ネットの大海原に出るための「再定義」――ドコモ伊倉氏に聞くスマートフォン時代の“パラダイムシフト”戦略(後編):神尾寿のMobile+Views(3/3 ページ)
ジャーナリスト神尾氏によるドコモ伊倉氏へのインタビュー。後編では、スマートフォン時代に向けたサービスの再定義、そしてARPU向上という目的にとどまらないスマートフォンの“その先の意義”への意気込みが語られた。
2011年のドコモのスマートフォン戦略
神尾氏 最後に、ドコモは2011年のスマートフォンをどう位置づけていらっしゃるのでしょうか。また、とりあえず今年の前半、競争の中でどのように優位性を保って、2011年のスマートフォン市場を盛り上げていきたいのか。この辺について、お聞きできますでしょうか。
伊倉氏 2011年度はスマートフォンで600万台を目指すと言っています。端末の総販売台数の3割から4割はスマートフォンという位置付けなんですね。その中にタブレットも入っているとして、Android系でそのくらい、ということからすると、機種数はフィーチャーフォンと互角になってきます。
また裾野も拡大しないといけません。今のフィーチャーフォンのお客様のデモグラフィ(属性)と同じようにしていくために、ターゲットを拡大していく。女性層、エルダー層なんかも含めて、端末のラインアップを増やしていく。そうすることによって、ターゲットセグメントを広げていきます。そうすると、ラインアップや訴求の仕方も工夫もしていかなければいけないと思ってます。
神尾氏 MWC(Mobile World Congress)で山田社長が、スマートフォン時代を意識して、クラウド的な機能をネットワークの内側に作りたい、ということをおっしゃっていたんですが、そういったものの最初の一歩が今年、見られるでしょうか。
伊倉氏 なんとかしたいですね。しかし、最初から大きいことをやると、まともに動かない場合があるから、出し方は工夫をしなければいけない。今の通信事業者にとって重要なのは、「なぜスマートフォンに取り組んでいるのか」なんですよ。
山田社長もデータARPUを上げるといっていますが、それはひとつの見方として正しいんです。スマートフォンではほとんどの人がパケット定額プランの上限に届くわけですから、ARPUの向上には貢献するんです。しかし、それだけですと、いずれスマートフォン分野でも価格競争が起こってしまい、キャリアがダムパイプ化(単に通信回線を提供する土管となること)する恐れがあります。ですから、我々はもっと広い視野で、スマートフォンに取り組む意義を考えなければなりません。
では、なぜキャリアがスマートフォンを推進しているのかというと、まずフィーチャーフォンの垂直統合のモデルから、そうならないところに移ることが重要である、ということがあります。それをドコモが積極的にやることによって、インターネットの世界や新しい世界をきっちりと理解し、その中でクラウドを意識して、サービスの設計をする。将来的にクラウド系のサービスをやる前提として、スマートフォンを推進しなければならない。
今やっていることは具体的には申し上げられないんですけど、クラウドの世界もある種の「インフラの勝負」なので、規模がないと負けてしまいます。収益モデルは様々なものが考えられますが、それを実現するためには、規模を獲得することが重要なのです。
そういう意味で、私たちは今年2011年度については、ビジネスモデルの変換について真剣に考えています。今はまだspモードを作ったりとか、基本的な足腰の部分です。しかし、我々の本命は、“その先”にあるのです。
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