沖縄生まれの「ガラス発電コンテナハウス」とは? 蓄電池による完全オフグリッドを実現

完全オフグリッドを実現したガラス発電コンテナハウスが沖縄で普及しようとしている。手掛けるのは地元の沖華産業と丸紅エネブル。鍵を握る蓄電システムにはファーウェイの「LUNA2000シリーズ」が採用された。なぜ、この取り組みが沖縄で始まったのか? その背景を現地で取材した。

» 2023年06月30日 10時00分 公開
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 打ち続く電気料金の高騰を背景に、太陽光発電の自家消費に改めて関心が集まっている。企業にとっても家庭にとってもエネルギーコストの削減は切実な課題だ。そんな中、にわかに脚光を浴びているのが電力会社からの電力供給を一切受けないオフグリッドハウスだ。発電設備と蓄電システムを装備して完全オフグリッドを実現した「発電コンテナハウス」が沖縄で動き始めた。

快適な住環境を実現した20フィートコンテナ

 始めに訪れたのは、大きなガラス窓が印象的な那覇市内の建物。落ち着いたたたずまいで街に違和感なく溶け込んでいるが、ベースになっているのは貨物輸送などに用いられる長さ約6メートルの20フィートコンテナだ。

那覇市内に設置された発電コンテナ

 屋根上と側面には、無色透明型光発電素子技術を活用した「発電ガラス」が設置されており、定格出力は合わせて約2.4kW。大きなガラス窓は、太陽光で電気を作る発電ガラスだ。この発電ガラスは透過性が高いので、窓ガラスとしてはめ込んでも室内は明るくて開放的。発電した電気でクーラーを効かせ、暑い日中でも快適に過ごせる。

屋根上と側面には「発電ガラス」が設置されている

 コンテナには容量15kWhの住宅用蓄電システム(ファーウェイの「LUNA2000シリーズ」)が据え付けられている。発電ガラスで発電した電気をためておけば、熱帯夜でもクーラーを使い続けられる。電力会社からの電力供給を必要としない、完全オフグリッドを実現した発電コンテナハウスだ。

解決したかった沖縄ならではの課題とは?

沖華産業会長の中村英樹氏

 これらの発電コンテナハウスを手掛けるのは、沖縄県を中心に太陽光発電設備や各種省エネ機器の販売・施工を行っている沖華産業(沖縄県那覇市)だ。発電コンテナハウスの開発に早くから取り組み、さまざまな実証を経て2022年に受注製作を開始した。蓄電システムをはじめとする機器導入やアフターメンテナンスは丸紅グループの丸紅エネブル(東京都千代田区)がサポートするという体制だ。

 沖華産業 会長の中村英樹氏は、ガラス発電コンテナハウスへの思いを次のように述べる。

 「ご存じの通り沖縄は台風の通り道にあり、暴風雨による災害が後を絶たない地域です。台風による停電も頻発します。特に離島は電波が届かないところもあり、停電は死活問題になりかねません。暑い日に停電してクーラーが使えなくなったら、生死に関わります。この状況を改善することが沖縄の長年の課題でした。発電コンテナハウスは、こうした災害対策に役立つソリューションとして考案したものです。私たちは、この事業を通して少しでも沖縄の人たちの暮らしと安全を守ることに貢献したいと考えています」(中村氏)

丸紅エネブル代表取締役社長の南波泰昌氏

 電力の供給が遮断されても、自立運用が可能なオフグリッド型の発電コンテナハウスが県内各所にあれば、万一のときの人的被害を軽減できるに違いない。発電コンテナハウスは、災害時の避難所にもうってつけだ。輸送が容易であるというコンテナの特性を生かし、必要なときに必要な場所に運搬して使うこともできるだろう。

 丸紅エネブル 代表取締役社長の南波泰昌氏も、「この発電コンテナハウスが、離島の切実な課題を解決するソリューションとして沖縄で誕生したことの意義は大きい」とした上で、「ますます重要性が高まる自立分散型電源のユースケースとして、日本全国への展開を支援したいと思います」と話す。

