクティブに(4/4 ページ)

アプリで機能を拡張できるtvOSを搭載し、Siriによる音声操作にも対応した新「Apple TV」。実際に試用する中で見えてきた新しい可能性を林信行が解説する。

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これから始まるプラットフォーム

新Apple TVには、世界の都市を空から鳥瞰(ちょうかん)した非常に美しいスクリーンセーバーが入っている

容量が大きいため、毎月600Mバイトほどになるデータをダウンロードしていいか初期設定で問い合わせられる。オンにして損はない。なお、これ以外に世界中のiPhone 6ユーザーが撮った写真を楽しめるスクリーンセーバーもある

 最初はApple TV用のアプリというと映像サービスのアプリとゲームのアプリしか想像が働かず、既存のゲーム機とどう差別化をしていくのだろうと心配なところもあった。しかし、ここにあげたような何本か優良アプリを見るうちに「こんなアプリが出てきたら楽しいかも」「あんなアプリが出てきたら面白いかも」とどんどんと夢が膨らんできた。

 Apple TV販売開始のタイミングで、どれだけアプリがそろうかは分からないが、試用段階では正直、まだまだアプリの本数は少ないイメージだ(それだけに開発者にとっては大きなビジネスチャンスだ)。

 おまけに、まだまだ一部アプリで操作方法が統一されていないところもある。例えば、OS標準機能のオススメ映画をスクロールする場合や、タスク切り替え画面でのアプリの切り替えでは、画面の右外にある項目を見たい場合にTouchサーフェースを左方向にスワイプするが、筆者お気に入りの2本「Aribnb」と「GILT」では右方向にスワイプする。

 まだ製品としても最初のバージョン(といってもtvOSのバージョンは9.0になっていた)なので、これから大きく改訂されるところも多いだろう。しかし、そうした紆余曲折も含めて、これから始まるテレビの新しい進化に賭けて体験していきたい人には、新Apple TVは大きな可能性に満ちた魅力的な新プラットフォームとしてお勧めしたい(しかも、iPod touchも含めたAppleのすべてのCPU搭載製品の中で、値段ももっともお手ごろだ)。

Wi-Fiの設定やApple IDの設定など、文字入力が多くて面倒な設定は、iOS機器を持っていれば、Bluetooth経由で簡単に行うことができる。このようにちょっとしたところでも、より使いやすく徹底的に工夫をするのがアップルらしい

Siri Remoteの初期設定画面

 この製品が、これから本当に成功して、テレビを変えるのか、それとも夢破れてしまうかは、まだ誰にも分からない。

 ただ、面白いのは、ちょうど本製品の発売と時を同じくして、日本のテレビ業界も大きく変わろうとし、行動を起こし始めたことだ。例えば、民放5社が組んで見逃し番組の無料配信を行う新サービス「TVer(ティーバー)」というアプリがリリースされている。

 既にiOSに対応しているこのサービスが、もうひと手間かけて大画面を満喫できるApple TVにも対応し、いずれ「NHKオンデマンド」も、簡単操作のSiri Remoteから利用できるようになれば、大画面のテレビの面白さを再発見する人は多いのではないだろうか(そこでドラマの最新エピソードを真っ先に見たい人が出てくれば地上波、BSにも人は流れるだろう)。

 最近、家に大きなテレビがあっても、家族みんなバラバラで自分のiPhoneやタブレットで動画を見る家族が増えた、ということを聞くが、Apple TVで大画面のテレビが復権してくれれば、人々は再びリビングルームで、コンテンツを誰かと一緒に楽しむことの素晴らしさを思い出すかもしれない。

 新Apple TVがもたらす新たな操作方法、新たなアプリが、失われつつあった“古き良きテレビ前の団らん”を復活させてくれるのではと、密かに期待している。

他にもたくさんあるスマート・セットトップボックスの中でApple TVが群を抜いて素晴らしいのが、本文では触れなかったアクセシビリティー機能。クローズドキャプションの文字の大きさや背景、サイズのカスタマイズに始まり、画面一部の拡大表示機能まで搭載している
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