ドイツが威信をかけて育てた、スマート「エレクトリック・ドライブ」:試乗インプレッション(5/5 ページ)
環境先進国にして自動車大国のイメージが強いドイツ。かつて実施したEV補助金政策の失敗を基に、開発力向上へと舵を切った。その成果が3代目「スマートED」である。
スマート「eバイク」でラストワンマイルを提案
もうひとつ面白いのは、最後の「ワンマイル」の移動の提案だ。町中で目的地の近くにクルマを止められない場合に備えて、スマート「eバイク」を搭載するというものだ。
スマート・ブランドらしい遊び心と思うと、存外、そうでもない。実際、ローマの町中を走る40%のクルマが駐車場を探して走っているというし、パリやロンドンで待ち合わせをすれば必ず駐車場が見つからなくて遅刻する人がいる。そうした道路環境を鑑みたうえでの真面目な提案なのだ。
すべてを俯瞰して見れば、単なる新型EVの発売ではなく、自動車大国の威信をかけたドイツの国家プロジェクトの一環であり、ドイツがEVの分野でもリーダーとなるべく動き出したことが分かるだろう。実際、ドイツ連邦政府はEV関連の開発に10億ユーロの予算を設置して、2020年までに100万台を普及させる方針を打ち出している。
もちろん、グローバルで販売される予定で、日本にも年内に上陸する予定だ。日本では補助金の交付に配慮して電池込みで295万円の販売形態をとるが、電池に6年間の保証が付き、12万9000円で71カ月のメインテナンスが受けられるプログラムが用意される。まだ補助金額は決定していないが、これまでの事例から予測するに200万円前後で購入できる可能性が高い。
和製EVと比べて性能面が突出しているわけではないが、手頃な価格で手に入り、メルセデス・ベンツが保証するメンテナンスプログラムやサポート体制があり、EVに適した車載ITが備わり、デザイン性も高いとなれば、ユーザーにとって積極的にEVを選ぶメリットが生まれる。EV普及への近道は、案外そんなところにあるのかもしれない。
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