創業者2人が去るInstagram 今後はFacebookの思い通りになる?:ITはみ出しコラム
2012年に米Facebookに買収された米Instagram。その共同創業者の2人が突然辞任を発表しました。「世界が必要とする新しい何かを創造する」んだそうです。
米Facebookが2012年に買収し、今では10億人以上のユーザーを抱える米Instagram。その共同創業者、ケビン・シストロムCEO(34)とエンジニアリングディレクターのマイク・クリーガー氏(32)がInstagramを離れると発表しました。
少しゆっくりしてから、2人で「世界が必要とする新しい何かを創造する」んだそうです。まだ若いので、また面白いものを作ってくれることを期待します。
そもそもInstagramはこの2人が面白がりながら開発し、ユーザーの使い方に触発されて方向転換した魅力的なサービスでした(シストロムさんが2011年に公開したQuoraの投稿に詳しく載っています)。
そんなInstagramも今ではFacebookを支える重要な柱になっています。最近のFacebook本体のいろいろなスキャンダルから少し距離を置けていて、Facebookより若者の支持があるInstagramですが、ここ最近はFacebookに買収されるときに約束した独立性が危うくなっていたとRecodeなど多数の米メディアが報じています。
シストロムさんは退社発表後もInstagramを使っているし、Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOと(緊張関係にあったとの報道も多いのですが)決裂したわけではないようです。退社発表後の最初の投稿では、FacebookのザッカーバーグCEOをはじめ、シェリル・サンドバーグCOO、マイク・シュローファーCTO、クリス・コックスCPOに感謝の言葉を述べています。
ただ、今回の報道からは「Instagramはもう自分たちのものじゃないし、Facebookでは好きなことはできそうにないし、資金もあるんだから、もう一度なんかやろうぜ」という印象を受けます。
振り返ると、買収されてすぐにFacebookとユーザーデータを共有することになったとき、Instagramの利用規約改定でかなりすったもんだがあって、辞めるかな、と思ったのですが、6年もよくFacebookにとどまったものです。
その後、「ストーリー」で米Snapchatのまねっこをしたときにはしれっとまねっこを認めるなど、ザッカーバーグさんとは微妙に違いながらもFacebook的な路線から外れずにきました。
Recodeのカーラ・スウィッシャーさんは“最後のわら”が何かは不明だとしていますが、自由にできないことで少しずつ息苦しくなっていたのでしょう。
4月には、やはりFacebook傘下の米WhatsAppのCEO、ジャン・コウムさんも退社しています。彼の方がもっと、よくもったな、という印象です。絶対に広告ではもうけないと言い続けて、エンドツーエンドの暗号化にこだわる彼は、Facebookの方針と全くかみ合いませんでした。
そのコウムさんより前(2017年11月)に退社したWhatsAppの共同創業者、ブライアン・アクトンさんはシストロムさんが退社を発表した2日後に米Forbesが掲載したインタビューで「私はより大きな利益のために、WhatsAppのユーザーのプライバシーを売ってしまった。私はそのことをずっと背負って生きている」と語りました。
創業者が去った今、WhatsAppもInstagramも、Facebookが思う通りに変わっていくでしょう。それにユーザーがついて行くかどうかも注目していきたいところです。
シストロムさんの最新のInstagram投稿は、サンフランシスコのSalesforce Towerから見た夕日の動画です。
1月に完成したこのタワーはSalesforceのビルですが、非営利団体や新興企業にスペースを貸すそうで、もしかしたら、シストロムさんたち、ここで新しい会社を始めるのかもしれないですね。
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