「M4チップ」と「第10世代iPad」こそがAppleスペシャルイベントの真のスターかもしれない(2/3 ページ)
Appleのスペシャルイベントで華々しく登場した新しいiPad Pro/iPad Airシリーズだが、注目ポイントは他にあると林信行氏は語る。その心は?
M4チップは夢が広がる最も注目すべきAIプロセッサ
筆者が今回の発表で、もう1つ注目したのが新型iPad Proに搭載されたM4チップだ。
まだMacにも採用されていない新世代プロセッサが、先にiPadに搭載される日が来ることを誰が想像していただろう。Apple EventでのiPad ProにM4チップが載るという発表は大きな衝撃をもたらした。
Appleの公式の性能表は、必ず実機でのテストを元にしており、M3搭載のiPadがないため、M2との比較になってしまうのだが、レンダリング性能で最大4倍、CPU性能で同1.5倍とされている。こうした性能向上に加え、映像プロフェッショナルがモニター代わりに使える高品質のUltra Retina XDRディスプレイを支えているタンデムOLEDという技術も、M4プロセッサによって可能になった技術だ。
だが、筆者が注目したいのは、こういった一般的な性能ではなく、機械学習などのAI処理を担う「Neural Engine」の性能だ。
今、ソフトウェアの構造が大きく変化しつつある。これまでのほとんどのアプリは、人間のプログラマーが、どんな動作をするかを考えてプログラミングしたものを実行していたが、これからの時代はアプリの中にAI処理を組み込んで、そのAIに生成させたり、判断させたりして実行するアプリが増えてくる。
既にPhotoshopに代表されるアドビのツールなども、こういったAI処理を実装して、先進的な写真加工などを実現している。他にも背景の切り抜きや高解像度化、画像や音のノイズ除去、リアルタイムで楽譜を自動作成、雰囲気を保ったまま曲の再生時間を変える処理や画像/映像/3Dモデル/文章の生成など、今後はあらゆる作業にAI処理が入ってくる。
Apple自身も、今後はこうしたAI処理の開発に力を入れると宣言をしており、6月に開催されるWWDC(世界開発者会議)では、AI処理を組み込んだ新OSが発表になると期待されている。
そんな時代に突如現れたM4チップは、実はApple最強の「AIプロセッサ」だ。毎秒どれだけの処理をするかを示すTOPSという性能指標があるが、M4は毎秒38兆回のAI処理を行う38TOPSを達成している。参考までにM3は18TOPS、M2は15.8TOPSとされている。
今後、ソフトウェアのAI化が進むほどM4チップと、それ以前では大きな差が生まれてくるはずだ。
Appleというと、これまでどうしてもAI関連の開発で出遅れている、という印象を持っている人が多い。
実は2024年、AIに注力すると宣言してからは「MGIE」 など、いくつか研究者の間では評価が高いAI技術をオープンソースで公開しているが、やはりAI関連の開発といえば、「ChatGPT」のOpenAIやGoogle、DeepMindを含むAlphabet、アドビ、Metaといった会社の方が先行しているイメージを持つ人が多いだろうし、実際にそうだ。
しかし、それはあくまでもソフトウェアの話である。実はAI用のハードは、Appleも早くから先行投資をしていたということはあまり知られていない。
「MGIE」(MLLM-Guided Image Editing)は、AppleがGitHubで公開している画像をゼロから生成するのではなく、既にある画像に言葉を使ってイメージ通りに改変加工していく生成AI技術だ。Appleは他に、「MM1」と呼ばれるマルチモーダル大規模言語モデルの論文も発表している
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