レトロな航空機「ユンカース Ju52」でフランクフルト上空を散策:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(4/4 ページ)
今回のドイツ渡航は、ルフトハンザの“新”と“旧”の取り組みに触れることが目的だった。バイオ燃料フライトを体験した私たちは、続いて同社が維持・保管する伝説の名機「ユンカースJu52」のフライト取材に向かう。
大切な家族のような存在
キャビンクルーの手を借りて機内に乗り込み、豪華な革張り仕様のシートに着くと、間もなくエンジンの振動が響いてきた。主翼のプロペラが音を立てて回転しているのが窓から見える。意外に静かだ。Ju52はゆっくりと滑走を開始し、11時7分にエーゲルスバッハ飛行場を離陸した。ターミナル1階のカフェのテラス席から大きく手を振っている人たちが見える。
フライト時間は約30分間で、料金は1人199ユーロ(約2万500円=2011年10月現在)。フランクフルト近郊の上空をぐるっと1周して戻るのだが、景色を楽しむというより、Ju52でのフライトそのものに酔いしれている人が圧倒的に多い。この遊覧飛行の実施期間は、毎年4月の初めから10月の終わりまで。運航は毎日だが、月に3回、機体のメンテナンスデーを設けているという。
「観光シーズンでどんなに予約が殺到しても、ひと月に3日だけは羽を休ませます。少しでも長く活躍してもらうために、運航乗務員もメカニックも、社員たちはJu52をみんな家族のように大切に扱っています」
再びエーゲルスバッハ飛行場に降り立った私を出迎えてくれたシュタインさんは、そう言ってコクピットを指さした。見上げると、キャプテン自らがコクピットの窓をあけ、雑巾で窓ガラスを拭いている。その様子を写真に撮ろうとすると、彼は「こんなシーンを撮らないでくれよ」と言いながら、笑顔で小さなポーズをとってくれた。
著者プロフィール:秋本俊二
作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各メディアにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動。
著書に『ボーイング777機長まるごと体験』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』『もっと知りたい旅客機の疑問50』『みんなが知りたい空港の疑問50』『エアバスA380まるごと解説』(以上ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)、『新いますぐ飛行機に乗りたくなる本』(NNA)など。
Blog『雲の上の書斎から』は多くの旅行ファン、航空ファンのほかエアライン関係者やマスコミ関係者にも支持を集めている。
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