「GPD G1」はドッキングステーションとしても使える外付けGPUボックスだ! Thunderbolt 4(USB4)対応モバイルPCでゲームや写真/動画編集は快適になる?(1/4 ページ)
中国GPDが販売している「GPD G1」は、Radeon RX 7600M XTを内蔵するコンパクトな「GPUボックス」だ。モバイルノートPCにつなぐと、グラフィックスの性能や写真/動画の編集速度が上がるらしいのだが、果たしてどのくらいの効果があるものか、試してみよう。【訂正】
最近のモバイルノートPCは恵まれている。昔と比べるとCPUや内蔵GPUの性能も良くなり、簡単な写真/動画の編集はもちろん、高いフレームレートや画質を求めなければゲームもそこそこ楽しめるようになるなど、隔世の感もある。
しかし、ふとした機会にハイエンドデスクトップPCのレビューをすると、やはり今でもデスクトップPCの方がパフォーマンス面で有利だということを痛感する。とりわけ、GPUのパワーについては、外部GPUにはどうしてもかなわない。
写真/動画の編集やゲームをもっと快適にしたい――そう考えていたところ、中国GPDのUSB4/OCuLink接続対応のコンパクトな外付けGPUボックス「GPD G1」が国内でも発売された。天空(販売代理店の1社)の直販サイトにおける税込み販売価格は、標準キットで10万8800円、OCuLinkケーブルセットで11万7500円となっている。
今回、天空からG1のレビューキットを借用できたので、筆者のUSB4対応モバイルノートPCがどれほど“強く”なるのか試していきたい。
【訂正:1月21日0時25分】初出時、Radeon RX 7600M XTのスペック表記に一部誤記がありました。おわびして訂正いたします。
おことわり
この記事は、GPD G1が全てのUSB4/Thunderbolt 3/Thunderbolt 4対応PCで動作することを保証するものではありません。
そもそも「GPD G1」ってどんなデバイス?
先述の通り、GPD G1はUSB4/OCuLink接続対応のコンパクトな外付けGPUボックスだ。
外付けGPUボックスというと、PCI Express接続のグラフィックスカードを別途用意して差し込んで使うタイプが多い(参考記事)。それに対して、本機はGPUをオンボード実装しているため、GPU(グラフィックスカード)の換装に対応しない代わりに、コンパクトかつ軽量な設計となっている。具体的なサイズは約225(幅)×111(奥行き)×30(厚さ)mmで、重量は約920gだ。
モバイルノートPCの重量が約1kgだとすると、ケーブル込みでも2kg程度となる。本機に持ち運び用のポシェット類は付属しないが、いい感じの袋を用意すれば一緒に持ち運べそうだ。
電源はGaN(窒化ガリウム)を封入したモジュールが内蔵されている。USB4ポートはUSB PD(Power Delivery)規格の電源出力も可能で、接続先のノートPCに最大60Wの電力を供給できる。消費電力は、USB PD出力を含めて最大240Wとなる。
PCとの接続はUSB4またはOCuLinkで行う。
USB4は「Thunderbolt 3」ベースの接続規格で、Version 1.0(当初規格)では最大40Gbps(Thunderbolt 3と同等)、Version 2.0では最大80GB(同期通信時)に対応する。
G1のUSB4ポートはVersion 1.0に準拠しており、理論上は「Thunderbolt 3」または「Thunderbolt 4」に準拠するUSB Type-C端子を備えているPCにも接続可能だ。
OCuLink(SFF-8621)は、PCI-SIG(PCI/PCI Express規格の管理団体)が策定した、外付け/内蔵兼用のPCI Express“端子”だ。サーバ/ワークステーションにおいて周辺機器を簡単に増設できるようにすべく生まれた規格だが、最近はグラフィックスカードの“外付けキット”などにも使われている。
GPD G1の接続を想定して、GPD製モバイルPCの一部モデルにはOCuLink端子を備えている。OCuLinkで接続できるPCの場合、USB4接続よりもスループット(実効通信速度)が良好で、パフォーマンスを発揮しやすいという。ただし、OCuLinkで接続する場合は以下の通り制約があるので注意しよう。
- 映像出力以外のポート類を利用できない(詳細は後述)
- ホットプラグ(活線挿抜)ができない
- PCへの電源供給ができない
GPD G1の正面にはOCuLink端子とUSB4端子が備わる。外付けGPUとして使う分にはどちらで接続しても構わないが、パフォーマンスを重視する場合はOCuLink端子を、利便性を重視する場合はUSB4端子を使って接続することをお勧めする
本機の背面にはUSB 3.2 Gen 2 Standard-A端子、SDメモリーカードスロット(SD 4.0/UHS-II対応)、DisplayPort 1.4出力端子×2とHDMI出力端子を備える。これらのうち、映像出力端子以外はPCとUSB4端子で接続した場合のみ有効となる。
先述の通り、本機には電源が内蔵されている。電源コードはアース(接地)線付きのいわゆる「ミッキー型」だ。最大240Wの電流が通ることもあって、コードは若干太めとなっている。本体自体は比較的持ち運びやすいのだが、電源コードの持ち運びは少し苦労するかもしれない。
背面には電源ポート、USB 3.2 Gen 2 Standard-A端子×3、SDメモリーカードスロット、DisplayPort 1.4出力端子×2とHDMI出力端子を備える。電源ポートはいわゆるミッキー型だ
レビューキットにはThunderbolt 3ケーブルとOCuLinkケーブルが付属していた。なお、製品版(本体のみ)にはUSB4ケーブル(Thunderbolt 3ケーブルと互換性あり)のみが付属する
本機に搭載されているGPUは、AMDの「Radeon RX 7600M XT」だ。最新のRDNA 3アーキテクチャを採用するモバイル向けGPUとしては「AMD Radeon RX 7900M」に次ぐスペックを備えている。2023年10月に発売されたばかりの比較的新しい製品で、主なスペックは以下の通りだ。
- 演算ユニット(CU):32基
- ストリーミングプロセッサ(SP):2048基
- 動作クロック:2300MHz(ゲーム)/2615MHz(最大)
- Infinity Cache(L3キャッシュ):32MB
- グラフィックスメモリ:8GB(GDDR6規格/128bitインタフェース)
- 動画エンコーダー:搭載(H.264/H.265/AV1対応)
ゲームタイトルやアプリにもよるが、GPDのテストによると「GeForce RTX 4060 Laptop GPU」相当か、それを上回るパフォーマンスを発揮できるという。フルHD(1920×1080ピクセル)のゲーミング、あるいは写真/動画編集に使うのであれば十分なパフォーマンスを備えている。
次のページでは、GPD G1を実際にモバイルノートPCにつないでみる。
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