住宅用蓄電池を産業用で活用、ファーウェイの「分散型蓄電」が可能にした低圧太陽光の新スキーム

北海道の低圧太陽光発電所に、売電収益を飛躍的に高める“分散型蓄電システム”が導入された。パネルの下に並んでいるのは、華為技術日本(ファーウェイ・ジャパン)が2021年春に“住宅用”として発売した蓄電システムだ。同発電所の過積載率は700%に上り、蓄電池にためた電気を夜間存分に売電することができるという。

» 2021年12月22日 10時00分 公開
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 その太陽光発電所は、新千歳空港にほど近い北海道中部のまち、恵庭市にあった。取材に訪れたのは12月に入る少し前だったが、明け方の地面には霜が降り、水たまりには薄氷が張っていた。より冬季には積雪もあるこの寒冷地に誕生したのは、全国でもまだ珍しい、蓄電池を組み入れた野立ての低圧太陽光発電所だ。

ファーウェイ・ジャパンの住宅用蓄電池を設置した「北海道恵庭発電所」

 今日、蓄電池は、自家消費型太陽光発電やBCP対策のキーデバイスとして、さまざまなシーンで活用され始めている。あるいは、太陽光や風力など再生可能エネルギーの大量導入に伴う系統安定化のための設備としても存在感を高めている。一方で、FITでの売電を目的とする低圧太陽光発電所に、蓄電池を導入しているケースは少ない。蓄電池込みでFIT認定を受けていても、実際には着工に至っていないケースが多い。

 ここは、PNF JAPANが運営する北海道恵庭発電所。2018年度にFIT認定を受けた調達価格18円/kWhのFIT案件だ。2021年10月15日に北海道電力に連系し、運転を開始した。PNF JAPANは、北海道から鹿児島まで全国約300カ所(連系済み約200カ所)で、低圧からメガソーラーまで各種太陽光発電所を開発・運営する発電事業者だ。

“系統の空き容量問題”を蓄電システムで打開

 目の前に立つと、そこは一見、低圧とは思えない大規模な施設だった。恵庭発電所には、低圧(AC49.5kW)でありながら、DC350kW分もの太陽光パネルが設置されているのだ。つまり、過積載率は700%にのぼる。そして、パネルの下には、蓄電容量15kWhのファーウェイ製住宅用蓄電池「LUNA2000シリーズ」が34台(計510kWh)、ハイブリッドパワーコンディショナーとセットになって設置されている。

太陽光パネルの下に設置されたファーウェイの住宅用蓄電池「LUNA2000シリーズ」

 FIT案件における一般的な過積載では、どんなに発電しても認定を受けたパワーコンディショナーの出力以上に電力系統に流すことはできず、ピークカットした分の電力は捨てるしかなかった。しかし、ピークカットした電力を蓄電池にためて、夜間に系統に放電すれば、発電した電力を無駄なく売電することができる。蓄電池の容量や性能にもよるが、発電した電力をまったく無駄にすることなく生かしきることも可能だ。同発電所の場合、1時間当たり49.5kWの出力が認められるので、総蓄電容量510kWhの蓄電設備から、日没後も最大約10時間にわたって売電を続けることが可能だ。

PNF JAPAN 営業統括部長の武田剛氏

 これほどの過積載と蓄電池を組み合わせた低圧太陽光発電所の運用事例は、日本全体を見渡しても、極めて少ない。PNF JAPANは、なぜ、このような発電所に挑むことになったのか、同社営業統括部長の武田剛氏は、次のように述べる。

 「弊社では、早くから蓄電池の可能性に着目し、FITに関しても数年前から、“蓄電池あり”での認定を多数受けてきました。とはいえ、実際に蓄電池併設型の低圧太陽光発電所をつくるのは、ここ恵庭発電所が初となります。平行して、北海道中南部の白老町にも類似の発電所をつくっており、この2カ所をパイロット案件と位置づけています。

 そもそも、なぜ低圧にしたのかということですが、そこには電力系統の空き容量問題がありました。この地域は空き容量が少なく、高圧では系統接続が困難であり、仮に接続できたとしても大きな工事費負担金が必要でした。そのため、連系しやすい低圧のカテゴリーに抑えることとし、その上で、できるだけ多くの発電量が得られるようにと今のスタイルになりました。

 私どもには、FIT認定を受けた“蓄電池あり”の低圧太陽光案件が、まだ70件近くあります。それらについても着実に形にしていけるよう、まずはこのパイロット案件で、充放電の動きなど各種データを収集し、運用ノウハウを磨いていきたいと考えています」(武田氏)

住宅用蓄電池が低圧太陽光の分散型蓄電に最適だった

 空き容量問題をきっかけに、蓄電池を組み合わせた低圧太陽光の開発を進めてきたという同社。気になるのは、数ある蓄電池の中から、なぜファーウェイの住宅用蓄電池を採用することにしたのかだ。地上設置型の産業用の太陽光発電所に、あえて住宅用を導入するメリットはどこにあったのか?

