教育市場に限らない? 実は「Windows 10 S」が向いている特定ビジネス用途:鈴木淳也の「Windowsフロントライン」
Windowsファミリーに加わった新エディション「Windows 10 S」。基本的には教育機関向けという立ち位置だが、特定のビジネス用途も狙っているようだ。
Windowsファミリーの新エディション「Windows 10 S」は、ビジネス向けの「Windows 10 Pro」をベースとして、教育機関向けに機能を制限したものだ。米Microoftが2017年5月2日(現地時間)に発表し、同社のクラムシェルノートPC「Surface Laptop」にプリインストールした他、サードパーティーから同OS搭載の低価格PCが登場している。
Windows 10は教育機関向けOSという位置付けだが、特定のビジネス用途も狙っているようだ。米ワシントンDCで2017年7月9日〜13日(現地時間)に開催されたMicrosoftの年次パートナー会議「Microsoft Inspire」では、新サービスの「Microsoft 365」を含む数多くの発表があった。その発表内容の1つとして、ビジネス市場におけるWindows 10 SとProの違いが説明されている。
Windows 10 S最大の特徴は、WindowsストアからダウンロードするUWP(Universal Windows Platform)アプリしかインストールできないことだ。この制限と引き替えに、スムーズなOSの展開や高速な起動、そして強化されたセキュリティ機能というメリットを備える。
多くの一般ユーザーにとっては顕著な不満がないだろうが、Windowsストア経由でインストールできないアプリが必須のプロフェッショナルユーザーやビジネスユーザーにとっては厳しい制限になる。
ビジネス用途に関しては「Active Directoryドメインに参加できない」「スクリプトや既存アプリケーションの実行がブロックされる」「ツール系の利用に制限がある」「周辺機器のドライバサポートに制限がある」といった具合に、企業のIT運用ポリシーと合致しない可能性も高く、利用できる環境を選ぶ。
Windows 10 S、Windows 10 Home、Windows 10 Proの機能比較。Windows 10 Sは、Windowsストア経由で提供されるUWPアプリであれば、Desktop Bridgeで変換されたデスクトップアプリであってもインストール可能だ
しかしMicrosoftによれば、Active Directoryの影響下にないモバイルでのPC利用が中心のユーザー、窓口や事務など特定作業が中心のユーザー、さらにはKIOSKやサイネージ用途での利用にWindows 10 Sは適していると指摘する。
通常のWindows 10 Proをポリシー設定で細かく制御するよりも運用が容易で、さらに組み込み向けOSの「Windows 10 IoT」を導入するよりも手軽かつライセンス的にも安価という特徴を生かし、適用範囲を広げていきたいと考えているのかもしれない。
実際にMicrosoftがどれだけこれらの業務分野にWindows 10 Sを拡販していこうと考えているのかは不明だが、筆者の推論ではユーザー企業やサードパーティーのパートナーによっては「Windows 10 Sがいい」と判断するケースも少なからずありそうだ。Microsoftはこうした事例をまずは積み上げて、様子を見ようという段階なのではないだろうか。
関連記事
- 「Windows 10 S」を機能不足と見るか、セキュアと見るか
既存のデスクトップアプリを自由にインストールできない「Windows 10 S」は、その代わりとしてセキュリティに優れるという。どれくらいセキュアなOSなのだろうか。 - 月20ドルでWindows 10とOffice 365+αが使える「Microsoft 365」の狙いとは?
「Microsoft 365」という名前からMicrosoftの本気が伝わってくる新サービスが発表された。同社はクラウドとサブスクリプションモデルでWindowsの世界を今後どう描こうとしているのだろうか。 - Intelが脅威を感じる「ARM版Windows 10」の実力 そして「Always Connected PC」とは?
MicrosoftとQualcommが開発を進める「Windows 10 on Snapdragon」の実力、そしてIntelも関係するWindows 10の新モバイルPCコンセプト「Always Connected PC」とは何か? - 期待のARM版Windows 10に待った? Intelが特許問題をちらつかせる理由
MicrosoftとQualcommが2017年第4四半期に「Snapdragon 835搭載のWindows 10デバイス」を投入すると予告した一方で、Intelは特許侵害の可能性を指摘している。蜜月関係にあったMicrosoftとIntelだが、本件で対立を深めることになるのだろうか。 - 新Surface ProはなぜUSB Type-Cを搭載しないのか 米Microsoftのキーマンに聞く
「Surface Pro」「Surface Studio」「Surface Laptop」の国内発表を一気に行った日本マイクロソフト。米Microsoft本社から来日したSurface担当者にさまざまな疑問をぶつけてみた。 - 「Windows 10 S」「Surface Laptop」に対する期待と不安
日本での発表も期待される「Windows 10 S」と「Surface Laptop」。今回は戦略的な意義と今後の可能性から、これらを考えてみる。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.