太陽光発電所の運用開始後に売電量を増やす、ニプロンのPVマキシマイザーの魅力とは

太陽光発電所の敷地内には太陽電池を敷き詰めることができなかった土地が余っている。ここに複数の太陽電池モジュールからなるストリングを増設し、発電量を増やすことが可能な製品をニプロンが開発した。「PVマキシマイザー」と呼ぶ。新設した短いストリングの電圧を効率よく高めることで実現する。

» 2015年02月18日 10時00分 公開
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 既に売電を開始した大規模太陽光発電所の能力をさらに高め、売電収入を増やす手法がある。このように主張するのは直流変換装置(DC-DCコンバータ)関連の技術に強みを持つニプロンだ。3割程度の出力増が期待できるという。同社は「第5回 スマートグリッドEXPO」(2015年2月25〜27日、東京ビッグサイト、ブース番号:E7-6)で、出力増を可能にする「PVマキシマイザー」を出展する。

使えなかった敷地内の土地を有効利用

 太陽光発電所内にはさまざまな理由から、使われていない土地がある。大規模太陽光発電所では、太陽電池モジュール(パネル)を直列に接続してストリングを作り、複数のストリングを接続箱経由でパワーコンディショナにつなぐ。それぞれのストリングの電圧(枚数)を同一にする必要があるため、ストリングを敷き詰めることができない場所がどうしてもできてしまう。起伏がある土地や、複雑な形状の土地を利用した発電所ではこのような未利用地が多い。

図1 運転開始時のストリング(空色)と増設したストリング(青色)の配置例

 この余った土地を使う。そこに太陽電池モジュールを何枚かつなげた新たなストリングを増設する。こうすることで太陽電池モジュールの枚数を30〜50%増やすことができる場合が多い(図1)。なお、増設する太陽電池モジュールはメーカーや型式を選ばない。

 増設するストリングの長さは既設のものと違ってもよい。なぜだろうか。PVマキシマイザーを新たに設置したストリングの末端に取り付けると、既存のストリングと同じ電圧まで効率良く昇圧できるからだ。

 PVマキシマイザーを導入した場合のシステム構成を図2に示した。図2の上段左に描かれた空色の部分は既設のストリングだ。各ストリングの長さは電圧を同一にするために全て同じになっている。ストリングの出力を接続箱で一本化し、パワーコンディショナ(PCS)に送り込み、交流に変換して売電する。

 増設したストリングを図2の中央左の青い部分で表した。長さはばらばら。ストリング1つにつき昇圧用のボードを1枚ずつ接続する。単品または複数の昇圧用ボードを筐体に組み込んだものがPVマキシマイザーだ。また、既設のストリングにPVマキシマイザーを接続することで、後述するような効果を見込むこともできる。

図2 ストリングを増設したときのシステム構成例

PVマキシマイザーが役立つ4つの理由

 既存の太陽光発電所にストリングを増設する。このようなシステムの発電量が増え、経済的に成り立つ条件は4つある。第1に既存の太陽光発電所に太陽電池モジュールを追加したとしても、一部の条件を除き、パワーコンディショナを変更しなければ、固定価格買取制度による売電単価が変わらないことだ。PVマキシマイザーを利用する場合、パワーコンディショナには一切手を付けない。

 第2にパワーコンディショナの能力が通常の場合、かなり「余っている」ことだ。太陽光発電所を設計する場合、複数のストリングの最大出力の合計とほぼ等しい容量のパワーコンディショナを設置することがほとんどだ。1MWの太陽光発電所には、容量1MWのパワーコンディショナを設置する。

 ところが、太陽電池の出力が最大になる時間はごく短い。正午以外の時間はパワーコンディショナの能力に余裕がある。ストリングを追加すると、正午以外の発電量が上乗せされて、1日を通して見ると発電量が増える。

 出力1MWの太陽光発電所に、PVマキシマイザーと合計500kWのストリングを増設した場合の月間発電量のシミュレーションの結果を図3上に示した*1)。パワーコンディショナの容量が1MWなのにもかかわらず、発電量が大幅に増えていることが分かる。図3下は同じ条件で増設量を1MWまで増やした場合だ。

*1) 大阪市内で真南に傾斜角30度で太陽電池を設置した場合の例。日射量データとしてNEDO日射量データベース閲覧システムの「年間時別日射量データベース(METPV-11)」を用いた。以下の本文で解説したパワーコンディショナの売電抑制機能が働かなかった場合の数値を赤線で示した。

