ファーウェイの蓄電池をPPAでフル活用! 「脱炭素先行地域」に選ばれた熊本県球磨村の取り組みとは?

熊本県球磨村が、環境省が認定する「脱炭素先行地域」の1つに選ばれた。太陽光発電と蓄電池を、PPAにより村内各所に導入する計画などが評価されたという。同計画を球磨村と共同提案した球磨村森電力の中嶋崇史代表に、プロジェクトの詳細とそこに込められた想いについて聞いた。

» 2022年07月05日 10時00分 公開
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 環境省は先頃、2030年度までに脱炭素化の実現を目指す「脱炭素先行地域」について、第1回の公募結果を発表した。共同提案を含め全国102の地方自治体から79件の計画が提出され、26件が選定されている。そのうちの一つに選ばれたのが、“ゼロカーボンビレッジ創出事業”を掲げた熊本県球磨村だ。太陽光発電と蓄電池をセットにした、複数の施策を組み合わせた取り組みによって地域の脱炭素化を図っていくという、今後の国内のロールモデルとなり得る注目のプロジェクトだ。

人口約3000人、約1300世帯が暮らす熊本県球磨村

 そもそも脱炭素先行地域とは、国が掲げる「2050年カーボンニュートラルの達成」に向け、必要不可欠とされる地域の脱炭素化を推進する施策の一環であり、意欲的な取り組みにより地域脱炭素をいち早く実現しようとする地方自治体が選定される。環境省では2025年度までに少なくとも100カ所の脱炭素先行地域を創出し、全国のモデル・模範となる事業の創出を支援する狙い。なお、脱炭素先行地域に選ばれた地方公共団体等に対しては、「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」として、例えば太陽光発電設備については事業総額の2/3が交付される。

村内の脱炭素化と豪雨被害からの復興を目指して

 今回採択された熊本県球磨村のプロジェクト名は、“「脱炭素×創造的復興」によるゼロカーボンビレッジ創出事業”。球磨村が申請主体となり、共同提案者として、地域新電力である球磨村森電力と球磨村森林組合が名を連ねる。球磨村と球磨村森電力が連携し、蓄電池を併設した自家消費型太陽光発電設備を最大限導入するとともに、荒廃農地などを活用したソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)による電力供給なども行い、村内の脱炭素化を進める計画となっている。

球磨村森電力 代表取締役の中嶋崇史氏。球磨村復興推進アドバイザーも務める

 球磨村は2020年7月に発生した豪雨により、甚大な被害を受けた地域でもある。そのため、そこからの復興が喫緊の課題となっており、災害公営住宅整備事業などのさまざまな取り組みがこれから進む。今回の計画では、そうした災害公営住宅や各種村有施設にも自家消費型太陽光発電設備を導入することになっており、そこには再エネ電力の導入拡大とあわせて、災害復興とともに生活コストの低減と、レジリエンス強化を同時に実現していく役割も期待されている。プロジェクト名に「創造的復興」という言葉が盛り込まれているのは、こうした背景とビジョンがあるからだ。

 プロジェクトの共同提案者である球磨村森電力の代表を務める中嶋崇史氏は、以前から球磨村の脱炭素や産業活性化に向けた取り組みを支援してきた。今回のプロジェクトの立案に至った経緯について、中嶋氏はこう話す。

 「豪雨からの復興にあっては、当初からグリーンニューディール的な観点を持って取り組んでいこうという方針が共有されていました。そうしたなかで、再エネの活用を推進しようという機運も高まっており、中長期の再エネ導入戦略も検討していました。しかし、一企業と自治体だけで野心的な取り組みを具体化するには、リソースの面で難しい点が多々あります。色々な方法を模索していたのですが、そのなかでタイミング良く環境省の脱炭素先行地域の公募があり、今回のプロジェクトの立案に至りました。単に再エネを導入するだけではなく、村民の方の生活コストの低減や球磨村の主要産業である林業の発展など、再エネ導入が地域のメリットにつながっていくプロジェクトとなっているのも大きな特徴です」(中嶋氏)

自家消費型太陽光と荒廃農地での再エネ発電を推進

 球磨村のゼロカーボンビレッジ創出事業とは、具体的にはどのようなものなのか。中嶋氏は、その概要を次のように整理する。

 まず、PPAモデルを使った自家消費型太陽光発電設備の導入と電気代の低減。これにより需要家側の設備負担を抑えつつ、生活におけるエネルギーコストを引き下げ、住みやすさを向上させていく。前述の災害公営住宅などが、発電設備の設置対象となる。

