時計遺産としてのパイロットウオッチLONGINES HERITAGE COLLECTION(1/2 ページ)

» 2013年12月24日 12時00分 公開
[篠田哲生,Business Media 誠]

著者プロフィール:篠田哲生(しのだ・てつお)

1975年生まれ。時計ライター。講談社『ホット ドッグ・プレス』を経て、フリーランスに。時計学校を修了した実践派で、時計専門誌からファッション誌、Webなど幅広い媒体で時計記事を執筆。高級時計からカジュアルウォッチまでを守備範囲とし、カジュアルウォッチの検索サイト『Gressive Off Style』のディレクションも担当。著書に『成功者はなぜウブロの時計に惹かれるのか。』(幻冬舎)がある。


 さまさまなテクノロジーが発展した1920年代。腕時計を大きく進化させたのは、時代をほぼ同じくして生まれた航空機だった。だからこそパイロットウオッチには特別な魅力が宿っている。

世界が発展し、時計が進化する

longines 『ロンジン アビゲーション オーバーサイズ』/1920年代に作られたパイロットウオッチのスタイルを踏襲したスモールセコンドモデル。ゴールド針が生み出す柔らかな印象が、ヴィンテージの雰囲気をさらに引き立てる。自動巻き、ステンレススチールケース、ケース径41ミリ。27万3000円

 時計の進化の歴史は、他のテクノロジーの進化と無縁ではいられない。例えば、装飾品でしかなかった懐中時計が視認性や携帯性にこだわり始めたのは、産業革命以降に工場で生産管理を行う必要が増えたことが一因。厳しい精度を追求し始めたのは、鉄道の開通によって正確なダイヤ運営が必要になったから。

 簡易潜水器具であるアクアラングが完成し、スキューバダイビングができるようになるとダイバーズウオッチが生まれ、「統一されたルールの下、他者と競い合う」という考え方が定着した近代オリンピック以降は、試合の正確さを高めるためにタイムを計測するクロノグラフが生まれている。

 中でも航空機の進化が、時計に与えた影響は大きい。黎明期の航空機は、性能も低く航行距離も長くはなかった上に、墜落すれば命の保証はない危険極まりない乗り物だった。それでも多くの冒険家や発明家たちは大空を目指した。

 その際に時計は、燃料や速度の計算をする上で必須の機器だった。懐中時計が主流だったが、両腕で操縦桿を握ると胸ポケットから時計が取り出せないので、懐中時計を腕にくくりつけた。これがやがてパイロットウオッチへと繋がっていく。

 パイロットウオッチに求められる要素は、操縦中のパイロットをサポートする計器であるということ。視認性や操作性、装着感に優れており、何よりもタフでなければならない。それらの要素は腕時計に求められる普遍的な価値でもある。パイロットウオッチはいつしか、腕時計界のベンチマークとなっていく。

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