久米島のビーチ近くに、環境に調和した26棟のコンテナが並ぶ

 発電コンテナハウスの存在意義が発揮されるのは災害時だけではない。発電コンテナハウスはすでに100件超の受注があり、設置場所や導入目的は多種多様だ。

 「そもそも電線が通っていない山間部の工事現場や事務所、離島の民泊や海辺のカフェなど観光客向けの施設からもオーダーが入っています。現在は久米島のビーチに設置する26棟の製作に取り組んでいます。久米島観光客の宿泊施設不足、台風など停電対応の緊急災害時対策、コロナ禍対策として医療系のニーズも後を絶ちません」と中村氏。

発電コンテナハウスの夜間の様子。日中に発電した電力をファーウェイの蓄電池「LUNA2000シリーズ」に蓄電しておくことで、夜間でも問題なく照明やクーラーを利用できる

 ガラス発電コンテナハウスは、オーダーメード製作に対応している。サイズも色も住宅設備も、ユーザーのニーズに合わせてアレンジできるのは大きなメリットだ。「電気代がかからない」というコスト面のメリットから受注に至るケースも多いという。電気料金の高騰が続く状況にあっては当然のことだろう。

発電ガラスやペロブスカイトなど最新の発電設備

 ガラス発電コンテナハウスの発電設備と蓄電システムには、中村氏のこだわりが貫かれている。

 発電設備は、環境との相性やコストバランスを勘案して常に最新のソリューションを採用。始めに紹介した那覇市内のコンテナハウスには、側面と屋根上に発電ガラスが設置されていた。一方、初の物件として県内の別エリアに設置した発電コンテナハウスには、発電ガラスは側面だけで、屋根上には一般的な太陽光パネルが設置されている。

 なぜこのような違いがあるのか。実は、後者の物件の方が先に建てられたものであるため、「当時はまだ発電ガラスの性能評価が十分ではなかったので、屋根上には従来型の太陽光パネルを載せた」のだという。その後の実証によって「沖縄の環境には発電ガラスの方が合う」と判断し、屋根上にも発電ガラスを施工するようになった。将来的には、急ピッチで研究開発が進み、扱いやすさと発電効率の両立が期待されている「ペロブスカイト太陽電池」を積極的に採用する方針だ。

 「特に急速に普及に向けた研究開発が進むペロブスカイト太陽電池は、発電効率、コスト、取り付けの利便性などのメリットが、高齢化社会を迎えている日本にとても良く合うと思います。私がこれまで携わってきた光学分野の経験を活用しながら、沖華産業では先進の半導体関連企業と連携し、ペロブスカイト太陽電池の早期普及に貢献しつつ、美しい沖縄の環境を守りながら、日本のSDGsを支える地盤産業として頑張りたいと思います」(中村氏)

なぜファーウェイの蓄電システムを選んだのか?

 蓄電システムについては、ガラス発電コンテナハウスの市場投入当初から一貫してファーウェイのLUNA2000シリーズを採用している。その理由は何か。中村氏は「オフグリッドを大前提に開発してきた弊社にとって、蓄電システムの選定は極めて重要なテーマ」だったとし、ファーウェイ製品を採用した背景を以下のように話す。

発電コンテナに採用されたファーウェイの蓄電池「LUNA2000シリーズ」

 「ガラス発電コンテナハウスの開発段階では、国内外主要メーカーの蓄電システムを幾つも試しました。発電設備との相性や蓄電池としての基本性能はもちろん、災害時の対応やメンテナンス性、重塩害地域や高温多湿環境への適性など、検証した項目は多岐にわたります。当初は、発電ガラスの性能を十分に引き出せるパワーコンディショナーと、それと連携する蓄電システムを見いだせず、試行錯誤を重ねていました。

