午後0時43分。滑走路に向かって地上走行(タキシング)が始まった。使用するのは、羽田の再国際化にともない新設されたD滑走路。A350が進む左手を、ひと足先にデビューしたボーイングの次世代機787が横切っていく光景が印象的だった。
管制からの離陸許可を待ちながら、滑走路先端に10分ほど待機。背中に伝わってきた強烈な加速パワーで、離陸滑走が始まったことを知る。1時6分。身体に感じていた振動がふっと途絶え、車輪の回転音が消滅した。離陸の瞬間だ。機体のノーズがぐいっと持ち上がり、82名の乗客を乗せたA350は上昇を続けていく。その様子を、私のよき取材パートナーである航空写真家のチャーリィ古庄氏が地上で撮影してくれた。
「どう? 静かでしょう」
エコノミークラスのキャビン前方に設置された各種モニター機器でフライトデータのチェックを行っていたエアバスのエンジニアが、そう言って笑みを浮かべる。本当にそうだ。私の席は「24A」――主翼のほぼ真上の窓側、エンジンに最も近い場所だったが、音がまったく気にならない。機体やエンジンから発せられる旅客機特有の騒音レベルは、明らかに軽減されている。これも、ノイズを抑えた新開発のロールスロイス製エンジン「トレントXWB」や、空力特性を改善させるため稼働翼(フラップなど)の作動法を見直して鳥の羽に近い形状を取り入れた新しい設計手法の成果なのだろう。
「スペインで実施してきた騒音テストでは、ICAO(国際民間航空機関)の騒音規制チャプター4を21デシベル下回る結果になりました」
エアバスのA350XWBマーケティングディレクター、マイク・バウザー氏は、フライト後の会見でそう言って胸を張った。チャプター4といえば、100席クラスの小型機の騒音レベル。300人超を乗せて飛ぶ旅客機がそれよりもはるかに静かなのには、正直驚いた。JALは東京オリンピックを控えた2019年からA350の運航を開始するが、羽田の発着枠拡大にともなう騒音問題の解決に、この最新機種は一役買うことになるかもしれない。
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