エンジと白に塗り分けられた歴史ある木造列車は、標高328メートルのキュランダ駅をめざしてゆっくりと力強く登っていく。私たちの乗っている車両は2006年6月からサービスが開始された「ゴールドクラス」だ。特別仕様のこの車両は、深みのあるヘリテージグリーンの外観と真ちゅうのプレートが特徴で、キャビンにはビクトリア調のソファシートが配置されている。くつろいだ雰囲気の中で、スパークリングワインや冷えたビールと軽食を味わいながら眺める雄大な自然。ちょっと贅沢することで旅の思い出がさらに深まると考え、私たちはこのクラスを予約した。
列車は途中、サトウキビ畑を抜け、いくつものトンネルを通過してゆく。世界遺産に指定されている熱帯雨林やストーニークリークの滝、バロン渓谷などの絶景ポイントにさしかかると、車内に英語で説明が流れた。バロン滝駅では10分間ほど停車し、展望台にもなっているプラットフォームからカメラを向けている観光客も多い。水かさが増す雨期には、岩に叩きつけられる水しぶきが駅にまで届き、迫力十分だ。
「すみません、シャッターを押していただけますか?」
英語のみならず、さまざまな言語で乗客同士のそんなやりとりが飛び交っている。若者から年配の人まで、やはりカップルが多い。バロン滝駅での休憩を終えて再び走り始めた列車は、午前10時25分に終点のキュランダ駅に到着した。トロピカルな環境に囲まれた駅舎の前で、再びカメラを取り出す人々。ここはおそらく、世界で最も写真に撮られることの多い鉄道駅であるに違いない。
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