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2004/04/22 00:00 更新

「情報メディア白書2004」から
電通総研が斬る!地上デジタル放送の論点(3)

「デジタル化」が生活者にもたらす影響に関して注目される点の一つとして、生活者の情報支出行動がどのように変わっていくのか、ということがある。なかでも地上波放送のデジタル化に関連したところで、有料放送市場のように生活者がコンテンツに対する支払意向を拡大していくのかどうか、という論点が注目される。

 電通総研刊行の「情報メディア白書」のデータを読み解きながら、地上デジタル放送の論点について考える。今回は、生活者の支出行動から見た「デジタル化」の意義について検証してみたい。

 「デジタル化」が生活者にもたらす影響に関して注目される点の一つとして、生活者の情報支出行動がどのように変わっていくのか、ということがある。なかでも地上波放送のデジタル化に関連したところで、有料放送市場のように生活者がコンテンツに対する支払意向を拡大していくのかどうか、という論点が注目される。

 図は、電通総研が2002年12月に実施した「生活者情報利用調査」の結果に基づいて作成したものである。

図

(クリックすると拡大)

 軸は1999年から2002年にかけての増減率、横軸は行動率、円の大きさは支出額を示している。この図から、次のような傾向が読み取れる。

随意支払いタイプの減少傾向に歯止めは?

 ここ数年、『随意支払い』タイプの支出は軒並みマイナスとなっている。特に『雑誌』・『書籍』といったプリント媒体の落ち込み方が目立っている。一方『契約支払』タイプは安定ないし増加傾向を見せている 。

 このことから、エンドユーザーへの課金ビジネスを行う際には、コンテンツ毎に課金する『随意支払』よりも月単位・年単位で契約する『契約支払』の方がより有利な傾向が続いている、ということが言える。

 元来『契約支払』の方が生活者の側にその契約を解約・変更するためのスイッチング・コストが発生するため、情報消費行動に慣性が働きやすい側面が強いが、短期的『随意支払タイプ』の下落傾向が、景気低迷やデフレ傾向といった短・中期的な要因によるものか、それとも中長期的にこうした情報消費行動自体が減少しつつあるのかは注目すべき点である。

映像系有料コンテンツの伸び堅調

 「コンテンツを購入する」という消費行動が今後定着・拡大するかどうかが、有料放送市場の成長性を見極める上で重要になってくる。その点で明るい材料となりうるのが、『デジタルCS』『ビデオソフト・セル』『ケーブルテレビ』といった有料放送系のサービスの支払い金額がこの3年間増加傾向を見せている点である。

 これらのサービスが図の左上側に位置していることからも分かるとおり、その行動率は5%〜25%程度とまだ少数派にとどまっているものの、映像系のコンテンツにお金を支払うという消費行動が定着しつつあることが伺える。

なかでも注目されるのは、『ビデオソフト』『音楽CD等』でともに、『レンタル』の支出額は減少傾向を見せているのに対して、『セル』の支出額は現状維持ないし増加している点である。しかもその行動率も緩やかに増加する傾向が見られている。

 これまで「日本ではコンテンツにお金を払うという消費行動は定着しない」というのが長らく定説となっていた。この定説を覆すようにコンテンツに対する保有意欲や消費意欲が今後も高まり続けていくのか、それが有料放送市場の拡大につながっていくのかが、注目されるところである。

固定電話の下げ、携帯電話の伸び

 もう1つ注目されるのが、『携帯電話』の伸びである。さすがに90年代中頃のような急激な伸びは止まっているものの、依然として安定した成長を続けている上、個人の情報支出で最大の大きさとなっている。また携帯電話の成長戦略としてはインターネット接続サービスの貢献度合いも大きいとされている。

 このように順調な伸びを示している携帯電話であるが、今後のさらなる成長の課題として挙げられているのが、ARPU(Average Revenue Per User:加入者あたり月額支払い金額)を増やしていくかということである。携帯電話市場は今や対人口比でも7割に迫っており、ユーザーの裾野は広がったが、その一方でARPU自体は減少傾向にある。今後このARPU拡大のためのサービス拡充が携帯電話事業者にとっての大きな課題となっている。

 そしてこのARPU拡大の方策の1つとして考えられているのがテレビ付き携帯電話をはじめとする携帯向けの映像系コンテンツ配信サービスである。テレビ付き携帯電話については今のところ検討されているのはデジタル地上波放送を通信経由ではなく直接放送波を受信する方式であり、それだけではARPUの増加に結びつかない方向性とはなっているが、いずれ通信系の機能との連動による通信利用の拡大、ARPU増大が模索されることは間違いない。

 特に携帯電話には、携帯性もさることながら、決済機能やネット接続機能がある。これらの機能とテレビが連動することで、新しいサービスが生まれ、新市場を形成していくことも期待される。

「希少性」の後退と情報メディアの今後

 先ほどの『随意支払』タイプの減少傾向といい、携帯電話のARPUの減少傾向といい、有料コンテンツ市場の先行きにとっては不透明な要素がある。

 コンテンツビジネスにおける重要な要素として、「今ここで買わなければ、二度と機会がないかもしれない」という希少性を強調し、消費意欲を刺激することがある。ところが、ブロードバンドや携帯電話などの普及、そしてさらには今度始まる地上波放送のデジタル化により、現代は人類がいまだ経験したことがないほどの大量かつ多種のコンテンツと接触可能な状況となりつつある。そのような状況ではコンテンツに対する希少性を感じにくくなってしまう。

 情報メディアに対する個人の支払単価の減少傾向は、このようなコンテンツの希少性低下を背景にコンテンツ価値が低下していることとも関連が深いとも考えられる。

 その意味で、これは構造的な問題とも言えるが、それに対応するためには希少性がある程度維持されうるマニア向けのニッチビジネスを指向するか、希少性と並び立つもう一つの情緒的価値である「ブランド性」を追求するか、あるいは企業買収などを通じてスケールメリットを追及し広告媒体性を強化するか運営コスト削減を実現するか、などの限られた選択肢から、経営指針を選ばなくてはならない。

 いずれにせよ、有料コンテンツ市場の動向は、次代の情報メディア環境を占う上での重要な試金石となっているのは間違いなさそうである。

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[井上忠靖,ITmedia]

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