フルカーボンで熱・衝撃に強い――米軍も認めた実績豊かなポータブル衛星通信システム
地上の通信網が途絶えたエリアで威力を発揮する衛星通信システム。世界中で実績を積んだ機器を組み合わせ、極限の環境下でも安定した回線を提供するのが、NTTコミュニケーションズの「Com-SAT」(機動型衛星通信システム)だ。
災害時に通信が遮断された地域で特設公衆電話やインターネット回線を提供できるNTTのポータブル衛星通信システム。3月12日に行われたNTT東日本、NTTドコモ、陸上自衛隊の共同訓練でも、大型ヘリコプターによる輸送と避難所での設置訓練が公開されるなど、NTTの災害対策機器のなかでも主役といえる存在だ。

NTTコミュニケーションズの機動型衛星通信システム「Com-SAT」。地上の通信網が遮断された場所でも、衛星回線を使ったIP網により音声通話やインターネット、リアルタイムの映像配信システムを提供できる

アンテナと衛星通信モデムの間にある増幅装置(SSPA)(写真=左)、衛星通信モデム、ルーター、VoIPサーバなどを納めた可搬式のラック。衝撃を吸収するよう、ラックをゴム製ショックアブソーバーで支えている。MIL規格をクリアし、寒冷地や砂漠といった極限下での酷使に耐えるというポータブル式の衛星通信システムは地球規模で運用できるため、海外でも同様の製品が活躍している。そうした実績豊富な機材を組み合わせ、より過酷な環境でも衛星通信によるITインフラを提供しようというのがNTTコミュニケーションズの「Com-SAT」(機動型衛星通信システム)。分割可能なパラボラ型の衛星通信アンテナと、衛星通信用モデム、ルータ、VoIPゲートウェイ、映像デコーダーなどを納めた可搬型ラックから構成されており、2人いれば1時間程度で通信局を開設できるという。
衛星通信アンテナはいくつかのラインアップが用意されているが、先日の共同訓練で展示されたのは英GIGASAT製のもの。パラボラ部は分割式で、パーツを収納するケースはアンテナのベース部になる。ボディは軽量かつ耐久性にすぐれるカーボン樹脂でできており、各パーツは片手でも持てる重さ。金属製のものと違って砂漠や寒冷地でも温度変化がなく、分解と収納を繰り返しても精度や剛性が落ちないのがメリットだという。サイズは、C/X/Ku/Kaのマルチバンドに対応し最大通信速度50Mbpsを誇る口径2.4メートルのものと、Kuバンドを使って8Mbpsの通信が可能な1.2メートルの2種類。そのほかにもスウェーデンSDE-DISH製のポータブルサイズアンテナやカナダNorsat製のアンテナも紹介されていた。
また、衛星モデムやVoIPサーバを搭載した可搬型ラックも酷使に耐える仕様となっているのも目を引いた。コンテナ状態から前後のドアを外せばすぐにラックが現われるため、組み立て作業がいらずケーブルを配線するだけで運用できる。ラックと外側ケースの間にはゴム製のショックアブソーバーがあり、車両やヘリコプターで輸送する際に少々粗く扱っても衝撃を吸収できる。その耐衝撃性はMIL規格(米軍が装備を調達する際に定めている規格・仕様)もクリアしているという。
これらを使った衛星通信は1991年の湾岸戦争のころから使われており、イラク戦争後のクウェートでもテレビ局や官公庁の通信手段として利用されている。気温50度を超える炎天下の砂漠で、3カ月以上も連続運用した実績もあるという。
NTTコミュニケーションズではシステムの販売だけでなく、設備やオペレーターのレンタル、導入前の試用などにも対応。国内でも、2008年の洞爺湖サミットで運用された実績がある。個人はもちろん、一般企業でもすぐに導入できるものではないが、海外の離島や山岳地帯、危険地帯などに事業所を持つ企業や、これから進出を考える企業にとっては、いざというときのダイレクトな通信回線として強い味方になるだろう。
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