 そんな中、丸紅エネブルさんから提案いただいたのがLUNA2000シリーズだったのです。試してみたところ、太陽光パネルだけでなく発電ガラスとの相性も素晴らしく、全般的に高い評価を与え得るものでした。

 LUNA2000シリーズは、蓄電ユニットの組み合わせによって5kWhから30kWhまで柔軟に拡張できます。これは、お客さまのニーズに合わせてシステムを構築する上で大いに役立ちます。蓄電ユニットのどれかが故障しても、故障したユニットを交換するだけで迅速に復旧できるのも魅力です。

 発電と蓄電に関する全ての情報をスマートフォンで簡単に見ることができるのも他社製品にはない魅力でした。パワーコンディショナーと一体になった遠隔監視機能により、災害時だけでなく日常点検も容易です。ガラス発電コンテナハウスを使うオーナーさまにとってもそれを管理するわれわれ事業者にとっても、非常に多くのメリットを感じさせる蓄電システムだったのです」(中村氏)

那覇市内の発電コンテナハウス内に設置されたファーウェイの蓄電池「LUNA2000」シリーズとパワーコンディショナー(左)/遠隔監視機能が搭載されており、スマートフォンで常に蓄電の状況などを把握することが可能となっている。災害時に素早く蓄電残量を確認したり、稼働状況を常に見える化することで点検の効率化に役立てたりできるなど、非常に利便性の高い蓄電システムとなっている(右)

納期が早く、フォロー体制も万全

 製品そのものの性能だけでなく、供給体制やメンテナンス体制もメーカー選びの大切なポイントだ。コロナ禍の余波とロシア・ウクライナ情勢の影響による納期の遅れは蓄電システム市場においても例外ではない。

 「発注から納品までに最低半年は必要というメーカーも多い中、ファーウェイ製品は1カ月以内に納品されました。これには販売代理店として間に入ってくださっている丸紅エネブルさんにも感謝するところですが、ファーウェイ製品の安定的な供給体制には驚かされました」と中村氏。

 「ファーウェイ製品は故障が少ないことに定評がありますが、電子部品である以上、トラブルが生じないということはあり得ません。メーカー選びに際しては、トラブル発生時のバックアップや復旧対応など、アフターメンテナンスの体制も重視しました。

 初めて設置したときは配線に分からないところがあったのですが、すぐに沖縄までエンジニアが飛んできてくれて15分で問題を解決してくれました」と、フォロー体制の充実ぶりを振り返る。

緊密なパートナーシップにより、自立分散型電源の普及を目指す

 ファーウェイ製品の安定供給と導入支援、運用やメンテナンス体制の充実は丸紅エネブルによるところも大きい。同社とファーウェイの緊密なパートナーシップによって、顧客ニーズをくみ取った最適な蓄電システムが日本各地で導入され始めている。

 丸紅エネブルはファーウェイ製品に関する施行セミナーを月に1回実施しており、販売施工店の施工品質向上もサポートしている。「アフターサービスについては窓口を弊社の中に構えさせていただいており、原因の切り分けと迅速な対処に努めています」(南波氏)という。

 「一般的には、発電量も蓄電量も多いに越したことはないと思われるかもしれません。一方で、沖華産業さまのガラス発電コンテナハウスは必要最小限の発電・蓄電容量を基本としています。それこそが、自立分散型電源の普及にとっては重要であると考えます。過剰なスペックではなく、それぞれのニーズに最適な容量で、なおかつ手の届く価格帯に抑えたシステムを構築しなければ、多くの人々に届けることはできません。丸紅エネブルでは沖縄各地にこのシステムを拡めたいという中村社長の理念に共感し、サポートさせていただいております。今後いっそう沖華産業さま、ファーウェイさまとの連携を強化し、災害に強く、安心して使い続けられる自立分散型電源の普及に貢献していきます」(南波氏)

<取材・文 廣町公則>

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アイティメディア営業企画/制作:スマートジャパン 編集部/掲載内容有効期限:2023年7月18日