コラム
2004/03/30 00:00 更新
ITソリューションフロンティア:特集:流通システムの新しい動向
小売業が求める次世代システムとは (3/3)
今後のシステムを支える最新IT
前節の3つの要件を踏まえ、今後のシステムで採用すべきITについて解説する。
(1)オープンソース・オープンプラットフォームの利用
前節で述べた柔軟性、スピード、ローコストという要件を実現するためには、オープンソース(無償のソースコード公開ソフトウェア)、オープンプラットフォーム(特定のメーカーや機器に依存しないソフトウェア)を積極的に採用すべきである。
なぜなら、オブジェクト指向言語であるJavaは、一度開発したソフトウェアを再利用することも可能であり、ソフトウェアの長寿命化を図ることができるからである。また、Javaを採用した世界的に有名なオープンソースのプロジェクトも存在している。無償ながら品質の高いソフトウェアや開発フレームワークを利用することができ、開発のスピードアップにもつながる。プラットフォームに依存しない、オープンなプログラム言語であるJavaを開発言語とすることは、現在のシステム構築の標準となりつつある。
このほか、OS(基本ソフト)のLinuxをはじめ、オープンソース製品は市販製品と比べて遜色のない機能・性能をもつようになってきており、実際にさまざまな分野のシステム構築で利用され始めている。今後は、このオープンソース、オープンプラットフォームを積極的に採用したシステム構成をとり入れるべきである。
(2)高い拡張性を実現するシステム構成
小売業に求められるビジネス形態およびサービスはつねに変化を続けている。システム構築時には最適なシステムを構築できたとしても、ビジネスの規模およびサービスの質の変化に柔軟に対応できるシステム構成になっていないと、変更のたびに莫大な工数がかかってしまうことになる。
最近ではCPU(中央演算処理ユニット)の性能も上がり、メモリー(主記憶装置)も低価格となっている。進化も速く安価なPCサーバーを、必要に応じて追加することで、UNIXのような高価なサーバーと同等の性能を実現することも可能である。今後はこのようなシステム構成が、変化に柔軟に対応するために有効となる。
(3)センター集中型のシステム構造
近年、ブロードバンドの普及が加速してきており、従来では考えることができなかったシステム構成を実現する基盤が整いつつある。これまでのシステムでは、必ず各拠点ごとにさまざまな処理を行うサーバー群を設置していた。すなわち、本部システムと店舗システムといった2つの異なるシステムが存在し、同じようなアプリケーションとデータ処理機能が各々のシステムに実装されていた。そのため、アプリケーションに仕様変更があると2つのシステムに修正が必要となり、対応すべき工数が多くなってしまう。また、各システムで作られたデータの同期をとる処理の頻度も高いため、システム障害の際にデータの不整合が発生してしまうケースが多くみられる。今後は、本部と店舗といったシステムの違いをなくし、データもアプリケーションも共有することが必要である。
そのためには、各店舗にはサーバーを置かずクライアントPCだけを設置し、本部(センター)側にのみ全店舗処理を行えるサーバーを設置して、センターと店舗を多重化されたブロードバンドで常時接続する構成で運用できることが理想である(図3参照)。これによりシステム構造が簡素化され、店舗のハードウェアコストを削減できることが最大のメリットと言える。さらに、システム保守・管理が容易になるだけでなく、本部と店舗間のリアルタイムの情報共有が可能となる。

(クリックで拡大表示)
今後のあるべきシステムの方向性
NRI(野村総合研究所)は、最新ITを活用してこれからのMDシステムに必要な機能を実現するために、これまでの流通業務システムの構築経験とノウハウを活かし、スーパーマーケットのMD業務を支える「Mastretail/SM」を提供している。Mastretail/SM は、カスタマイズ前提のセミオーダー型の業務パッケージである(図4参照)。

(クリックで拡大表示)
カスタマイズを前提としたセミオーダー型の業務パッケージにしたことで、より早くよりコストをかけずに、各社の個別ニーズや今後の変化に柔軟に対応することができるようになっている。またシステム維持コストを削減できるほか、人手による作業ミスを減らす効果も期待される。さらに、システムを使いこなして業務上の精度が上がれば(発注エラーの減少など)、機会ロスを減らし、売上の増大に結び付くことも期待できる。
さらに重要なことは、さまざまな変化に素早く対応できるシステムを構築することは、スピード経営の基盤を整えることになるという点である。
Copyright (c) 2004 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission .
関連リンク
OPINION:野村総合研究所
前のページ | 1 2 3 |
[渋谷斎,野村総合研究所]
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.