太陽光の「FIP転換+蓄電池併設」で収益アップ 注目のプロジェクトに採用された蓄電池とは?収益の向上率試算は40%以上!

全国に先駆けてFIP転換を実施して蓄電池を併設した太陽光発電所が鹿児島にある。そこでは、FIT時代よりも収益が42%もアップすると見込まれている。その鍵を握っているのがファーウェイの中規模産業用蓄電池「LUNA2000-200KWH-2H1」だ。

» 2024年05月16日 10時00分 公開
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 再エネ電源の市場統合を目指すFIP(Feed-in Premium)制度の開始により、太陽光発電ビジネスの在り方は着実に変わりつつある。太陽光発電所においても市場価格が高いときに売電できるシステムが求められるようになり、それに伴って蓄電池を併設する事業スキームへの注目も高まってきた。稼働中のFIT案件をFIPに移行する動きも出てきており、その実効性が問われ始めている。

 こうした状況下でいち早くFITからFIPに移行し、蓄電池を併設した九州の発電所が注目されている。同発電所のプロジェクトをけん引した大和エナジー・インフラ 再生可能エネルギー投資部 課長代理の渕上宗一郎氏と、CO2OSの代表取締役社長を務める小林直子氏および同社 営業統括部 柴田恭兵氏に同プロジェクトの背景と狙いを聞いた。

(左から)CO2OS 営業統括部 柴田恭兵氏、同社 代表取締役社長 小林直子氏、ファーウェイ・ジャパン デジタルパワー事業部 李吉順氏、大和エナジー・インフラ 渕上宗一郎氏

FITからFIPに移行し、蓄電池を後付け

 その発電所は、鹿児島県薩摩郡さつま町にある「さつまグリーン電力2号太陽光発電所」だ。2018年度にFIT認定を取得し、2022年7月に買い取り価格18円/kWhのFIT案件として運転を開始した。規模的にはAC出力450kW、DC出力555kWというよく見られる設備構成だが、2023年4月にFIPに移行したことで脚光を浴びた。運転中の発電所の認定をFITからFIPに切り替える“FIP転換”の先行事例になった格好だ。

 2024年2月には合計容量580.5kWhの蓄電池を後付けし、蓄電池併設型太陽光発電所として運用を開始した。多くの発電事業者が蓄電池の導入を検討している中で、同発電所の取り組みには全国から関心が寄せられている。

FIP転換と蓄電池の併設で注目を集める「さつまグリーン電力2号太陽光発電所」

 同発電所は、大和エナジー・インフラが立ち上げたSPC(特別目的会社)が発電事業者となり、CO2OSが設計・施工、運用・保守を行っている。そして東芝エネルギーシステムズがアグリゲーターとして蓄電池の充放電のコントロールと電力のバランシングを担っている。蓄電池にはファーウェイの中規模産業用蓄電システム「LUNA2000-200KWH-2H1」を採用した。

 FIP転換と蓄電池の併設は何が目的だったのか。

 「九州エリアという場所の特性上、事業計画の時点から出力制御が頻繁に実施されることが大きな課題だと感じていました。運転開始がFIP制度の始まった年でもあったので、運転開始から半年程度経過後にFIPに切り替えました。しかしFIPに切り替えたところで、出力制御の影響は依然として収益を圧迫する大きな要因であることは変わりません。この状況を打開して出力制御で失われる収益を取り戻すのに効果的な手法が蓄電池であると考え、導入を決めました。本事業では、経済産業省の再生可能エネルギー電源併設型蓄電池導入支援事業費補助金も活用しています」(渕上氏)

 太陽光発電と蓄電池を組み合わせれば日中に発電した電力を夕方や夜間に供給できるようになり、出力変動を抑えて再エネ電力をより有効に活用できる。FIP制度の下、蓄電池にためた電力を市場価格が高いときに売電することでより大きな収益を得ることができる。九州エリアでは日中の発電量が需要量を上回ることが多く、出力制御が頻繁に発生する。蓄電池を併設することでその影響を抑えつつ収益性も高められるというわけだ。

ファーウェイの産業用蓄電池が選ばれた理由とは?

 この発電所において、蓄電池の選定はどのような観点から行われたのか。CO2OSの小林氏は「信頼性」「安全性」「出力制御への対応」などを重視したとして、ファーウェイの蓄電池を採用した理由をこう話す。

 「これまでファーウェイの蓄電池を使ったことはなかったのですが、同社のパワーコンディショナーは自社で開発した発電所で多数採用してきました。当社がO&Mを受託している太陽光発電所は1GWほどあり、さまざまなメーカーのパワーコンディショナーを管理しています。その中で、ファーウェイ製品は故障が非常に少ないということを実感していました。各社の蓄電池を検討してみて、蓄電池についてもファーウェイ製品は信頼性が極めて高く、火災などのリスクも徹底的に抑えられた安全設計であることが分かりました。九州の発電所では特に重要な出力制御への対応に関しても優れたポテンシャルを有していることを評価し、導入を決めました」(小林氏)

 小林氏が話す「出力制御への対応」とは、九州電力送配電の指示通りに系統へ流す電力をコントロールすることだ。今回のケースの場合、太陽光パネルで発電した電力だけでなく蓄電池からの放電についても指示内容通りに制御する必要がある。

