化石燃料をいっさい使わず太陽エネルギーだけで飛ぶソーラーインパルスの基本構造について、最初に簡単におさらいしておこう(前編はこちら)。
2009年に完成したソーラーインパルスのプロトタイプ機“HB-SIA”には、基礎部分にカーボンファイバー(炭素繊維)複合材料が使用された。機体重量は乗用車1台分と同じわずか1600キロ。しかし両翼の端から端までの長さは63.4メートルある。これはエアバスの大型機A340と同サイズだ。その大きな主翼に設置した1万2000個の薄型ソーラーパネルで太陽エネルギーを吸収し、4つのモーターに最大10馬力の電力として供給する。昼間の飛行で充電したエネルギーは400キロのリチウム・ポリマー電池に蓄積し、その電力を利用することで夜間フライトも可能に。推進システム全体の効率を最大限に高めた結果、スクーター並みの馬力で飛ぶことを実現した。
具体的な飛行方法としては、前日までに充電した電力で夜が明けると同時に離陸し、太陽光で電池をチャージしながら高度8500メートル程度まで上昇。充電を続けつつ、滑空状態で巡航飛行する。日没後はゆるやかに高度を落とし、地上1000メートルまできたら昼間蓄えたエネルギーを使ってプロペラを回転させ、最低限の高度を保つ。
2010年7月。スイス西部のフリブール地方を舞台に、最終目標である世界一周に向けての大きな一歩となる“24時間連続飛行”に挑戦し、成功させた。これを繰り返すことで、文字通りの“永久飛行”が可能となる。今回私がインタビューしたのは、同プロジェクトを先頭に立って率いてきた2人──スイス人の冒険家であり、精神科医でもあるベルトラン・ピカール氏(53)と、エンジニア出身でスイス空軍戦闘機や旅客機のパイロットとしても活躍してきたアンドレ・ボルシュベルグ氏(57)だ。
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