第37鉄 夏の青春18きっぷ旅(1)日本三大車窓とJR最高地点を訪ねる杉山淳一の+R Style(2/6 ページ)

» 2010年08月31日 11時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

ムーンライト信州と「青春18きっぷの基本テクニック」

 青春18きっぷは1枚で5回ぶんの利用ができる。昔は5枚綴りの冊子状のきっぷで、1枚ずつ切り取って使ったから、筆者はついつい「1枚目でどこへ行こう」と思ってしまうのだが、正しくは「1回目はどこに行こう」である。さて、夏の青春18きっぷの1回目は、涼を求めて信州へ向かった。日本三大車窓の1つを眺めて、JR最高地点を訪ねよう。

 今回は新宿駅23時54分発の「ムーンライト信州」で出発する。ここで1つ注意点を。最寄りのJR駅で改札に入るときに、青春18きっぷを出してはダメ。「ムーンライト信州」が発車して6分で0時を過ぎ、次の立川で有効期間が終わってしまうから。そこで、0時を過ぎてから最初に停車する駅、立川までのきっぷを買おう。例えば新宿から立川までなら450円で済む。立川を過ぎて翌日になってから青春18きっぷを使うというわけだ。車掌さんも心得ていて、車内検札で使うスタンプは、すでに翌日に設定されている。「ムーンライト信州」は普通列車の扱いだが、全席指定席だ。事前に指定席券(510円)も買っておく。

夜行快速「ムーンライト信州」で松本に到着

 普通列車とは言え、特急用の車両だ。座席はリクライニングシートで、背もたれを倒してくつろげる。ただし車内の照明は減光されないから、明るいと眠れない人は安眠マスクも用意すべし。しばらくはグループ客の談笑も続くので、耳栓もあったほうがいいかもしれない。ちなみに筆者はそんなものがなくてもコロッと寝てしまうタイプである。

 この「ムーンライト信州」は、中央本線の松本経由で大糸線の白馬まで行く快速列車だ。今回の目的地は篠ノ井線の姨捨駅だから、松本で乗り換えだ。到着時刻は04時32分。こんなに早い時刻になる理由は、登山客向けにダイヤを設定しているから。中央線夜行列車の伝統といえる。

ドラマ「白線流し」の舞台を行く松本電鉄

 篠ノ井線の始発列車は06時20分発で、約2時間の待ち時間がある。この時間を利用して松本電鉄を往復した。松本電鉄上高地線は松本駅と新島々(しんしましま)駅を結ぶ。営業距離は14.4km、所要時間は約30分。地元の生活の足として、また、マイカーが規制される上高地への乗り継ぎルートとして親しまれている。ローカル私鉄だから特急や急行の設定はないが、4月から11月までの観光シーズンは、早朝にノンストップの快速列車が走る。これは珍しいし、松本発は04時45分で「ムーンライト信州」からの接続にちょうどいい。

松本電鉄の快速列車に乗ってみた

 2両編成の白い電車は、京王電鉄井の頭線で活躍した車両だ。夜明け前に発車する電車にもかかわらず、座席は登山やハイキングへ向かう人々で埋まっていた。快速列車の所要時間は約23分。その短い間に、車窓は市街地、田園地帯、山麓へと変化する。市街地の風景はどこでも殺風景なものだ。しかし、この辺りは1996年から2005年にかけて、フジテレビ系列で放送されたドラマ『白線流し』のロケ地でもある。ドラマに思い入れのある人なら、築堤のそばの工場など見覚えのある建物をいくつか見つけられるだろう。

野麦峠へ向かって走る

 鉄道ファンなら、新村駅に留置されている5000系電車に注目したい。こちらは元東急電鉄の5000系電車で、渋谷のハチ公前に鎮座する車両の同型車である。すでに廃車となっているが、2両1編成が保存されている。鉄道記念日などのイベントで見学できるようだ。

元東急5000系を発見!

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