活況“電アシ”自転車市場、次の一手──ヤマハの新「スポーティPAS」に乗ってみた:目指すは「ファミリー全員PAS」(3/3 ページ)
「電動アシスト自転車」が好調だ。市場拡大をにらみ、メーカーは従来のママチャリタイプ以外のラインアップ拡充や施策も積極的にアピールし始めている。その活動の一環となる車種「スポーティPAS」に乗ってみた。
「スポーティPAS」試乗してみた
ペダルをこぐ脚力をモーターの動力で後押しするのが電動アシスト自転車だ──とは分かっていると思う。ただ、実は“電アシ”未体験な人は多いのではないか。PASと言えばこれまでママチャリスタイルが多かったので、自分用として購入する意識が向かなかったこともあるだろう。
「このため、まずはPASを体験していただきたいです。販売店の試乗車のほか、試乗イベントなどもより多く実施していきたいと思います」(ヤマハ発動機PAS営業企画グループの石井謙司グループリーダー)。この活動の一環となる、7月16日に行われたプレス向け試乗会に参加してみた。
あ、普通──。街で見かける小径、ロングホイールベース+低重心で前後にチャイルドシートのある“ママPAS”モデルのなるほどと思えるスタイリングや機能性には毎度驚かされるが、VIENTA5とBrace XLは、自分用として意識できるデザイン性やカジュアルさが自然にある。
確かにペダル付近には、“ならでは”のアシスト機構部品とバッテリーがある。ただ、PAS 21年目の進化が伺えるモジュールの小型化、そしてカラーリングの仕方などによるのか、さほど目立たず車体デザインにうまく溶け込んでいる。「でも、重いんでしょ」。いや。またがると、座位置も視界も、重さもこれまで体感した自転車の意識と変わらない。
ペダルをクッと。うほほ。これまでの「このくらいの力でこぐと、このくらい進む」という意識以上に加速する。上体が持っていかれるほどの加速感は、なるほど初体験だ。アシストの強さはペダルを踏む力に応じて自動調整される。走り出し、加速時、上り坂など、フンと力を入れると同時にフッとペダルの抵抗が減り、そのまま加速する。
道がすべて平らになったような、というか、オートマチック車でキックダウン(アクセルを大きくふむと、低速ギアに自動で切り替わる機能)してくれたような感覚だ。VIENTA5はマニュアルの5段変速機もあるが、普段は4速か5速固定で十分。オートマチックっぽい感覚で使えるのが、特に街乗りに向いている。
「こちらは、車速、ペダルをふむ力、ペダリング速度のそれぞれを感知する“トリプルセンサーシステム”の効果です。PAS 21年目の進化として、瞬時に、かつ繊細に走行状況と乗り手の動きを把握し、なめらかで快適なアシスト走行を実現できるようになりました。PASシリーズの2014年モデルは、全機種このトリプルセンサーシステムに置き換わっています」(ヤマハ発動機石井氏)
ちなみに変速機は内装型。停止時も切り替えられるのが使いやすいポイントだ。信号で止まってから、カチカチとゆっくり5速→3速あたりへ。絶対的な機能に差はあると思うが、走行していないと切り替えられない本格的な外装型変速機に対するメリットだ。街乗りプラスαのシーンを想定するので「こういったカジュアルさのための機能は、あえて積極的に実装した」(ヤマハ発動機石井氏)という。
VIENTA5は12万9060円(税抜、以下同)から、Brace XLは16万3080円から。「1万円ほどの自転車もある」「原付が買えてしまう値段だ」確かにそうかもしれない。ただ、自転車としては「疲れない」(炎天下の上り坂でさえ、逆に感じる風が心地よいほど)という大きな魅力があり、バイクに対しては「免許や維持費、街乗りの手軽さ」など、自転車ゆえのメリットに価値を見いだせる。いま自転車を買おうと計画しているならば、販売店やイベントなどで電動アシストを一度体験することを勧めたい。「疲れない」快適性は、ちょっと高額と知りつつ、一度乗ると迷わせる魅力がある。
電動アシスト自転車は、ビジネスシーンで使うことも想定できる。自転車通勤するシーンに加え、いわゆる社用車とするのもよさそうだ。
都市部の移動は公共交通網やタクシーなど手段こそあれど、直線距離では近いのに乗り換え+大回りで移動時間がかかる場合、渋滞している場合、タクシーに乗る距離ではないが歩くと坂道でかなり遠い場合、など不便なこともある。社用車としてのルール策定や安全性など会社が考慮すべき課題はいくつかあるが、すでに社用車を運用している企業ならばその条件はさほど変わらないと想定する。
「実は、運送業や保守業務などの業種などから“法人向けPAS”の需要もじわじわ広がっています。車両とメンテナンス、各種保険をセットにした法人向けPASリースシステム“パスクル”もあるので、社員の移動手段のサポートや経費削減を計画する会社さんにもぜひ検討してもらいたいですね」(ヤマハ発動機石井氏)
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