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2004/03/22 00:00 更新

製品開発のプロジェクトマネジメント
第3回 DSMの読み取り方

業務プロセスをDSM(Design Structure Matrix)で記述することにより、そこに潜む「繰り返し」の存在が明らかになる。今回は、その読み取り方について説明する。

宿題の答え

 まずは前回最後の質問に答えることから始めたい。質問は次のようなものであった。

 「“夕食準備”と“旅行計画”の業務プロセスの違いは、旅行計画のプロセスが繰り返しを含む点にある。この違いは、それぞれのプロセスをDSMで表現した図1と図2において、どのような点に現れているだろうか?」

 その答えは、「図2には対角線の右上に『×』があるが、図1にはない」という点である。図2の青枠部はタスク4,5,6がタスク3に依存していることを示し、また赤枠部は逆にタスク3がタスク4,5,6に依存していることを示している(前回参照)。つまり赤枠部にある右上の×印がこれらのタスクの「相互依存性」を示しており、従ってこのプロセスは「繰り返し」を伴うことが明らかになるのである。なお、タスク2とタスク5、6の関係も同様である。

図1

再掲・図1「夕食準備プロセスのDSM」

図2

再掲・図2「旅行計画プロセスのDSM」

プロセスのパターンとDSM

 ここまではタスク間の相互依存的な関係を中心に見てきた。一般的に、2つのタスク間の関係は次の3パターンに分類できる。

 1つめは、一方のタスクが他方のタスクのアウトプットを必要とする場合である。この時2つのタスクは従属の関係にあり、タスクは順に実施されることになる。2つめは、両方とも相手のアウトプットを必要としない場合である。この時2つのタスクは独立の関係にあり、タスクを並行して実施することができる。そして3つめは両方が互いのアウトプットを必要とする場合である。これが相互依存的な関係であり、2つのタスクは繰り返されながら進められることになる。

 以上を整理すると、図3のようになる。

図3

図3:タスク間の関係とDSMの表記(クリックで拡大表示)

もう1つの“右上×印”

 図4は、図1から3つのタスクだけを抜き出し、右上に1つ×印を追加したものである。実は、このDSMは“右上×印”を含むが上記のパターン3には該当しない。では、この右上×印は一体何を表しているのだろうか?

 それは、「魚を焼いたところうっかり焦がしてしまったので再び食材を買いに行かなければならなくなった」という「やり直し」を表しているのである。

 この「やり直し」は、旅行計画プロセスでタスクが繰り返されていたこととは意味がまったく異なる。旅行計画ではタスクに相互依存性があるため、ある程度の繰り返しが発生することは事前に分かっていた。一方、図4が示す夕食準備プロセスでの繰り返しは、「魚を焼く」タスクに失敗した結果として、意図せずに不本意ながら発生してしまったのである。

 このように右上×印が表現する「繰り返し」は大きく2つに分類され、前者を「計画的な繰り返し」、後者を「計画外の繰り返し」と呼んでいる。そして、ここまでの例から分かるように、計画的な繰り返しは効率的に進めることが求められ、計画外の繰り返しは回避することが求められるのである。

図4

図4:「夕食を準備する」プロセスにおける右上×印

DSMが可視化する繰り返し作業

 このように、DSMにより業務プロセスを表現すると、プロセスに内在する繰り返し作業が可視化され、その改善策に関する洞察を得ることができる。その時にポイントとなるのは対角線よりも右上に記入された×印であり、それが何を表しているのか注意深く見極めることが肝要である。

ポイント

  • 業務プロセスをDSMで表記することにより、タスク間の相互依存性や繰り返しの可能性が明らかになる。
  • DSMの中で対角線より右上に記入された印は、「計画的な繰り返し」または「計画外の繰り返し」を示唆している。
  • 「計画的な繰り返し」は効率化を図り「計画外の繰り返し」は回避することで業務プロセスを改善することができる。

 これまで、DSMによるプロセスの表記方法や読み取り方を説明してきた。さらにDSMでは、それを操作することによって、プロセスをより最適な形に変えることが可能である。次回は、DSMで表記されたプロセスを最適化するための方法について説明する。

関連リンク
▼米マサチューセッツ工科大学(MIT)
▼Problematics
関連記事
▼第2回:DSMによる業務プロセスの記述
▼第1回:従来の方法による業務プロセスの記述
▼連載開始にあたって

iTiDコンサルティング
2001年、電通国際情報サービスと米ITIの合弁会社として設立。 両社の特長を受け継ぎ、「製品開発の“品質”にフォーカスをあて、その抜本的な改革を支援する」ことを事業コンセプトに、わが国初の開発生産性定量指標『iTiD INDEX』の開発や独自の『ワークストリーム』の導入など、独創的な手法で製品開発プロセスの抜本的な改革を支援している。

著者

水上博之
電通国際情報サービスでCAD/CAM/CAEシステムの導入支援などに従事した後、2001年より現職。主にメカニカルエンジニアリング領域における設計業務改革のコンサルティング活動に携わっている。

[水上博之,iTiDコンサルティング]

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