JALキャビンアテンダントの緊急保安訓練に潜入した大人の社会見学(1/3 ページ)

» 2012年12月19日 08時00分 公開
[吉村哲樹,Business Media 誠]

 今も昔も、華やかな職業の代表格といえば、何といっても航空会社のキャビンアテンダント(CA)だろう。しかし、その華やかなイメージとは裏腹に、仕事内容がかなりハードで、普段から厳しい訓練が課せられることはあまり知られていない。

 筆者のようなオジサン世代にとっては、テレビドラマ『スチュワーデス物語』の名台詞「ドジでのろまな亀〜」が真っ先に思い浮かぶところだが、果たしてドラマで描かれているような体育会系の厳しい訓練は、本当に行われているのだろうか?

 実際の訓練の模様が外部に公開されることはめったにないそうだが、今回、日本航空(JAL)のCAによる地上訓練を取材できたのでレポートしよう。

新人CAは全課題をクリアしないと制服が支給されない

 JALのCAが行う地上訓練には、おおまかに「一般知識」「緊急保安」「サービス」「機内英会話」の4種類。今回、見学できたのは「緊急保安」訓練だ。

 飛行機の一般利用者の目から見ると、CAの主な仕事は機内サービスの提供だと思ってしまうのだが、実は緊急時の「航空保安要員」という重要なミッションも担っている。緊急保安訓練は、このミッションをいざというときに確実にこなせるよう、すべてのCAに課せられるものだ。

 JALのCAの緊急保安訓練は、都内某所にあるJALの訓練専用施設を使って行われる(具体的な場所は、もろもろの事情により明かすことができない)。施設内には、さまざまな機体の一部を模した訓練設備がずらりと並んでいる。

 JALの担当者によると、新人CAは新人研修中にここで集中的に訓練を受け、カリキュラムのすべての課題をクリアするまでは制服を支給されないのだそうだ。また、一度現場に配属されたCAも年に1回、必ずこの施設で緊急保安訓練を受けることが義務付けられており、これをクリアできなければやはり翌日からのフライトが許されない。

JALJALJAL

CAは乗務する機体ごとに専門訓練を受ける

 普段実際に訓練の指導に当たっている教官が、各種施設や訓練内容を案内してくれた。さまざまな設備が並ぶ中、ひときわ目立つのがジャンボ機の胴体の一部を丸々摸したシミュレーション設備。客室通路が2本ある大型機・中型機用の訓練は、この設備を使って行われる。

JAL ジャンボの胴体部分を模した大型機・中型機用訓練設備

 緊急脱出用スライド(空気で膨らむ滑り台)が地上まで伸びており、これを使って脱出訓練が行われる。またこの型式の機体では、スライドがそのまま緊急着水時の救命ラフト(ボート)にもなる。

 このほか、客室通路が1本の小型機の胴体を模した訓練設備もある。また、異なる機体型式ごとにドア周辺部分だけを切り取ったような小型の訓練設備をいくつも用意している。これは「ドアトレーナー」と呼ばれる訓練設備で、CAは自身が乗務資格を持つ機体の型式ごとに、これらの施設を使って個別の訓練を受ける。

JALJALJAL (左)ボーイング737用ドアトレーナー(中)ボーイング767用ドアトレーナー(右)最新鋭のボーイング787用ドアトレーナーも当然用意されている
JAL 訓練設備の内部。普段目にする実機の機内と変わらない

 ジャンボ機のシミュレーション設備の内部は、ほぼ完全に実物の機内と同じ造りになっており、さまざまな緊急事態のシチュエーションを想定した避難誘導訓練が行われる。

 新人研修時には、訓練生1人ずつにシチュエーションと担当ドアが与えられ、教官がマンツーマンで付き、避難誘導手順をきちんと実行できるかを指導・審査する。訓練のシチュエーションによっては、照明を落として機内を真っ暗にしたり、煙を発生させたりと、実際の場面をリアルに再現するのだ。

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