 次に、公共公益施設に自家消費型太陽光発電設備と蓄電池を設置。電気代のコスト削減だけでなく、災害時にも電気が使える環境を整備して、村全体としてのレジリエンスの強化を図る狙いだ。学校など避難所指定施設や各種村有施設、高齢者福祉施設などの民間事業施設がこの対象となる。これについてもPPA事業として実施し、需要家の費用負担はないモデルとなっている。

 さらに荒廃農地など再生が望まれる土地には、新たに太陽光発電所をつくり、球磨村森電力の再エネ自社電源を増やしていく。そして、ここにも蓄電池を併設する。上の取り組みにより、電気の需要家に自家発電・自家消費を促すとともに、供給する電力についても再エネ化を図っていこうという狙いだ。なお、新設する太陽光発電所はソーラーシェアリングを基本とし、荒廃農地の再生にも役立てていく。ソーラーシェアリングでは牧草を栽培し、球磨村の酪農に生かしていく方針だ。

 また、7月豪雨による大規模被災から生業を再建した林業加工施設(3施設)については、屋上に太陽光発電設備と蓄電池を設置し、自家消費・相対契約による再エネ電力を供給。これにより、林業の加工段階における脱炭素化を推進する。昨今、建築物そのもののカーボンニュートラル化に向けた取り組みが広がっている。そこで今後ニーズが高まりそうな「製造工程においてもCO2フリーな建材」を実現することで、林業の価値を高める狙いだ。球磨村にとって林業は最大の産業であり、これを脱炭素化することはエリア全体のカーボンニュートラル化に加え、地域産業の発展にも大きく貢献することになる。

 さらに、小中学校で使用しているスクールバス5台、役場公用車10台をEV化するとともに、充電インフラを計9カ所設置するなど、街の交通インフラについても電化の推進と脱炭素化を図るという。

プロジェクトにおける主な取り組みのイメージ

ゼロカーボンビレッジにおける蓄電池の役割とは?

 ゼロカーボンビレッジ創出事業においては、蓄電池が重要な役割を担っている。PPAによって、太陽光発電設備だけでなく、蓄電池も需要家の負担ゼロで導入できるようにしているところが先進的な取り組みの一つといえる。中嶋氏は、こうした蓄電池の積極的な活用には、九州ならではの課題を解決する狙いもあると、その導入の意義を語る。

 「蓄電池を導入する理由は大きく3つあります。1つ目は再エネの自家消費率を高めるため、2つ目は災害時の電源を確保するためです。そして3つ目が、出力制御の要請が多いという九州ならではの理由となります。

 球磨村の立地するエリアは、すでに電力系統に空き容量が無い状況が続いています。太陽光の系統接続にはさまざまな制約があり、発電した電気をどんどん流して良いという状況ではありません。自家消費型の太陽光発電を導入しても、その余剰分を逆潮流させることもできません。

 そのため、基本的に日中は電気が余っていて、卸電力市場からも安価な電気を仕入れることができますが、朝、夕、晩の電気は非常に高いという状況にもなっています。そこで、発電した電気を蓄電池にためておき、日中帯以外のところで放電することで、再エネ電力を安価かつ安定的に供給していきたいという考えがありました」(中嶋氏)

 しかし、計画では蓄電池を設置する施設は大小25カ所、総蓄電容量は2200kWhに及ぶ。蓄電池は価格低下を続けているものの、一般にはまだまだ高いという印象がある。PPA事業者としてプロジェクトに参画する球磨村森電力は、この計画で採算が取れるだろうか?

 PPAとはPower Purchase Agreementの頭文字をとったもので、電力販売契約を意味する。いま一般にPPAモデルといわれているものは、家庭や企業・自治体が保有する建物・施設の屋根などに、PPA事業者が無償で太陽光発電設備を設置し、発電した電気をその家庭や企業・自治体が電気代を払って使うというスキームだ。発電設備の所有権は、建物・施設の所有者(需要家)ではなくPPA事業者が持ち、電気代というかたちで設置費用を回収し、収益を上げる。電気代に再エネ賦課金や燃料費調整額がかからないので、需要家にとっては、無償で設備を設置でき、安価な再エネ電力を使うことができるというメリットがある。球磨村のプロジェクトでは、PPAの対象に蓄電池も加えられているので、PPA事業者側の初期投資額は太陽光発電設備だけの場合より割高になる。

 「確かに価格だけをみると、補助金なしでは蓄電池の導入に踏み切れないというエンドユーザーも多いでしょう。しかし、蓄電池による電気代の削減効果は大きく、蓄電池の性能や使い方にもよりますが、数年で元が取れるケースも少なくありません。さらに、PPA事業においては卸値での導入が可能ですから、現在の価格水準でも十分に採算が取れると考えています。加えて、当プロジェクトには交付金も出ますから、余裕をもってスタートを切ることができます。もちろん、事業の採算性は、発電設備と蓄電池の性能によるところも大きいので、機器選定には慎重に検討を重ねてきました」(中嶋氏)

ファーウェイ製のパワーコンディショナーと蓄電システムを選んだ理由

 事業の収益性を左右するという発電設備と蓄電池。球磨村森電力が採用を決めたのは、ファーウェイ製のパワーコンディショナーと蓄電システムだ。ファーウェイ製品を選んだ理由は、どこにあったのだろうか?

