JALキャビンアテンダントの緊急保安訓練に潜入した大人の社会見学(2/3 ページ)

» 2012年12月19日 08時00分 公開
[吉村哲樹,Business Media 誠]

実際に地上脱出訓練を体験

 今回は、地上脱出と水上脱出という2つの訓練シナリオで、乗客役を体験した。まずは、離陸を途中で中断し、地上に脱出するというシナリオの訓練。ちなみに教官の皆さん、訓練用のつなぎを着てはいるものの、いかにもCAらしく上品な佇まいだ。

 だが、機体のトラブルが検知された瞬間、突然2人の教官がびっくりするぐらいの大声で「頭を下げて! Heads down!」「大丈夫、落ち着いて! Stay calm!」と繰り返し叫び始める。突然張り詰めた声色で一斉に叫び始めるものだから、こちらは本当に「ビクッ」となる。

 新人訓練生の多くは、ここまでの大声が出せないそうだ。従って訓練期間中には、ちゅうちょなく大声を出せるようにするための「シャウティング」トレーニングをみっちり積むのだという。

 続いてドアを開け、乗客を緊急脱出用スライドに誘導して脱出させる。スライドで滑り降りてみると、思ったより勾配が急でスピードが出る。これでも訓練用に少し傾斜をなだらかに設定しているそうだ。本当の緊急事態時には、機体の着地状態によってはこのスライドの勾配は変わってくるらしい。

JALJALJAL 地上脱出訓練のようす。当たり前だけど、メディアがいるからといってCAさんの素敵な笑顔は一切ない

海上脱出訓練はプールも使う

JAL 衝撃防止姿勢のお手本

 次は、エンジントラブルで海上に着水した場面を想定した水上脱出訓練。トラブルが発生してから着水するまでの限られた時間内に、いかに迅速かつ的確に乗客に指示を出し、救命胴衣を身に着けさせ、そして着水に備える体勢を取らせることができるかが訓練のポイントだ。

 機内のスクリーンに、着水までの残り時間が刻一刻と表示される中、2人の教官が乗客に大声で衝撃防止姿勢の指示を日本語と英語の両方で出す。続いて、救命胴衣の着用方法のレクチャーと着用指示を出す。

 この訓練でも、教官の普段の柔らかい物腰と訓練中の張り詰めた大声とのギャップが切迫した緊張感をかもし出す。そして、再び「頭を下げて! Heads down!」「大丈夫、落ち着いて! Stay calm!」。

 先ほどの地上脱出で使ったのとは反対側のドアを開けると、そこには海上脱出訓練用のプールが広がっている。「急いで! Hurry!」「荷物を置いて! No baggage!」という教官の叫び声と誘導に従って、乗客役が次々とプールに浮かんだ避難用ボートに乗り移っていく。

JALJALJAL 通常フライト前にも救命胴衣のレクチャーはあるけど、緊急時の緊張感はまったく別物だ

 この訓練用のプールはかなり広く、最終的にはボートと機体をつなぐロープを切り離すところまで訓練できるようになっている。このほか、機体の翼部分に脱出し、そこから救命ボートを水上に落として乗り移るなど、ありとあらゆる場面を想定したトレーニングが行われる。

JALJAL 海上脱出訓練用のプールに救命ボートを浮かべて脱出完了

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