 「さまざまなメーカーの蓄電池を検討しましたが、ファーウェイの蓄電システム『LUNA2000シリーズ』だけが分散型として使えるものだったのです。住宅用ということで販売されてはいますが、その性能は住宅での使用に限定されるものではありません。複数台を連携させることで、産業用の低圧太陽光発電所にちょうど良い、分散型の蓄電システムを構築することができるのです。弊社にとっては、それが一番のポイントでした」(武田氏)

分散型システムに最適であることが、住宅用蓄電池である「LUNA2000シリーズ」を採用した理由の一つに

 パワーコンディショナーに分散型と集中型があり、それぞれにメリット・デメリットがあるように、蓄電システムにも分散型と集中型があり、PNF JAPANにとっては分散型の方が望ましかったというのだ。

 「分散型のメリットはいろいろありますが、まず、どんな現場にも導入できるというところが大きいでしょう。分散型の蓄電池なら1台1台が軽量コンパクトで、特別なスペースを確保しなくても、太陽光パネルの下に設置することができます。輸送にあたっても、大型トレーラーで運んでくる必要はないので、どこにでも難なく搬入することができます。一方、集中型の蓄電池は大きなコンテナにパッケージされているので、設置場所も必要だし、搬入路を確保できないケースも出てきます。私どもの計画地には道路条件の悪いところも多いので、これは重要な問題です。

 また、仮に故障をしたとしても、そのユニットだけを交換すれば良いので、発電所全体に及ぼす影響を小さく抑えられます。復旧のための手間やコストも、集中型より少なく済むでしょう。これまでもパワーコンディショナーにおいて、ファーウェイの分散型システムを採用してきましたから、はじめての蓄電池でも不安はありませんでした」(武田氏)

厳しい寒さにも耐えるファーウェイ製の安心感

 さらに、北海道ならではの条件として「寒さに強いものであること」を挙げ、ファーウェイ製蓄電システムを選んだもう一つの理由を語る。

 「この発電所は、冬の最低気温が−10℃を下回る、寒さの厳しい場所にあります。もちろん、雪も積もります。そうした環境下でも性能が落ちない、優れた環境耐性をもつ蓄電池を求めていました。ファーウェイの蓄電システムは−20℃までの動作検査をクリアしているとのことで、それも大きな選定理由になりました。当然、屋外設置ですから激しい風雪にさらされますが、防水防塵保護等級も最高レベルなので安心です」(武田氏)

地球温暖化防止へ、「再エネ+蓄電池」の可能性を追求

 蓄電池併設型低圧太陽光発電所は、PNF JAPANとしても未経験のプロジェクトだったので、運転開始に至るまでには少なからず苦労もあったという。しかし、プロジェクトのスタート時から、ファーウェイの協力体制がしっかりしていたので、安心して進めることができたとも。「設置工事の際も、専門スタッフが付きっきりでいてくれたので、さまざまな課題をその場で解決することができて助かりました。まさに、ファーウェイとの二人三脚で形にした案件です」と武田氏は話す。

 「蓄電システムは、脱炭素社会を実現していくために、なくてはならないものです。弊社も、太陽光発電に携わるものとして、その普及に貢献していければと考えています。恵庭発電所の充放電データなどについても、社内での活用に留めることなく、ファーウェイとの共有を図るなど幅広く役立てていきたいと思っています」(武田氏)

 武田氏が先に述べた通り、PNF JAPANは、恵庭発電所ほかパイロット案件の運用経験を生かして、数多ある蓄電池付きFIT認定案件の事業化を進めていく。ただ、武田氏は、それはあくまで通過点であり、次のステージに向かうためのプロセスだとも語っている。

 「究極の目標は、脱炭素社会を実現し、地球温暖化を防止することにあります。その主力である再生可能エネルギーの導入を進め、利活用の可能性を拡げていくためにこそ蓄電池は生きてくるはずです。しかし、太陽光と蓄電池を組み合わせたシステムの働きには、実際に運用してみないと分からないところも少なくあります。ですから、まずは自社の発電所で経験を積んだ上で、その知見をもって、多様なアプローチをしていきたいと考えているのです。

 そこには、災害時のBCP対策やPPAモデルによる太陽光発電の導入、地域の再エネ需給をネットワーク化したマイクログリッドなど、さまざまな非FITスキームが芽吹き始めています。いずれのスキームにおいても、これからは需要家サイドと協力して進めていくことが必須であり、そのためにはデマンドに柔軟に対応できる蓄電池の存在が不可欠となります。弊社も発電事業者として、“再生可能エネルギー+蓄電池”の可能性を拡げていきたいと祈念しています」(武田氏)

 PNF JAPANとファーウェイのパートナーシップが、これからの社会にどんな変化をもたらすことになるのか注目していきたい。

産業用に特化した分散型蓄電システムも発売予定

 ファーウェイはこのほど、産業用太陽光発電所向けのスマート分散型蓄電システム「LUNA2000-2.0MWH-1H0/2H0」の開発を発表した。2022年度中に販売を開始する予定だ。

新製品の産業用蓄電池「LUNA2000-2.0MWH-1H0/2H0」

 基本システムの蓄電容量は約2MWh(2064kWh)で、蓄電池の分割・増設により最適化配置が可能。電池パック、ラックごとに放電を管理することで、ライフサイクルの充放電容量の向上を実現した。また、定期的なSOC(充電率)測定を省いて、O&Mコストを節約できる点も特徴だという。独自の消防設備を内蔵し、高い安全性を担保するとともに、ファーウェイならではのモジュラー設計などにより、信頼性も高めた。高圧・特別高圧の太陽光発電所にとって、強力な選択肢となることは間違いないだろう。

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提供:華為技術日本株式会社/ファーウェイ・ジャパン
アイティメディア営業企画/制作:スマートジャパン 編集部/掲載内容有効期限:2021年12月28日