ファーウェイの蓄電池×太陽光PPAで実現する「地域脱炭素」 そのプロジェクトの内容とは?家庭用から大型モデルまで複数の蓄電池を活用

太陽光発電と蓄電池を最大限に活用することを軸とした“地域脱炭素”を目指す熊本県球磨村のプロジェクトが脚光を浴びている。その中心的な役割を担っている球磨村森電力 代表取締役の中嶋崇史氏に、具体的な取り組みの内容や狙いを聞いた。

» 2023年12月15日 10時00分 公開
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 熊本県球磨村で進んでいる「『脱炭素×創造的復興』によるゼロカーボンビレッジ創出事業」が、太陽光発電協会(JPEA)の「ソーラーウィーク2023 大賞」を受賞した。同賞は、「地域に貢献し、地域から望まれ、他の模範ともなる太陽光発電の普及拡大に資する取組・事業とそれを支えている方々を表彰するもの」であり、「地域との共生・共創に基づく太陽光発電が全国に広がるように、太陽光発電の地域貢献の可能性について、多くの方に認知して頂くことを目的」として創設された。

 大賞を受賞したこの事業は、球磨村と球磨村森電力(球磨村と連携協定を締結している地域新電力会社)、球磨村森林組合の3者が共同で進めているもの。環境省が主導するカーボンニュートラル実現に向けたモデル地域「脱炭素先行地域」にも第1回選定(2022年4月)で選ばれており、かねて注目を集めていたところでもある。脱炭素先行地域の選定から1年半。計画段階から実行段階に移り、改めて地域脱炭素と地域振興への貢献度が高く評価された格好だ。

中山間地域の課題を解決するために

球磨村森電力 代表取締役の中嶋崇史氏(右)と華為技術日本 デジタルパワー事業部 スマートソーラー営業部 澤田瑞葵氏(左)

 球磨村は熊本県南部に位置し、総面積の88%を森林が占めている。主要産業は林業で、2023年11月1日現在の人口は2808人、世帯数は1229。日本各地の中山間地域と同様に、高齢化の進展と人口減少、コミュニティーの存続危機、災害時の集落の孤立などを課題として抱えている。2020年7月に発生した豪雨で甚大な被害を受けた地域であり、これらの課題は一層深刻になっている。

 「脱炭素×創造的復興」によるゼロカーボンビレッジ創出事業は、こうした背景の下で立ち上げられた。「多くの住民が異常気象による水害避難を経験した村だからこそ、従来の課題への対応に加えて全国に先駆けてゼロカーボンの達成を掲げ、気候変動という世界共通の課題解決に取り組み、災害に強く、住民が安全に安心して住み続けられる山里の復興を目指している」(中嶋氏)という。

PPAで太陽光発電と蓄電池を最大限に導入

 同プロジェクトでは、太陽光発電設備と蓄電池の最大限の導入を軸に、地域の脱炭素化とレジリエンスの強化を図る。村内に太陽光発電設備を合計約2.5MW、蓄電池を合計約2.2MWh導入し、村内の電力需要の70〜80%を再生可能エネルギーの地産地消スキームで賄っていく計画だ。

 太陽光発電設備と蓄電池の設置を進めている場所は木材加工施設や学校、保育園、福祉施設、災害公営住宅など。2023年は、森林組合の製材関連施設に設置した太陽光発電設備121.2kW、蓄電池150kWhを皮切りに村内11カ所、合計で太陽光発電設備826.7kW、蓄電池1050kWhが導入された。今後は、荒廃農地での蓄電池併設型ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)にも取り組んでいく。いずれも太陽光発電設備と蓄電池をセットで導入する点が大きな特徴だ。

球磨村の製材関連施設に導入した太陽光発電システム

 太陽光発電設備と蓄電池は、基本的には全てPPA(Power Purchase Agreement)スキームを使って導入する。PPAとは、電力需要家が初期費用ゼロで設備を導入して、電力の使用量に応じて料金を支払う仕組みだ。契約期間は一般に10〜20年と長期であり、料金は基本的に固定なので、安定的な電力調達が可能だ。球磨村森電力がPPA事業者として設備の設置と運用・保守を担い、同時に小売電気事業者として需給管理や余剰電力の域内融通などを行っている。

蓄電池の導入がもたらすメリットとは?

 豪雨災害の経験からレジリエンスの強化を目指す球磨村にとって、系統に依存しない自立分散電源である太陽光発電をフル活用し、自家消費率を向上させるために蓄電池をできる限り入れていくのは当然の流れだったという。事業者の立場からも、蓄電池の導入には大きなメリットがあると中嶋氏は話す。

 「球磨村森電力は電力供給事業も行っており、そこで供給する電力の一部は市場からの調達によって賄っています。九州エリアは日中であれば非常に安価に電力を調達できますが、それ以外の時間帯は相対的に高い価格で調達せざるを得ません。しかし、弊社がPPAスキームを使って設置した太陽光発電設備の余剰電力を蓄電池にためておき、それを朝晩に放電すれば市場価格が高い時間帯の調達電力量を減らせます。蓄電池を設置することで、太陽光発電の自家消費率を高めると同時に供給する電気の価格を抑えることも可能になるというわけです。これは弊社にとっても顧客にとっても、大きなメリットと言えるでしょう」(中嶋氏)

