Microsoftが「Amazon Go」に対抗しようとする理由:鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(2/2 ページ)
米Microsoftは「Amazon Go」のようなレジ行列なしの店舗技術について開発を進めているという。ここで重要なのは、「小売店舗」という枠組みそのものが、最新技術によって「プラットフォーム」化されつつある現状だ。
プラットフォーム化が加速する小売店舗
Amazon Goに代表される、AI店舗システムの分野における技術はものすごいスピードで進化しており、1〜2年の遅れが致命的となる可能性が高い。その意味で今回のMicrosoftの動きは、ライバルの先行を許さないというクラウド市場での競合と同じ構図といえる。
ここで重要なのは、「小売店舗」という枠組みそのものが、最新技術によって「プラットフォーム」化されつつある現状だ。Amazon Web Services(AWS)がそうであるように、Amazon.comはAmazon Goを「リアル店舗向けのプラットフォーム」として提供しようとしているのではないか。
だとすれば、プラットフォーム事業者として深く潜行し、OEMやパートナーらに必要な技術やサービスを提供することをなりわいとするMicrosoftにとって、Amazon.comの動きを警戒するのは当然の流れだ。そう遠くないタイミングで、パートナーを交えてこの最新技術をアピールする場がやってくると考える。
実は、Microsoftは過去何年にもわたって小売事業者を対象とした技術やソリューションの提供で広く業界にアピールを続けており、最近ではCognitive Servicesを組み合わせたAI的なソリューションが増えつつある様子がうかがえる。
例えば、筆者は毎年1月に米ニューヨークで開催される全米小売協会(National Retail Federation:NRF)の展示会「Retail's Big Show」の取材を続けているが、ここでもMicrosoftは巨大なブースを構えて各種ソリューションを展示している。ここでの展示はMicrosoft製品ではなく、同社の製品やサービスを使ったパートナー各社のソリューションであり、一種のパートナーお披露目会場のようだ。
数年前は顧客管理システムのような仕組みが多かったように記憶しているが、最近ではAI的なものを組み合わせた技術展示が増えている。最新トレンドを反映する傾向が強く、2019年1月の展示ではよりAmazon Goを意識したソリューション展示が増えるのではないだろうか。
また最近では、英国の大手小売業者であるMarks & Spencerとの提携により、AIを駆使した店舗オペレーションの改善や顧客体験の向上について取り組みが進んでいるという、Chain Store Age(CSA)の報道もある。
Walmartを含め、既存の大手小売らはAmazon.comの伸長に神経をとがらせており、各社各様のデジタル戦略を強化しつつある。Microsoftはその点で提携パートナーとしては適任であり、変化しつつある小売業界の中核で陰になり日向になり、その名を現出させていくことだろう。
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