 「これまでも自社所有案件でファーウェイ製のパワーコンディショナーを使っており、変換効率の高さや施工性の良さ、信頼性の高さを実感していました。故障の心配がほとんどないので、維持管理も容易でした。実際に他社製品も含めて、蓄電池とともに実際に運用を行って性能を比較検討したのですが、ファーウェイ製品の優秀さが際立つ結果となりました。さらに性能だけでなく、華為技術日本(ファーウェイ・ジャパン)が技術的な相談にも丁寧に対応してくださるなど、手厚いサポート体制があることを実感していたこともあり、今回、蓄電池も含めて全面的に採用する方針を固めました。

 今回のプロジェクトでは、小規模な建物の屋根から、電力需要も大きい林業加工施設、荒廃農地でのソーラーシェアリングなど、さまざまな設置場所が想定されています。ファーウェイの製品なら、それらすべての場所に、それぞれ最適なシステムを構築することが可能であり、太陽光と蓄電池を一体的に運用できるところにも大きな魅力を感じます。

 また、コロナ禍に加えてロシア・ウクライナ情勢もあり、いまはどのメーカーも納品が滞りがちです。しかし、ファーウェイ製品にあっては、そうした懸念が少ないということも安心材料になりました」(中嶋氏)

プロジェクトにおけるファーウェイ製品を利用した自家消費システムの一例

 ファーウェイは、日本でも世界でもトップシェアを誇るパワコンメーカーとして知られるが、住宅向け蓄電システムの発売を皮切りに、近年はパワコンと蓄電池を一体化したトータルソリューションの提供に力を注いでいる。2022年度中には、日本市場において新たな産業用蓄電システムを販売する予定であり、球磨村森電力としても積極的にこれを採用していく方針だ。

 中嶋氏は「発売が予定されている産業用蓄電システムのうち、とくに蓄電容量200kWhの中型システム(「LUNA2000-200KWH-2H0」)は、私たちのプロジェクトにおいても多く使っていけるものと期待しています。既存の蓄電システムとともに、設備の規模にあわせて適材適所で導入していくことになるでしょう」と話す。

球磨村の持続可能な発展のために

 中嶋氏は、これからの取り組みと、球磨村への想いについても語ってくれた。

 「地域の再エネ推進は、当社が設立当初から目指しているところでもあり、まずはゼロカーボンビレッジ創出事業を球磨村とともに着実に進めてまいります。球磨村森電力という会社の事業に関しては、卸電力市場への依存度を限りなくゼロに近づけていきます。送電線を使って供給する電気についても再エネ自社電源によるものとし、国際情勢などによって激変する市場価格の影響を受けない、安定した事業運営を図っていきたいと考えています。

 今後は、球磨村が長期にわたって持続可能な発展をしていけるよう、電力事業で得た収益を幅広く生かしていく方針です。現在も事業収益の一部を村の基金に寄付していますが、今後その額もどんどん大きくしていきます。そうした基金を通じて、例えばITを使った新しい教育を支援するなど、地域の発展につながるさまざまな分野にも貢献していければと願っています」(中嶋氏)

 これを実現していくためにも、電力事業の収益性を支える機器として、高効率で信頼性の高いパワーコンディショナーと蓄電システムの存在は欠かせない。球磨村のゼロカーボンビレッジ創出事業は、地域主体の脱炭素への取り組みとして、全国のモデルケースともなるものだ。プロジェクトの進展とともに、ファーウェイのソリューションがどんなパフォーマンスを発揮することになるのか、今後とも目が離せない。

球磨村森電力 代表取締役の中嶋崇史氏(右)と球磨村のプロジェクトを担当するファーウェイ・ジャパン デジタルパワー事業本部シニアアカウントマネージャーの村山慎一氏(左)

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提供:華為技術日本株式会社/ファーウェイ・ジャパン
アイティメディア営業企画/制作:スマートジャパン 編集部/掲載内容有効期限:2022年7月20日