図3 太陽電池モジュールを増設した場合の月間発電量(kWh)の変化 500kW増設(上)、1MW増設(下)

 太陽電池モジュールの増設率の他、太陽電池モジュールの設置傾斜角や、日照条件を変えた場合のシミュレーション結果を図4に示す。パワーコンディショナには出力容量以上の直流を抑制する機能がある。図4の縦軸は抑制された比率(売電量抑制率)を示す。横軸は発電所のもともとの出力からどの程度、太陽電池モジュールを増やしたか(パネル増設率)を意味する。

 図4から分かることは、もともとの設置量の1.5倍まで太陽電池モジュールの量を増やしても、カットされる電力は2%未満だということだ。つまり、増設分の98%は売電収入増に貢献する。

図4 太陽電池モジュールをもともとの量の1.5倍に増やしても、無駄になる電力は2%未満

増設の方が新設に比べて回収年数が短い

 PVマキシマイザーが経済的に成り立つ条件に戻ろう。第3の条件はこうだ。増設の場合、受変電設備やパワーコンディショナなどの費用が不要になるため、PVマキシマイザーの追加コストを含めても新設より安価になることだ。同じ買取単価でも回収年数を新設に比べ1割程短くできる。さらに増設の場合は売電単価を維持できるため、仮に新設が26円/kWh、増設が32円/kWhで売電できるとすれば、増設の回収年数は新設に比べ3割程度短くできる。

 第4の条件は後ほど紹介するように、PVマキシマイザーの昇圧能力が高いことだ。昇圧の際に電力を無駄にしてしまうような製品では投資を回収できない。

太陽電池を増設しない場合にも効果あり

 ニプロンによれば、太陽電池モジュールを増設せず、PVマキシマイザーを単独で導入した場合でも発電量が増加するという。影や、太陽電池モジュールの特性ばらつきの影響を取り除くことができるからだ。

 影の影響を取り除くとはどういうことだろうか。まずはパワーコンディショナの動作を追う必要がある。

 ストリングの長さを全て等しくするのは、パワーコンディショナ側の都合による。理想的な条件であれば太陽電池モジュールの特性は全て同じであり、同量の日射を受ける。太陽電池の出力は電流(I)と電圧(V)の掛け算で決まる。太陽電池モジュールは種類ごとに電流-電圧(I-V)特性が決まっており、日射量が決まると、出力が最大になる最適動作点(電流と電圧の組み合わせ)が1つに定まる。時々刻々、日射条件に合わせて最適動作点(の電圧)を決めるのはパワーコンディショナの基本的な役目だ。これを最大電力点追従制御(MPPT)と呼ぶ。

 ここで、1つのストリングのごく一部に影が掛かったとしよう。するとそのストリングの最適な動作電圧は低下する。しかし、パワーコンディショナは多数側のストリングに合わせて制御するため、動作電圧は元のままだ。このため影が掛かったストリングの出力は大幅に下がってしまう(図5)。太陽電池が影を嫌う理由だ。

図5 太陽光発電所と影の関係

 PVマキシマイザーをストリングごとに導入すると、影が生じたストリングでは最適なより低い電圧で発電し、発電後に昇圧する。このため、影の影響を軽減できる(図6)。

図6 PVマキシマイザー導入後の影の影響

 具体的な事例で効果を見よう。図7はニプロンの社屋屋上に設置された太陽電池モジュールの様子だ。全体の出力は4.33kW。太陽電池モジュール40枚を5つのストリングにまとめ、5枚のPVマキシマイザー用ボードを接続できるようになっている。午前中など日の向きによって、屋上フェンスの影が太陽電池に掛かってしまう。図7の右下にもフェンスの影が薄く見えている。

図7 ニプロン社屋屋上の太陽電池モジュール

 このような小さな影であっても発電に与える影響は大きい。それを示したのが図8だ。同社は1日おきにPVマキシマイザーをオンオフして効果を調べており、日照条件がほぼ等しかった日の組み合わせを示したものだ。9月18日(空色の線)は、PVマキシマイザーがオフになっていた。すると午前8時から10時半ごろまで影の影響が強く現れて発電電力が不規則に低下した。9月17日(ピンク色の線)はPVマキシマイザーがオンになっており、影による影響をかなりカバーしている。

