海外のモバイル通信を「日本と同じ料金で」――日本通信が米Sprint網のMVNOサービスに着手
海外で携帯やデータ端末を利用する際、国際ローミングの割高な料金は悩みのタネだ。日本通信は世界各地のキャリアからネットワークを借り受けることで、“世界中で同じ料金”のモバイル通信サービスの提供を目指す。その第1歩として、米Sprint網を使ったMVNOサービスに着手する。
海外で自分の携帯電話を利用する際には、国際ローミングによって国内より割高な料金が発生する。この現状に対して日本通信は、MVNOサービスをワールドワイドに展開することで、世界のどこでも“同じ端末、同じSIM、同じ料金”で通信できる環境の構築を目指す。
3月23日、日本通信の米国現地法人であるCSCTが、全米第3位の携帯キャリア・Sprintのネットワークを利用したレイヤー2接続のMVNOサービスに着手することを発表した。まずはアメリカのATM、POS市場などの法人市場に対してサービスを提供。日本の一般ユーザー向けには、第2四半期(7月〜9月)にデータ通信サービスを展開する予定で、料金は国内・国外を問わず同社のプリペイド式データ通信サービス「Doccica」と同程度の料金になる方向で調整を進めているという。
「縦に切られた通信事業者のプラットフォームを、日本通信が横に広げる」――。発表会見で同社の代表取締役社長・三田聖二氏は、レイヤー2接続によるサービスエリアを世界的に拡大する「グローバル・ワン戦略」を公開し、世界共通の通信サービス基盤を築く意志を示した。
欧州、中国も順次進出。SIMの共通化構想も
他社の通信サービス自体を借り受けるローミングと異なり、MVNOサービスでは通信キャリアから通信インフラを借り受ける。さらに、レイヤー2接続と呼ばれる、ネットワークに相互接続するための関門交換機(GGSN)を自社で保有する形態では、料金体系を含めて柔軟なサービス展開が可能になる。日本通信は、2009年3月にNTTドコモとのレイヤー2接続によるMVNOサービスを実現し、「日本のドコモがレイヤー2接続に応じたことが、世界的にも注目を浴びた」(日本通信 常務取締役CMO兼CFO・福田尚久氏)という。同社はSprintとのレイヤー2接続を皮切りに、2010年内に欧州、さらに2011年に中国でネットワークを調達したい考えだ。
Sprintとのレイヤー2接続では、現地法人のCSCTが実績を積み上げてきたATMの無線データ通信サービスから提供を開始し、POS向け、さらにはアメリカの一般ユーザー向けに事業を拡大していく。一般ユーザー向けには、Doccicaのような利用した分だけの料金を払うチャージ式の料金モデルを“輸出”する方針で、販売網を持つパートナー企業とともに計画を進めるとしている。
第2四半期(7月〜9月)ごろには、NTTドコモのFOMA網(W-CDMA)と、SprintのEV-DO網(CDMA2000)の両方を利用できるサービスを提供する予定。それぞれ通信方式が異なるが、「世界的には、W-CDMAとEV-DOの双方に対応したチップを搭載したPCが既に登場している。USB型のドングルもかなりのスピードで普及してくるとみられ、技術の違いに関する問題はチップレベルで解消できるようになる」(福田氏)。福田氏によれば、まずチップ内蔵型のPC向けにサービスを開始し、その後、両通信方式に対応したUSB接続型データ端末を販売することになるという。
また、同社は3月17日にSIMフリー端末向けにSIMカード単体を販売する「通信電池 b-mobileSIM」の発売を発表しているが、将来的には海外も含めた同社の全サービスエリアで利用できる「G1-SIM」の開発も視野に入れており、実現すれば「1つのSIMで、世界中で通信サービスが利用できるようになる」と福田氏は話す。
こうした国際的な認証・課金プラットフォームを構築することで、コンテンツプロバイダーや、端末メーカー、さらにはテレビから電気自動車といった通信対応製品を販売するメーカーの世界展開をサポートできるとも三田氏は主張する。「通信のネットワークは基本的に縦割りの産業、地域別にドメスティックにサービスを提供している。横展開で世界的なプラットフォーム環境を作るのが、日本通信の役割」(三田氏)
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