「メタバース」は新しい価値観を根付かせるか? 2023年(とその先)を“夢想”してみよう:本田雅一のクロスオーバーデジタル(5/5 ページ)
最近「メタバース」という言葉をよく聞くが、実は見方次第では「三度目の正直」的なブームともいえる。技術の進歩と社会の変化もある中で、この三度目の正直はようやく花開くのだろうか……? メタバースを切り口に、2023年とその先のテクノロジーについて“夢想”してみようと思う。
反転攻勢の兆しを見せるIntel
Intelが最先端の半導体製造プロセスの開発競争から脱落しそうな勢いだったのも今は昔。パット・ゲルシンガーCEOの下、同社は積極的に最先端の開発競争に舞い戻りつつある。
計画通りに進むと、Intelは2024年にライバル(Samusung ElecrtonicsやTSMC)に追いつき、翌2025年には追い抜くことになっている。「計画通りに進むのか?」と疑問に思う人もいるかもしれないが、さまざまな話を総合すると現時点における進捗(しんちょく)はおおむね順調であるようだ。
まず2022年末、Intelは同社としては初のEUV露光を用いた7nmプロセス「Intel 4」の量産に必要な露光装置の納入が完了したと発表した。「7nmプロセスなのに『4』なのはどうして?」という点だが、これは「プロセスこそ2nmほど大きいが、TSMCにおける5nmプロセスよりも進んだ技術が使われている」という意思表示なのだろう。
- →First EUV Light Marks Intel 4 Milestone in Ireland
- →First EUV light marks key milestone for production of Intel 4 in Europe
一方で同じ時期に、TSMCは3nmプロセス「N3」での量産が始まったと発表している。AppleやAMDなど、同社にSoC/CPUの生産を委託している企業では、2023年から順次3nmプロセスの製品を投入し始めると思われる。
もっとも、Intel 4にしてもN3にしても、「量産に向けた重要な準備が整った」「量産が始まった」と言ってはいても、量産(の準備)がどこまで順調なのかは分からない。本当に順調なのかどうかは、今後の製品の登場具合で分かってくることになるだろう。
Intel 4より先の生産プロセスの計画は以下の通りとなっている。
- Intel 3(改良版7nmプロセス):2023年後半に生産開始予定
- Intel 20A(5nmプロセス):2024年に生産開始予定
- Intel 18A(改良版5nmプロセス):2025年初頭に生産開始予定
Intel 20Aからプロセスの命名方法がさらに変わるのは、半導体の設計構造が大きく変わることに加えて、プロセスルールが「n(ナノ)」レベルから「A(オングストローム)」に移り変わることを意識しているからである(1A=0.1nm)。
名前からも分かる通り、IntelとしてはIntel 3は他社(主にTSMC)の3nmプロセス相当、Intel 20Aは20A(2nm)プロセス相当、そしてIntel 18Aは18A(1.8nm)プロセス相当の技術をつぎ込んでおり、これらをもって他社(特にTSMC)に追いつき追い越すと考えている……のだが、当然ながら他社もプロセスの微細化に向けた研究/開発を進めているので、Intelのもくろみ通りに事が運ぶかは不透明である。
しかし、先述の通りIntelがプロセスルールの競争で“トップを取る”という気概を取り戻したことは、非常に大きな意義がある。加えて、同社はプロセスの単純な微細化だけでなく、SoCを複数のチップレット(Intel用語では「タイル」)を積層配線するパッケージに切り替えていく方針も示している。タイルは自社生産にこだわらず、TSMCを含む他社生産のものも柔軟に組み合わせる(※1)。
(※1)逆に、Intelは他社が設計した半導体の生産受託(つまりファウンドリー)事業も立ち上げる
ライバルを見渡すと、Appleは「M1チップ」をスケールアップして「M1 Proチップ」を作った。そしてM1 ProチップをベースにGPUなどを強化して、さらに大きな「M1 Maxチップ」を誕生させた。極め付きには、超巨大なM1 Maxチップを2枚結合して「M1 Ultraチップ」を生み出した。
しかし、Intelの積層配線の考え方を適用すれば、M1チップファミリーのように「機能を強化すると(≒チップレットを増やすと)、設置面積(フットプリント)もどんどん増えていく」という現象をある程度抑制できる。
Intelアーキテクチャを維持しつつ「Arm的なCPU」も登場?
Intelが推進しようとしているタイルの構想は、見方を変えると「ターゲットデバイスに合わせて搭載するタイルを変える」という柔軟性にもつながる。つまりカスタマイズSoCの開発がしやすくなるというメリットも持ち合わせている。
AppleのM1チップファミリーのような“力技”の進化をするには、それこそAppleのような企業規模(と納入規模)がないと難しい。しかし、既にあるタイルを組み合わせてカスタマイズするのであれば、一定の納入数は求められるかもしれないが、カスタマイズSoCを作る上でのハードルは低くなる。
プロセスの微細化が進めば、スケーラビリティーの観点から超低消費電力であることを重視したIntel製CPUコアが登場する可能性もある。Intel自身がパッケージ化して販売するCPU(SoC)のバリエーションは大きく変化しないかもしれないが、IntelのCPUをベースに新しいジャンルを開拓するSoCが続々出てくる未来も描けそうだ。
関連記事
- 巻き返しの準備を進める「Intel」 約束を果たせなかった「Apple」――プロセッサで振り返る2022年
残りわずかとなった2022年。PCにとって一番重要なパーツである「CPU(SoC)」に焦点を当てて、この年を振り返ってみようと思う。 - AI処理パフォーマンスを大きく改善 4nmプロセスのモバイルAPU「Ryzen 7040シリーズ」登場 搭載製品は3月以降に登場
AMDの最新CPUアーキテクチャ「Zen 4」が、いよいよモバイル向けに登場する。メインストリームとなるRyzen 7040シリーズでは、CPUコアが4nmプロセスとなり省電力性能が高まった他、最新の「RDNA 3アーキテクチャ」のGPUや独立したAIアクセラレーターも統合していることも特徴だ。 - IntelがPC向けCPU/GPUのロードマップを更新 「Raptor Lake」は2022年後半に
Intelが投資家向けのイベントでCPU/GPUの最新ロードマップを公表した。第12世代Coreプロセッサの後継となる「Raptor Lake(ラプターレイク)」は2022年後半に登場するという。 - メタバースの学校とは? Metaが次世代XRクリエイター育成プログラムを日本でも展開 角川ドワンゴ学園と連携
Meta(Facebook Japan)が、日本でもVR/AR技術の育成プログラム「Immersive Learning Academy」を展開することになった。日本での展開に当たっては角川ドワンゴ学園の協力を得ることになっており、同学園のN高等学校/S高等学校の生徒とのパイロットワークショップも実施された。 - 「強いIntel」復活なるか 新CEOの2兆円投資がPCユーザーにもたらすもの
Intelのパット・ゲルシンガー新CEOが発表した新しい戦略は「強いIntel」の復活を予感させるかのような内容だった。2兆円を投じた新工場建設をはじめ、新しいIntelの戦略はPCユーザーに何をもたらすのだろうか。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.