中小企業向けクラウドファイルサーバを、低コストで導入可能に――フリービットの「ServersMan@CAS」
iPhoneやWindows Mobileをサーバ化するツールとして知られるServersManの新製品「ServersMan@CAS」。企業データの社外持ち出しが厳しく制限される中で注目を集めるクラウドファイルサーバを、低コストで導入できる。
多くの人が普段利用しているインターネットのサービスや企業内のイントラネットなどでは、ネットワークの先にサーバやデータセンターと呼ばれるシステムが構築されている。利用者(閲覧者)はサーバについての知識はとりわけ必要ないが、サーバを運用する側には専門的な知識と対応力が必要となってくる。このサーバの運用を専門知識なしに行えるようにしようというのが、フリービットのServersManシリーズだ。
これまでiPhone版、Windows Mobile版がリリースされたServersManシリーズに新たに追加されたのが、ServersMan@CAS。クラウドファイルサーバを低コストで導入可能にするサービスで、システム投資に多額のコストをかけられない中小企業向けに開発したという。企業で情報の持ち出しが厳しく制限される中、出先から企業データにセキュアにアクセス可能にするソリューションが注目を集めており、ServersMan@CASはその1つといえるだろう。
ServersManシリーズとServersMan@CASの機能について、フリービット広報グループの安部卓司氏に聞いた。
個人レベルでサーバの運用を可能に
ネットワーク上でのデータの送受信はサーバを介して行う。例えばインターネット上のサイトは、テキストや画像・動画などのデータをサーバにアップロードし、閲覧する際にはブラウザを利用してサーバからデータをダウンロードしている。携帯電話のメールサービスも原則、メールサーバを介して送受信が行われている。
個人のブログやインターネットショップ、企業のイントラネットに至るまで、この仕組みがおおむね一般的となっている。インターネット上のブログやSNSなどをはじめとするサービスは多くの場合、サーバ利用込みでサービスが提供されているため、利用者はサーバというものをあまり意識することはない。
なお、サーバとはサーバコンピュータとサーバソフトウェアのことを指し、サーバコンピュータにサーバソフトウェアを組み込むことで、クライアント側(閲覧者側)の要求への対応を実行可能となる。そのため自前で用意したサーバを運用するには、サーバを構築するスキルやトラブルが発生した際に対処するスキルなどが必要となり、企業内であれば専門のスタッフや部署が対応することが多い。
ServersManはこの仕組みを、個人でも簡単に利用できるようにするソフトウェアとして開発された。サーバに関する専門的な知識を持たない人でもiPhoneやWindows Mobile搭載のスマートフォンなどを利用して携帯端末をサーバ化(携帯端末をサーバコンピュータと見立てて、端末内でサーバを構築)し、個人で運用することが可能となる。
スマートフォンをサーバ化するためには、各OSやプラットフォームに対応させる必要があるため、フリービットではiPhone版、Windows Mobile版を提供しており、Android版も12月11日にリリースした。対応デバイスは携帯端末だけにとどまらず、Windows版やMac OS版のほか、家電製品に対応するプラットフォームの開発や展開も予定している。
フリービットでは、企業内のサーバやインターネット上のサービスにおけるサーバを個々の携帯端末やPCなどに置き換えることで、データ領域を拡大でき、コスト削減にもつながるメリットがあると説明する。
ServersManシリーズの新製品「ServersMan@CAS」による新たな展開
こうしたスマートフォンのサーバ化で培った技術を生かして新たに開発したのが、大容量記憶装置にServersManを組み込んだServersMan@CASだ。CASとは「Cloud Attached Server」の頭文字を取ったもので、ネットワーク経由のセキュアなダイレクトアクセスに加え、Webサーバとしての機能も備えるネットワーク接続型大容量記憶装置を指す。一般的にファイルサーバというとNAS「Network Attached Storage」が思い浮かぶが、簡単にいえば「NASにServersManを組み込んだもの」(安部氏)だという。特徴としては、(1)LANとインターネット双方からのアクセスが可能(2)Webサーバの機能を実装(3)管理画面上で簡単にアクセス制限の設定が可能(4)IPv6標準対応 などが挙げられる。この製品は「法人市場にも積極的にアプローチしていくための製品」(安部氏)という位置付けで開発されたという。
法人向けモデルは、データ保存容量が1Tバイトからで、USB経由で外部ストレージにバックアップできるほか、3G回線を利用した冗長化をサポートしている。このほか法人向けサービスとして、フリービットの子会社であるDTIのサポートも提供するという。
ServersMan@CASのターゲットは、情報価値の高い商材を扱っているが中小規模のシステム投資がなかなか行えない企業としており、「例として“中小規模の企業でのファイル共有化と安全なファイル管理”や“営業部で提案書、顧客データをCASに保存して部署内での情報共有やリモートアクセスを提供”“社員がファイルを持ち歩かず、出先でCAS内の資料を見せる”などの利用イメージを想定している」と安部氏。価格は、初期費用が1万9800円、月額費用が6300円からとなり、フリービットが抱える法人ユーザーを対象とする直販と、パートナー企業による販売の2つのチャンネルで展開する。
フリービットは、個人向けのServersMan@CASも提供する。個人向けでは、LAN内機能としてDLNA(Digital Living Network Alliance)接続機能やiTunesサーバ機能を実装しており、DLNAに対応したテレビやPS3などに接続することで、CAS内の画像や動画ファイルを表示させることが可能だ。現在は、PCやモバイル端末、PS3など限定されたメディアでの接続になるが、今後は家電との連携を高め、シームレスな接続環境を目指していくという。価格は1ベイ(1Tバイト)モデル(MZK-NAS01SGS)で2万4800円、2ベイ(2Tバイト:RAID1)モデル(MZK-NAS02SGS)で3万9800円となり、11月6日から販売を開始している。
なお、法人市場においては「サーバに関する特別な知識がなくても容易にサーバを構築し利用でき、運用に関わる手間も省くことができる。これまでのサーバやデータセンターから置き換えることにより運用コストの削減ができる」(安部氏)とし、ホスティング市場やサーバ市場、法人ネットワーク市場などを合わせた、およそ2兆円規模の市場をターゲットに展開していくとのことだ。
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