コラム
2004/03/30 00:00 更新
ITソリューションフロンティア:特集:流通システムの新しい動向
小売業が求める次世代システムとは (2/3)
MD業務を支えるシステムに必要なもの
今後のMD業務を支えるシステムに求められる要件について具体的に検討してみよう。
(1)経営・事業環境の変化への柔軟な対応
小売業では、組織体系や商品分類の見直しなどが、環境の変化により随時起きている。従来のシステムはこの対応にかなりの工数がかかってしまう場合が多いが、今後のシステムは、要件の変化に柔軟に対応できる仕組みになっている必要がある。期がわりの定期的な変更にも、期中の不定期な変更についても対応できなければならない。また、商品をカテゴリーに分ける商品分類は、「生鮮食品」「加工食品」「日用雑貨」といった販売管理のための分類だけでなく、販売分析用の分類を必要に応じて随時設定できなければならない。たとえば「性別」や「世代」といった商品の対象別の分類や、精肉の「シチュー用」「焼肉用」など調理用途別の分類を管理できれば、従来の商品分類を超えた詳細な販売分析を行うことができ、今後の品揃え計画に活かすことができる。
また、将来起こり得る他企業との経営統合や合併などに備えるためには、複数法人の商品管理を行えることや店舗数の増加に制限を設けないことが、これからのシステムには当たり前のように求められる。
(2)MD業務のスピードと精度の向上
顧客に対してより有効な販売活動を行うためには、本部―店舗間の情報共有を正確かつ迅速に行えなければならない。すなわち、本部の仕入担当者と、店舗で実際に顧客に接する販売員との間で意思の共有ができなければならない。生鮮食品などでは、本部の仕入担当者が産地の市場で見つけた商品を各店舗に送り込むことがある。この情報を店舗とタイムリーに共有できていなければ、店舗では商品が実際に納品されてから開店前に売場を急遽、変更しなければならないなど、作業負荷がかかってしまう。また、店舗からの要望によって実際に送り込む数量を調整できるような場合でも、ファックスなどの紙で情報をやり取りしていたり、システムを使っても集計までに1日以上かかるなど、手間や時間がかかってしまうこともある。
本部が企画する催事などに合わせて行われる商品の売価変更でも多重管理の問題を抱えている。本部側で個々の商品ごとに売価変更登録を行う。店舗への案内も別途作成する。外部業者に依頼するPOP(購買時点広告)のイメージや、チラシに掲載する商品の情報も別々に管理しているシステムが多い。この商品の入れ替えや売価変更は催事開始日の直前まで続き、その管理にはかなりの作業負荷がかかっている。このような企画に関するすべての情報をひとまとめに登録・管理することができれば、本部と店舗だけでなく、外部業者とも迅速に情報を共有することが可能となる。そのためにデータ(情報)を一元管理するシステムが必要となる。
(3)オペレーションの効率化・ローコスト化
小売業で管理数値として最も重要な指標のひとつである粗利益を求めるためには、商品ごとの在庫金額をつねに把握しなければならない。商品の売価はつねに変動しており、昨日と今日ではその商品の価値に差が出ている。この売価変更による商品価値の差を正確に把握するために、タイムリーかつ正確に売変伝票を起票・計上しなければならない。しかし作業の負担が大きく、入力漏れや変更忘れなどのミスが起きやすく、正確な在庫金額が把握できていないケースが多い。
これを解決するためには、現在の在庫数を正確に把握し、現在の売価をシステム上で把握でき、売価変更のタイミングを感知できなければならない。自動的に売変伝票(売上・仕入・在庫の3種類)を作成することで、人手による作業をなくし、正確な数字を把握できるようになる。今後のシステムにはこのような機能が必要となってくる(図2参照)。

(クリックで拡大表示)
前のページ | 1 2 3 | 次のページ
[渋谷斎,野村総合研究所]
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.