 1日の積算発電量を比較すると、9月18日(青線)と比較して、9月17日(赤線)は約20%多くなった。

図8 PVマキシマイザーが影の影響を抑えている様子

 小さな影以外にも、各太陽電池モジュールの出力が工場出荷時に最大10%ずれていること、経年変化によって導入後数年で電圧が低下すること、風の流れにより部分的に高温の太陽電池モジュールがあること(高温では電圧が下がる)など、ストリングごとの電圧が互いに異なってしまう原因はさまざまだ。PVマキシマイザーはこれら全ての状況に対応できる。

変換効率が高く、寿命が長いボードがソリューションのカギ

 冒頭で触れた4つの条件のうち、最後の条件については説明が必要だろう。直流を受け取って、電圧を高める装置(ブーストコンバーター)は一般的であり、さまざまな仕様の製品を入手できる。PVマキシマイザー以外にも選択肢がありそうだ。

 PVマキシマイザーが大規模太陽光発電所に向いている理由は2つある。1つは最大99.4%という高い変換効率を実現したこと、もう1つは25年以上と長いボードの寿命だ。効率が高いために、ストリングとパワーコンディショナの間にPVマキシマイザーを挟み込んだときに失われる電力をごくわずかに抑えることができた。寿命が太陽光発電所の運用期間(20年)よりも長いため、導入後に交換する必要がない。

 ブーストコンバーターに必要な電子部品のうち、トランジスタにSuper Junction FETを、ダイオードにSiC(炭化ケイ素)品を用いたこと、さらに多重ブースト回路を採用したことで変換効率を高めた。

 寿命を伸ばすための工夫は、寿命部品を採用しなかったことだ。熱に弱い電解コンデンサーを採用せず、フィルムコンデンサーを用いた。効率が高いため、変換中の電力がほとんど熱に変わらない。このため同じく寿命部品である冷却ファンを使っていない。

600V、4.5kWまで対応する

 PVマキシマイザーはブーストコンバーター機能を備えたボード「100年コンバーター(100TBFL)」(図9)を専用の接続箱(図10)に収納し、架台の裏などに設置することで導入できる。接続箱には最大8枚のボードを収納可能だ。各ストリングの末端の2本の電力ケーブルを接続箱につなぎ、接続箱から2本の電力ケーブルを引き出してパワーコンディショナと結ぶ形になっている。ボードの入力電圧は45〜600V。4.5kW出力まで対応可能だ。接続箱(8枚のボードを収納するタイプ)の寸法は高さ618mm、幅1194mm、奥行き185mm。

図9 ボードの外観
図10 接続箱にボードを8枚格納したところ 右側はブレーカーなど

保守管理コストの低減にも役立つ

 PVマキシマイザーは管理・運用(O&M)のコスト低減にも役立つという。他の2種類のボードと組み合わせることで実現する。

 1つ目のボードは「監視ボード(PMB)」。PVマキシマイザーはストリングごとに電圧を制御しており、電流値も分かる。監視ボードはPVマキシマイザーのボードから情報を得て、電圧と電流を個別にリアルタイム監視できる。

 一般的な監視ソリューションではパワーコンディショナから情報を得ている。この場合、全てのストリングの電圧は同一であり、電流のみを監視する。しかし、太陽電池モジュールは定まった電流で動作する定電流源だ。ストリングごとに電圧を監視できる監視ボードを利用すると、故障などを事前に見つけやすいO&Mソリューションを作り上げることができる。これがコスト低減につながる。

 もう1つのボードは「データ集積ボード(DPB)」。ストリングごとに監視ボードを設置後、RS-485経由で監視ボードをシリアル接続し、その末端に接続する。データ集積ボードは電流や電圧のリアルタイムデータを保存し、処理する機能を備えている。ストリングごとに過去と現在の出力を比較できる他、ストリング間の比較も可能だ。このため、よりきめ細かいO&Mが可能になるのだという。例えば、全ストリングの出力が同期して上下した場合は天候要因だと判断でき、1ストリングだけ挙動が異なる場合は、問題が発生した可能性が高い。

 ニプロンはこの2種類のボード以外にもさまざまな装置を開発中だ。同社にはデータセンターなどへ導入が進みつつある直流給電関連のソリューションがある。そこで、太陽電池モジュールのピーク出力を蓄電池に蓄え、それを例えば多少日が陰ったときに出力することが可能だという。本州以外の電力会社は、太陽光発電の導入可能量の限界が近いため、ピーク出力を抑えることが可能なソリューションとして今後役立っていくことだろう。

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提供:株式会社ニプロン
アイティメディア営業企画/制作:スマートジャパン 編集部/掲載内容有効期限:2015年3月17日