コラム
2004/03/30 00:00 更新
ITソリューションフロンティア:特集:流通システムの新しい動向
小売業が求める次世代システムとは (1/3)
小売業ではいま、熾烈な競争のなかで、各社ともマーチャンダイジング(MD)業務の差別化・効率化を図るため、日々、不断の努力を続けている。本稿では、このMD業務を陰で支えるシステムには何が求められるか、また、どの部分に重点的に投資していくべきなのか、今後のシステム化の方向性について考察する。
小売業を取り巻く状況
消費の低迷が叫ばれるようになって久しい。しかしそのなかで、「勝ち組」と呼ばれる小売企業は、積極的な出店や新たな業種・業態への挑戦など、攻めの姿勢を打ち出している。また、ウォルマート社やカルフール社など海外の小売業が、新規出店や業務提携を通じて日本への進出を強めている。さらに総合スーパー(GMS)の食品部門強化、ドラッグストアの食品販売進出、得意分野で勝負するカテゴリーキラーの登場など、日本の小売業は今後もさまざまな競争相手と戦っていかなければならない。さらに、24時間営業や食品のトレーサビリティー(食品の安全を確保するための栽培・飼育から加工・製造、流通に至る過程を透明にする仕組み)への対応など、消費者の新たなニーズにも柔軟に応えていくことが求められている。
従来のシステムが抱える問題点
小売業の基幹業務であるMD業務を支えているのは、「商品マスター管理」「受発注」「仕入・検品」といったシステムである。しかしこれらのシステム投資に対して、これまで十分な効果を得られていない場合があると思われる。業務改善に応じてシステム機能が追加され、仕様が変更されるたびに、場当たり的に継ぎ当てを重ねている。その結果、システムが肥大化・複雑化(いわゆるスパゲッティ状態)しているため、システム保守の作業効率が悪く、根本的な変更が困難となってしまっている。このような状態では、システムの維持管理コストを抑えることも難しい。
このようにシステムが問題を抱えたままになっている背景には、2000年問題への対応でシステム投資を抑える必要があり、大がかりな基幹業務のシステムを再構築できなかったことなどがあげられる。さらに現在、インフラの老朽化やOS(基本ソフト)のメーカーサポート切れなど、ハードウェア、ソフトウェアの老朽化への対応も急務となっている。そのため、これまで稼動してきたシステムの現状を把握し、これからやっていきたいこととのギャップを整理した上で、今後求められていくシステムとはどういったものかを早急に検討しなくてはならない(図1参照)。

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[渋谷斎,野村総合研究所]
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