 実際、球磨村森電力は九州電力よりも安い電力プランを用意している。蓄電池の導入に当たっては同社が初期投資を行うわけだが、脱炭素先行地域のプロジェクトの一環として蓄電システムには手厚い補助金が付くこともあり、数年で投資を回収できる見込みだという。

拡張性の高いファーウェイ製蓄電池を採用

 このプロジェクトにおいて大きな役割を担う蓄電システムには、ファーウェイの製品が採用されている。今日までに運用が始まっているのは、全て同社の蓄電システム「LUNA2000」だ。LUNA2000は、蓄電容量が5kWh、10kWh、15kWhのモジュールを組み合わせることで容量を柔軟に拡張できる。球磨村では、それぞれの設置施設が蓄電容量15kWhの「LUNA2000-15-NHS0」を多数連携させ、大容量蓄電システムを構築している。製材関連施設に導入したシステムは、15kWhを10台つなげて150kWhの蓄電システムとして使用している。

球磨村の製材施設に導入したファーウェイ製蓄電池

 LUNA2000にはパワーオプティマイザーが内蔵されており、充放電を最適化できる。AI機能を搭載したハイブリッドパワーコンディショナー「SUN2000」と併せて設置することで、高効率で信頼性が高く、安全性に優れた自家消費型太陽光発電システムを構築できる。

 「村内にはさまざまな規模の施設があるので、幅広い対応が可能なLUNA2000には魅力を覚えます。コンパクトで薄型(幅670mm×高さ1320mm×奥行き150mm:LUNA2000-15-NHS0の場合)なので、既設の建物でも設置場所に大きな制約はありません。基本性能の高さとともにコストパフォーマンスに優れているところもファーウェイの製品を選んだ理由です」と中嶋氏は話す。さらに、「ある蓄電モジュールにトラブルが生じても他のモジュールは影響を受けることがないし、故障した部分は迅速に交換してくれるので損失を最小限に抑えられます」と同製品のメリットを語る。

 昨今の不安定な国際情勢の中にあっても「納期の遅れが一切なかった」と、ファーウェイの納品体制を評価する。補助金の関係もあり、年度ごとに緻密な導入計画を立てている同プロジェクトにとってこれは大きなポイントになったという。

容量200kWhの大型モデルも導入

 これからは、蓄電容量15kWhの小型システムであるLUNA2000-15-NHS0に加えて、蓄電容量200kWhの中型産業用蓄電池「LUNA2000-200KWH-2H1」も導入する方針だ。1号機の設置工事が進んでおり、2023年度内には運用が始まる予定だ。

設置したファーウェイの中型産業用蓄電池「LUNA2000-200KWH-2H1」

 15kWhシステムが単相であるのに対し、LUNA2000-200KWH-2H1は三相に対応する。そのため、三相電機機器である工作機械や大型モーター、ポンプ、業務用冷蔵庫、エレベーターなどを動かすことも容易だ。

 幅2150mm×高さ2100mm×奥行き950mmの筐体に12基のバッテリーパックが搭載されており、バッテリーパック単位での最適化を実現する。1基のバッテリーパックが故障しても他のバッテリーパックへの影響がなく、故障箇所の交換だけで済む。200kWhの大容量システムでありながら小型蓄電池の分散設置のようにリスクを分散できる。

 中嶋氏は200kWhモデルの導入理由について、「工場などの大型の設備があって電力需要の大きいところでは、200kWhの中型産業用蓄電池を入れた方が自家消費の効率を高めやすくなります。大型モデルの方がkWh当たりの蓄電池の単価が下がるというメリットもあります。ただし設置スペースの確保や基礎工事が必要で、発電設備が小規模でも低圧での連携ができなくなるなどのデメリットもあるのでケース・バイ・ケースで使い分けたいと考えています」と話す。ファーウェイの蓄電池ならば15kWhと200kWhモデルは遠隔制御の仕組みが共通であり、同じスマートロガーで管理できるので併用しても運用上の支障は一切ないという。

系統用蓄電池を活用した再エネ供給モデル構築へ

 今後は、導入した蓄電池を需給調整市場などのVPP関連市場と連携させ、収益性を高めていきたいという。蓄電池を制御する独自のシステム開発にも取り組んでおり、同社の事業にとって蓄電池の重要性は増すばかりだ。

 系統用蓄電池の導入についても検討しており、同じくファーウェイの2MWh大型蓄電システム「LUNA2000-2.0MWH-1H0/2H0」の採用を想定する。中嶋氏は、「球磨村に導入した太陽光発電などの余剰電力をこの蓄電池に蓄え、エリア全体の電力需要に合わせた再エネ供給モデルを構築したい」と話す。

 同時に、一般家庭への太陽光発電設備と蓄電池の導入を強化し、再エネ地産地消の裾野を広げたいと考えている。ここでは、5kWhから導入できる小型蓄電システムのメリットが改めて生きてくるだろう。

 蓄電池をさまざまな形で活用しようとする球磨村の取り組みが、脱炭素を目指す地域のモデルケースになることは間違いない。

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提供:華為技術日本株式会社
アイティメディア営業企画/制作:スマートジャパン 編集部/掲載内容有効期限:2023年12月26日