「メタバース」は新しい価値観を根付かせるか? 2023年(とその先)を“夢想”してみよう:本田雅一のクロスオーバーデジタル(4/5 ページ)
最近「メタバース」という言葉をよく聞くが、実は見方次第では「三度目の正直」的なブームともいえる。技術の進歩と社会の変化もある中で、この三度目の正直はようやく花開くのだろうか……? メタバースを切り口に、2023年とその先のテクノロジーについて“夢想”してみようと思う。
「カスタムSoC」が増える時代のコンピュータの在り方
昨今のSoCの改良や進化へのモチベーションは、「AI時代を迎えたから」というよりも、その基盤となる「機械学習で鍛えたデータ」を活用した処理、あるいは「推論エンジン」を積極的に活用するアプリの台頭、あるいはリソースの限られるモバイル端末の処理能力向上へのニーズによって支えられている。今後も、当面はこのトレンドを受けた改良や進化が続くだろう。
一方で、メタバースの普及を受けたSoCの進化も進んでいくと考えられる。それはVRゴーグル“以外の”周辺領域にも影響を与える可能性がある。
例えばMetaは、Questシリーズに内蔵しているカメラやセンサーを通じて、「手振り/身振り」「視線」「表情」など、身体から発せられるあらゆる要素を可能な限り捉えて、よりリアルな「アバター」を作ろうと取り組んでいる(参考記事)。
アバターの動きや表情は、もちろんゲーム上のコミュニケーションにも重要だが、エンターテイメントはもちろんビジネスでもコミュニケーションの密度を高める上で重要な要素となる。
精緻なアバターを実現するには、多くのイメージセンサーから集まる複数のビデオストリームなどを集約して、使用者の表情やジェスチャーを立体的な変化として捉えたり、センサー情報を集約して身体のアクションへと復元したりしやすくなるように並列的なデータ処理を行うことにたけたSoCが求められる。
スマホ向けSoCで大きなシェアを持つQualcommは、そんなXR(VR/AR/MR)デバイスに特化したSoCの開発を継続している。その最新バージョンでは、XR用途に汎用(はんよう)的に使えるSoCとは別に、AR(拡張現実)デバイスに特化したSoCを用意したことが話題となった。
Qualcommは2022年10月に、ARデバイスに特化した「Snapdragon AR2 Gen 1」を発表した。従来の「Snapdragon XR1/XR2シリーズ」とは異なり、Snapdragon AR2 Gen 1は他のコンピュートデバイス(PCやスマホ)と組み合わせて使うことを前提として機能を絞り込んでいる
MetaのQuest 2やPicoの「PICO4」は、現在でこそQualcomm製のSoCを利用しているが、そのニーズが定まってくるとデバイスメーカーがSoCのカスタマイズに乗り出す可能性もある。もちろん、それは今すぐ(2023年から)という時間軸ではないだろうが、新しいニーズが生まれ、デバイスメーカーに投資が集まり始めればいずれはそうなる。
CPU、GPU、NPUといった主要なプロセッサは共通化しつつ、その用途(目的)単位で用途に特化した処理を行う独自プロセッサを設計したり、場合によっては必要な回路ブロックを厳選したり強化したりした「カスタムSoC」を開発したり、異なるチップレットを集約して新たなSoCにするといったケースは増えてくると筆者は考えている。
「数年」という時間軸での動きは、今年(2023年)に始まるものが多いだろう。
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