 今回のプロジェクトで大きな課題だったのが、蓄電池の併設に伴う電力会社との調整だ。CO2OSの柴田氏は「われわれだけでなく電力会社にとっても、『FIP制度に切り替えてさらに蓄電池を併設する』という太陽光発電所への対応のノウハウはまだ蓄積されていません。そのため今回のプロジェクトでは、発電所の設置エリアを管轄する九州電力送配電さまと設備の設計や仕様について何度も協議を重ねました。その中で出てきた要件の一つが『連系点逆潮流量が契約容量を超過した場合2秒以内に制御する』という難易度の高いもので、これに対応できる蓄電システムを構築する必要がありました」と話す。

 このような背景から、蓄電池の選定には制御指示に対する応答の速さや精度、遠隔からの制御に欠かせない通信機能の安定性なども重要な審査項目になった。

 採用されたファーウェイのLUNA2000-200KWH-2H1は、定格容量193.5kWhの中規模産業用蓄電池だ。さつまグリーン電力2号太陽光発電所はこれを3台導入し、合計580.5Kwhの蓄電システムとしている。同蓄電池は本体キャビネットに12基の電池パックを搭載しており、各電池パックはBMU(バッテリー・マネジメント・ユニット)を内蔵している。そのため充放電を電池パック単位で制御でき、充電率のばらつきや充放電ロスが抑えられるだけでなく故障時の影響を最小化することも可能だ。蓄電池併設型太陽光発電所にとって、それは大きなメリットと評価された。

ファーウェイの中型産業用蓄電池「LUNA2000-200KWH-2H1」

複合的な「安全設計」で火災リスクを低減

 大和エナジー・インフラの渕上氏は、同蓄電池を採用した背景として特に安全性の高さを評価したと話す。

 「2024年春に九州で発生した太陽光発電所の火災は、蓄電池も大きな要因だったと指摘されています。その事例では感電や爆発の恐れがあるため放水による消火活動ができず、鎮火には長い時間を要したそうです。発電事業者としては、こうしたリスクは絶対に避けたい。その点、ファーウェイの蓄電池には何重もの安全対策が講じられており、安心して導入できました」

 LUNA2000-200KWH-2H1は、「設備」「資産」「人身」という3つの観点からの安全設計により、蓄電システムの安全性を高いレベルに引き上げている。「設備」の安全設計としては4つの安全保護(セルレベルの監視、電池パックレベルでの分離設計、ラック単位でのバッテリーマネジメント管理、システム全体の統合管理)による多重構造のアクティブ切断と、瞬時の運転停止を実現。「資産」の安全設計としてはマルチ環境検出器、排気システム、火災抑制モジュールを装備する。セルから電池パック、システム全体まで、各レベルで安全管理を行うと同時に煙や高温を感知するセンサーなどによって火災の予兆を検知し、内蔵の消火システムが大事故になるのを防ぐ。

 「人身」の安全設計としてはセーフティー解放弁(爆発放散口)を上部に設け、設定された圧力になると破裂開口する仕組みを採用。爆発のリスクが高まると前方ではなく上部から圧力を解放することで人的被害を最小化する。筐体の板厚は2.5mm以上あり、正面扉には5カ所の扉ロックを設けるなど、安全へのこだわりが随所に見受けられる。

出力制御に悩む事業者にノウハウを提供

 CO2OSがまとめた売電収入シミュレーションによると、FIP転換のみの売電金額の増加率は約5%であるのに対し、「FIP転換+蓄電池」における増加率は約42%に達する。実際に蓄電池併設型として動き出してから数カ月が経過した現在、同発電所は狙い通りの成果を出しているのか。

 渕上氏は、「複数年をならしてみないと採算面などを適切に評価することはできませんが、蓄電池の充放電は想定通りに運用しています」と話す。売電金額の増加は電力の市場価格や出力制御率に依存するところが大きいが、蓄電池の設置による効果が圧倒的であることは間違いなさそうだ。

 渕上氏と小林氏は、今回のFIP転換と蓄電池の併設という新たなスキームがこれからの太陽光発電ビジネスをリードする重要な取り組みであると口をそろえ、今後の展望を次のように語る。

 「大和エナジー・インフラは、大和証券グループの自己投資部門における再エネ・インフラ投資専門会社として、太陽光発電所に1000億円を超える投資を実行しています。今回はAC出力450kWの太陽光発電所に580kWhほどの蓄電システムを併設するというものでしたが、そこには再エネを無駄にせず、しっかりと使い切るという大きな社会的意義があります。ここでの経験を生かして、今後は大規模な発電所にも同様のビジネスモデルを展開したいと考えています。そうした取り組みを通して、太陽光の安定電源化と日本の脱炭素化に貢献していければと願っています」(渕上氏)

 「さつまグリーン電力2号太陽光発電所と同じように、国内には出力制御の対応に苦慮している発電事業者が数多くあります。出力制御は九州エリアで顕著ですが、2023年ごろから中国・四国エリアでも抑制が増えつつあり、今後は全国的にも無視できない課題になると予想されます。CO2OSは、そうした課題を抱える事業者に蓄電池併設に関するさまざまなサポートを提供します。本件で得られるノウハウを活用し、お客さまのニーズに沿った幅広いサービスを展開します」(小林氏)

 市場統合が求められるこれからの太陽光発電事業にとって、電気の売り時をコントロールできる蓄電池の存在は欠かせない。ファーウェイの蓄電池を中核に据え、最先端の取り組みを進める両社に引き続き注目したい。

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