Windows 10無料アップグレードで結局シェアはどこまで伸びたのか?:鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(3/3 ページ)
なりふり構わないOS移行策で世間を騒がせたWindows 10。無料アップグレード期間が終わり、OSシェアはどれくらい伸びたのだろうか。
次のハードルは企業ユーザーのWindows 10への移行
問題は、この「3割」という水準をどのように捉えるかだ。NetMarketShareの数字によると、Windows 7のシェアはまだ47%以上ある。少なくとも、Windows OSの世界だけでみても世界のPCの半数はWindows 7ということになる。これは、無料アップグレードが提供されても、Windows 10へと移行しなかったWindows 7ユーザーがそれだけ残っているということなのだろうか。
NetMarketShareのデータがどのように収集されているかは不明だが、恐らくここで残っているWindows 7ユーザーの多くは「企業ユーザー」だ。しかも、ボリュームライセンス契約等で統一的なポリシー管理の影響下にあるWindows PC群だと考える。
Windowsユーザーには3種類の属性があり、「一般」「SMB(中小企業)」「大企業や組織」に大別される。今回Windows 10無料アップグレードの対象となったユーザーは「一般」「SMB(中小企業)」の2つで、「大企業や組織」が利用するEnterprise Editionやポリシー管理下にあるPC群には適用されない。
台数ベースで考えれば、この「大企業や組織」の比率は4〜5割程度で、SMBを含む企業ユーザーは全体からみて6割以上と考える。「朝出社したら自分のPCのWindows 10へのアップグレードが開始されていた」という話があったが、これは例外としても、今回無料アップグレードでMicrosoftがWindows 10へ引き上げようと考えていたのは、企業以外の主に「一般」ユーザーが対象だろう。前述の3割という目標数値予想の根拠は、一般ユーザーの6〜7割程度の移行が行えればいいとした場合の水準だ。
これまでのWindows 10無料アップグレードは主に最新化モデル(Current Branch)を利用する一般ユーザーが対象だったが、今後はよりアップグレードに慎重な企業ユーザーを対象にしたキャンペーンが中心となる
Microsoftが一般ユーザーを対象にしたアップグレードでおおよそ予想通りの成果を得られたとしても、次のハードルは「企業ユーザー」の中でも特にボリュームライセンスを契約するような大規模ユーザーだ。
同社は87%の企業でWindows 10の導入に向けた検証が進んでおり、早ければ2016年7月〜2017年6月の同社会計年度で何社かの移行プロジェクトがスタートすると説明するが、Windows 7の延長サポートが終了する2020年1月まで3年半程度の期間しかなく、なかなか困難な道のりだ。恐らくNetMarketShareのWindows 7とWindows 10のシェアが逆転するまでには、現時点から2年以上の期間が必要だというのが筆者の予想だ。
もう1つ、Microsoftが推進しているのがSMBユーザーへのEnterprise Editionの浸透だ。本来ポリシー管理下にあるPCでは、前述のような「勝手にWindows 10へアップグレードしてしまう」といったことは発生しない。無料アップグレードを巡る一連の騒動で再確認できたのは、購入したPCを適切に管理しないまま企業ネットワークに接続して運用しているケースが非常に多いということだ。専任の管理者がいないというSMB特有の事情もあるが、セキュリティ的にもライセンス管理的にもあまり好ましい状況ではない。
先日紹介した「Windows 10 Enterprise E3」は、こうしたSMBユーザーを対象にした管理機能とOSライセンスをセットにした月額7ドルのサブスクリプションサービスだ。実際、ボリュームライセンス経由で提供されるEnterprise Editionを利用するSMBユーザーは全体の0.5%未満という話もあり、大部分は前述のような「野良運用」のケースとみられる。
Windows 10への移行へと同時に、企業ユーザーの場合は「適切に管理されたPC環境」を推進していくのが、2020年のタイムリミットをにらんだMicrosoftの狙いとなる。
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