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「2画面のSurface」はMicrosoftがチャレンジ精神を取り戻した証か本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/2 ページ)

2012年に登場し、Microsoftの戦略とともに製品の位置付けを変えてきた「Surface」シリーズ。2画面の新端末「Neo」と「Duo」は、久々に「新たな市場を開拓する」意志を感じた、SurfaceらしいSurfaceだ。本来あるべきチャレンジスピリットを取り戻したかにみえる。

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「来年末発売の2画面Surface」を発表した意味

 一方で、やはりMicrosoftらしいと感じるのは、NeoとDuoの2つが「来年末の発売」という点だ。いずれも2つの画面を駆使しているが、決して安価ではないだろうこの製品に投資する際の費用対効果を、そのコンセプトやデザインの美しさに見合うものにするには、その特徴を生かしたアプリケーションが生まれてくる環境を用意せねばならない。

 ハードウェアを開発するよりも、むしろソフトウェア開発環境の整備と「開発者を巻き込んだ渦を作っていく」ことの方が難しい。

 Microsoftはちょうど10年前にコンセプトがリークされていた(しかし発売されなかった)2画面端末「Courier」に取り組んでいたことがあるが、画面構成とユーザーインタフェースは非常に深い関係にある。

 単に2画面になる、広くなる、だけではなく、アプリケーションの設計そのものが変わる。ポータブルゲームユーザーなら、任天堂の「ニンテンドーDS」が、いかにゲームデザインに影響を与えるものだったかを考えれば、想像できるのではないだろうか。

 発表会を見る限り、Microsoftはこの課題を、「PC寄りのNeo」と「スマートフォン寄りのDuo」の両方に共通する開発フレームワークで乗り越えようとしている。

 この2台はOSが異なるたため、当然ながら使えるAPIが異なり、動作するバイナリも異なるが、「ユーザーインタフェース設計」が共通化できるよう、双子のような構成としている。

 このハードウェアに加え、OSであるWindowsを超えてマルチプラットフォームで連携して動作をさせる「Microsoft Graph」を組み合わせれば、WindowsとAndoridという異なるプラットフォーム間でも、端末を持ちかえるだけで作業を一貫して行えるようになる。

Surface Neo/Duo
Surface Duoの公式動画では、Surface Neoをテーブルに置いた状態で、バッグからSurface Duoを取り出し、通話したり、手に持って操作したりする様子が紹介されている

 とはいえ、異なるプラットフォームのアプリケーションに共通のユーザーインタフェースを持たせるのは至難の技だ。

 果たして来年末の発売までに、どこまでMicrosoftの挑戦に「面白い」と乗ってきてくれる開発者、パートナー企業が出てくるだろうか。今後、ハードウェアだけではなく、開発者向けツールなども披露されていくことになるだろう。

 「まずは、すごいやつを一発見せておいて、まわりを巻き込んでやろう」

 すっかり成熟した企業になっていたMicrosoftだが、かつてのやんちゃさを取り戻そうとしているのだろうか。Microsoftはハードウェアが本業ではない。しかし、だからこそ取り組めることもある。そして、もちろん資金力もある。

 Surfaceシリーズは、本来のあるべきチャレンジスピリットを取り戻したようだ。

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